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Cemetery(コード進行編)

はじめに

Cross a Fearに続いてCemeteryです。
コード進行編と個別トラック編に分かれているので、各トラックの音作りや具体的なフレーズに関しては個別トラック編をご覧ください。


凡例

本文中で使用する表記方法を最初にまとめておきます。

・コードのディグリー表記
ローマ数字は用いず、アラビア数字に「度」を付けて表記し、それ以降はカタカナ表記します(場合により、適宜度数の前に#と♭を使用)
例)「5度セブンス」「1度マイナー」「♭3度メジャー」等。

・スケールノートのディグリー表記
「長・短・増・減・完全」に、アラビア数字と「度」を付けて表記します。
例)「短3度」「増4度」「完全5度」等。

・コード内のコードトーン表記
「長・短・増・減・完全」を#と♭で表し、序数の省略表記を付けます。
例)「♭3rd」「1st」「#11th」等。


曲の概要

3面(裏)の曲です。

BPM 186.74、6/4拍子、キーはAマイナー、一時的にCマイナーへ転調。
構成は、イントロ4小節、Aメロ16小節(内4小節はA')、Bメロ2小節、Cメロ4小節、Dメロ2小節でイントロに戻ってループ、そして3周目にDメロを延長する形でフェードアウト。

Cマイナーへ転調している<A’>の箇所は、Aメロとメロディが同形のまま転調する為、<A>の延長線上といった意味合いで<A’>としました。

基本的なキーはAマイナーですが、<A>から<A’>にかけてはモードとも考えられ、また<B>から<D>にかけては明確なメロディーが無く和声のみで進行している為、全体的に機能和声から離れた構造になっています。

以下に楽譜を用意しましたので、参照しながら読み進めてください。

Cemetery 楽譜

リハーサルマーク毎に、メロディや目立つフレーズを記載してあります。
<イントロ>はシーケンスフレーズ、<A>&<A’>はリードシンセ、<B>はボイス系シンセ、<C>はブラス、<D>はストリングス、といった具合です。
また、<イントロ>の終わりに音が重なっているのは、<A>のシンセがアウフタクトで前の小節から入ってくる為です。

概括としては、前回のCross a Fearと同じく、9thや11thのテンションを含むコードが多い印象です。


コード進行編本編

<イントロ>
Am7(11)/ D を基にしたシーケンスフレーズで始まります。

シーケンスフレーズの構成音を基にコード付けしてありますが、ここで着目すべきは、このシーケンスフレーズの組み立て方の妙であり、それがこのようなコードネームになっている所以です。

この曲はAマイナーなので、イントロのシーケンスフレーズはAのマイナーペンタトニックスケールを使ったフレーズと考えられます。
しかし、ベースが入ってくるAメロまではシーケンスフレーズのみである為に、その最初の音であり最低音でもあるDの音が、コードの根音(ルート)であるように感じられると思います。

わざわざオンコード表記にしてあるのはその為で、つまり、シーケンスフレーズのみのイントロ時点では、Am7(11)/ D と認識される訳です。
そして次の<A>からベース(A音)が入って来る事で、Am7(11)/ D からAm7(11)へと、軽いコードチェンジ感が生み出される為、イントロとAメロに区切りを付ける効果があります。

またDの音を主音に、つまりはキーをDマイナーとした場合、<レ・ミ・ソ・ラ・ド・(レ)>となるペンタトニックになります。
これは、<ド・レ・ミ・ソ・ラ・(ド)>となる、所謂メジャーのペンタトニックを1度から始まる基準のペンタトニックに規定した場合、2度の音から始まるペンタトニックとなります。
この2度のペンタトニックについては、個別トラック編で解説します。


<A>&<A'>
トニック(1度)のコードのみで16小節のパートですが、9〜12小節目からの<A'>は、短3度上へ平行移動する形でCマイナーに転調し、13小節目でまたAマイナーに戻ります。

<A>はAm7(11)からAm7(9,11)、<A'>はCm7(11)からCm7(9,11)というように、テンションが変わっていますが、これはピアノの動きに合わせて逐一コード付けした為であり、実質的には1度マイナーセブンス(11th)のワンコードです。

ここでのポイントはボイシングで、ルートから4度積みの4和音、つまり下から実音でA・D・G・Cとなっており、独特の響きを持っています。
途中で動きを出す為に、4度積みのまま平行移動で2度上に動きますが、その2度上に動いた状態がAm7(9,11)や、Cm7(9,11)となる訳です。

そしてこの、ワンコードで4度積み和音を動かすアプローチがモード的であり、コードというよりモーダルハーモニーといった印象を受けるので、このパートについてはモードとも解釈できるでしょう。

今回は和声感をコードネームで説明する為の便宜上、マイナースケールとして解説しましたが、モードとして捉えた場合には、マイナースケールと同一の音列であるエオリアという事になり、転調箇所はAエオリアからCエオリアへのモードチェンジとなります。


<B>
次の<C>に向かう為のちょっとしたパートですが、グリッサンド的に音が残っていくフレーズ(譜面上はピアノのペダル指定で表現しています)となっており、F7の分散和音になっています。最低音がCなので、コード表記はF7 / Cとしました。

Aマイナーでは短6度セブンスになりますが、前後のコード進行から考えて、あまり機能的な意味は無く、和音の響きそのものを聴かすのが目的のように感じます。ただ機能的な捉え方をすれば、コードが徐々に半音程度ピッチダウンして行くので、和声的にはF7からE7へと変化し、<C>頭のコード、Asus2へドミナントモーションしているとも考えられます。
つまりはF7→E7→Asus2となり、裏コードを使ったダブルドミナントの変形パターンになっている訳ですね。


<C>
全4小節で、3拍ずつ均等に4つのコードが割り当てられた2小節を2回繰り返す、シンプルなコード進行です。

ブラスの和声のみで進行しているのですが、Aマイナースケールに由来するルートモーションの上に、コードが平行移動で乗っている構造です。

まず、前2つはAsus2→Csus2というsus2コードでの平行移動、後ろ2つはG#m→Bmというマイナーコードのトライアドで平行移動しています。

ポイントとして、前の2つはsus2、後ろの2つはマイナートライアドと、4つのコード全てが同じクオリティ(響き)では無い事です。
こうした平行移動のアプローチを取る場合、例えば4つのコードを全てマイナートライアドにするなど、大抵は同じ響きで統一してしまいがちですが、この曲は響きを変える事で聴き味に変化を付けています。

また、後ろの2つは調性外のコードになりますが、ベースの動き(ルートモーション)がAマイナーのスケールに沿っている為に、それほどはキーから離れた印象を受けないでしょう。
これも大事なポイントで、和声的には調性外のコードであっても、ベースラインによって調性感が維持されている訳です。

和音の響きを変えるのは、単調さや安易さを感じさせない為に有用な手段であり、今回のケースとは方法論が異なりますが、有名なゲーム音楽で例を挙げれば、Final Fantasy のプレリュード等にも見られます。

FFのプレリュードは分散和音の上・下行で構成されたシンプルな曲で、コード進行はC add9|Am add9|F add9 / A|G add9 / B|A♭M7|B♭M7となっています。全てのコードをアドナインスに統一しても成立しますが、F add9とG add9を第1転回系へ、後半の2つをメジャーセブンスへとする事で響きに変化を付けています。

全てのコードをアドナインスにすると、F add9からG add9、A♭ add9からB♭ add9へと、全音上にコードチェンジする際、音の流れ的に同じ音を同音で連打する事になりますが、第1転回系やメジャーセブンスならそれを避ける事ができます。同音の連打を避け、且つ、響きにも変化を付けられる好アレンジと言えるでしょう。


<D>
最後のパートで、ここからループして<A>に戻ります。

コードがE♭になっているのは、前パートから続いて来たブラスが頭の部分でE♭を鳴らして終わる為ですが、直前のBmからこのE♭へという、長3度上に着地する進行は、前パートでA♭mが出ているためか、聴感的にA♭mへ向かうドミナントのようにも聴こえますが、あまり機能的な意味は感じません。

ではこのコード進行はどこから出て来たのかと言うと、おそらくですが、Bmの構成音(B・D・F#)とE♭の構成音(E♭・G・B♭)を比べると分かるように、声部のスムーズな進行によるものであると考えられます。
つまりB→B♭、D→E♭、F#→Gと、3つの声部全てが半音で動いている訳ですね。

鍵盤で演奏すると楽に指が動かせるので、鍵盤奏者ならではのコード進行といった感じがします。

Bm(マイナートライアド)の全声部を半音で動かして得られるコードの組み合わせは、半音の上下×3和音なので、2^3=8通りですが、そのうちトライアドとして成立するコードは4つあり、2つは上・下行いずれかへの平行移動で、残りの2つはE♭とGdimになります。

4つの中から唯一のメジャーコードであるE♭が採用されている訳ですが、マイナーからメジャーへとコードのクオリティ(響き)が逆転する為、進行時の聴感的なインパクトは最も大きいと言えるでしょう。

譜面にあるストリングスのフレーズや、クレッシェンドして来るシェパードトーン(無限音階)的なフレーズについては個別トラック編で解説します。


あとがき

他の曲よりトラック数が少なく、比較的コピーは楽でしたが、最後の無限音階的なフレーズがどうしても聴き取れずに苦労しました。何とかコピーはしたものの、自信を持って合っているとは言えないところが残念です。

現在、悪魔城ドラキュラXのサントラは、それなりにプレミアが付いていますが、法外な値段というほどでも無いので、後年出たサントラよりも音が良く、またX68版悪魔城ドラキュラのアレンジも入っている為、お金に余裕のある方は是非とも手に入れて頂きたいところです。

個人的には再発して欲しいですが、その際には前回にも書いたようにトラック別ステムデータ入りでお願いしたいです。KONAMIさん、お金はそれなりに出しますので、本当に何とかなりませんでしょうか?

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