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科学戦隊

はたらくってなんだろう?

僕が『はたらく』に気づいたのは4歳。父に髪を切ってもらっていた時だ。僕が父に髪を切ってもらった翌日、友達に「髪切ったね!」と言われて、「うん、お父さんが切ってくれた!」と答えたら、その友達は驚いていた。 
そして僕も漠然と気がついた。

 お父さんが髪を切ってくれたのは、
「お父さんだから」じゃなく、「美容師だから」

このとき、僕の周りの『?』が解けていくのを感じた。
「お母さんが、朝家を出て夕方帰ってくるのはなんで?」
「僕が怪我をすると、魔法のように綺麗に治してくれるのはなんで?」
母は、看護師としてはたらいていたのだ。

そして、僕は両親から、『大人になったら、はたらく』ことを教わった。

将来の夢 3部作

僕は大人になったら何をしてはたらけばいいか尋ねると、「僕の好きなことをすればいい」と両親は教えてくれた。
そして僕の記念すべき最初の将来の夢は『ケーキ屋さん』になった。
理由は簡単だ。大好きな苺のショートケーキをいっぱい食べたいから。

それから3〜4年後だろうか。突如、ケーキ屋さんになって毎日ショートケーキを食べることよりもやりたいことが生まれる。『画家』だ。
キッカケは、フランスへの家族旅行。オランジェリー美術館でクロード・モネの『睡蓮』に釘付けになった。圧倒的な色彩に感動し、「こんな綺麗な絵を描いてみたい!」と思った。
両親にも伝え、画用紙や色鉛筆を買ってもらったりしたが、今思えば、両親はケーキ屋さんの時よりも不安げな顔だったようにも思える。

しかし、その両親の不安はすぐに解消されることになる。
ミステリー好きな母と「科捜研の女」を観ていた時だった。見慣れない機械を操って犯罪のトリックを見破り、悪者を捕まえる正義の白衣姿に強烈な魅力を感じたのだ。
その時、僕の将来の夢は、再び変わることになる。『科学者』だ。
ただ、これまでの『ケーキ屋さん』と『画家』とは少し違った感覚があった。

初めて自分以外の誰かのために、働こうと思った。

『ケーキ屋さん』も『画家』も、自分のため。僕の手が届く半径数メートルの世界の夢。
一方、『科学者』になって誰かを助けたいという夢は、地球規模の夢だった。

僕がケーキ屋さんになろうと思っていた頃、周りには、ウルトラマンや仮面ライダー、セーラームーンになりたいと思っている子もいた。
僕は、ウルトラマンが大好きだったが、それがフィクションであることは理解していて、両親には、今でも時々「お前は、小さい頃から冷めたリアリストだった。」と揶揄われる。(サンタクロースは、10歳まで信じてたとは言えない...)
ある意味『科学者』は、僕にとって初めての憧れたヒーローだったように思える。

それから、僕の将来の夢が変わることはなかった。
小学校の卒業式で、「困った人を助ける科学者になりたい!」と宣言し、中学・高校・大学と進学。大学では化学を専攻し、修士課程にも進んで、より専門的な研究にも夢中になって取り組んだ。

そして、僕は今、とある化学メーカーで、研究者として「働いている」。

働くってなんだろう?

僕は、誰かのヒーローになることだと思っている。
その誰かは、世界中の知らない誰かでも、商店街のあの人でも、隣にいるあなたでもいいと思う。
その人を助けるために、これまでの人生で掴んだ一番の武器を持つ。
必殺光線なんて要らない。
ケーキ屋さんは、調理器具を武器に、誰かの記念日に笑顔を添えるヒーローだ。
画家は、筆と絵の具を武器に、落ち込んでいる人の視界を彩るヒーローだ。
僕も、試験管を武器に、世界中の誰かを救う『科学戦隊』として頑張ってる。
志は、小学校最後の体育館の壇上と何も変わっていない。

最後に

もし、この投稿を読んでくれている人がいたら、その中にはヒーローというワードを見て、「そんなに甘くない。綺麗事だ。」と感じた人もいるだろう。
その通りだと思う。実際に、社会に出てそんなに甘くないと思ってる。
新型コロナウイルスが日常を一変させた今、ニュースで「医療従事者は、もう使命感だけでは限界だ。」という訴えが耳を刺した。
これまで何度も僕たちを救ってくれたヒーローが、今最大の危機に立たされている。
でも、今こそ、僕たちが彼らのヒーローになるべきではないでしょうか?
ワクチンの開発、医療器具の製造、金銭的な援助 etc...
やるべきことはたくさんあるけど、実際に自分が関われることは少ないかもしれない。
でも、空を飛ぶことよりも簡単にヒーローになれることがある。
お家にいよう。
『人のために動く』と書いて、はたらくと読む。

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