【感想】ハピメア RE ver.
ブランド : Purple software
発売日 : 2013-02-28(オリジナル)
2023-05-26(REGRET END)
原画 : 月杜尋 , 克 , こもわた遙華(SD原画)
シナリオ : 森崎亮人
⚠️ここからネタバレあり⚠️
◾️ネタバレ感想
夢の世界の物語構成がとにかく上手い。
絶妙なハーレムはご褒美かと。
★はじめに
プレイのきっかけはパンチラです。
甘い香りの誘惑は、さながら不思議の国へ迷い込んだアリスの如く。
ヒロインのビジュアルで一番惹かれた白ウサギこと、弥生先輩のパンチラ追いかけて不思議の国へやってまいりました。
よし、ちょっと上手いこと言ったなっていう戯言はさておき、もともと以前からずっと気になって積んでいた作品で、自分にとっては初のパープル作品。ハピメア10周年でFHDリファインされた『REGRET END』からのプレイになります。
いつかパープル童貞を捧げるならば、やっぱり『ハピメア』だよねって決めていました。
まじでパンチラ見たかったんで。
本作品は予想以上の大作でクリアまでに40時間ほど。
有名作なだけに、夢という題材や物語の構成は見事なもので、ヒロインもかなり魅力的。
そして、読後感はとても爽やか。
TRUEエンドを見届けた今では、パンチラだけには収まりきらないパッション、愛しさと切なさとムネ揉みたさが溢れ、まさに万感の思いであります。
パンチラを追いかけてた過去の自分、心の中でグッジョブ。
さて、今回はそんなパンチラきっかけで出会えた極上の夢物語について語らせていただきます。
物語はかなり膨大かつ複雑。
そのため、端折るところはバッサリ端折った感想となりますが、どうぞお付き合い下さい。
★夢の世界と物語構成
ハピメアのコンセプトは夢の世界。
登場人物は不思議の国のアリスをモチーフとし、作品のデザインやストーリーをアリスのティーパーティーに見立てているそうです。
この二点がハピメアの魅惑的かつ、独特な世界観を築き上げていたように感じました。
夢ってそもそも何なのでしょうか。
まず思い浮かぶのは、睡眠中あたかも現実の体験であるかのように感じる、観念や心象のようなもの。
夢の仕組みを調べてみると、脳内に溜まった過去の記憶や直近の記憶が結びつき、それらが睡眠時に処理され、ストーリーとなって映像化されたものなんだそうです。
まぁ実際にはまだまだ未解明なことが多いそうなので、完全なる仕組みの解明には至ってないようですが、理論としてはそういう仕組みなのだそうです。
目が醒めてぼんやりと覚えている時もあれば、あまり覚えてない時もありますよね。
覚えていても、直ぐに忘却の彼方となってしまう夢の中のストーリー。
ただ、内容まで記憶していなくても、不思議と感情みたいなものは何となく残りませんか?
嬉しいや楽しいっていう感情だったり、悲しいや怖いっていう感情だったり。
あー、いい夢だった!
なんか嫌な夢だった‥‥。
そんな感覚的なものは覚えているものです。
でも、やはりどこか朧げなものなんですよね。
さて、本作の主人公・透は明晰夢を見ている設定なので、朧げな夢は鮮明な夢として進行します。
現実と夢の境目が分からなくなる状態、つまり世界観自体が錯綜して、物語の道筋が朧げなものとなる面白さが魅力となっていました。
これは物語の登場人物だけでなくプレイヤーも同様。
初めて共通ルートをプレイした時は、不思議の国のアリスを道標としながら物語をじっくり読み進めていても、だんだん頭が混乱してくるんですよね。
あれ?これって夢の中なんだっけ?
目が醒めたんだっけ?
何度もバックログを確認しましたが、それでもやっぱり混乱するんです。
透は夢の中で更に夢を見るので、現実世界と夢の世界の境界線が曖昧な為、理解をしようという強い意志と言いますか、読み手が作品に歩み寄る必要があったようにも感じます。
ただこの混乱も、いくつかの個別ルートをクリアする過程で夢の全容がある程度理解できる構成になっていたので、おそらく意図的に仕掛けられたのでしょう。
そして最後にTRUEルートで全てをひっくり返すという仕組まれたミスリード。
完全にライター森崎亮人さんの手のひらで転がされた気分です。
振り返ってみれば、素晴らしい演出と物語構成でした。
★絶妙な距離感のハーレム
主人公の透はハーレムの主として大罪人です。
ヒロイン達の想いに気づいているのに、なお手を出さない。
その曖昧な距離感は恋愛駆け引きを含む極上の会話劇。
本作品はシナリオを主としたシナリオゲーに分類できると思いますが、ヒロインの魅力を主とする絶妙なキャラゲー要素が作品の魅力を底上げしていました。
妹ポジで押し倒されたい咲とか!!
おっぱい大っきい弥生とか!!
絶妙ツンデレで誘惑しようと頑張る景子とか!!
もう最高。たまんない。
直接的なイチャイチャもありますが、精神的なイチャイチャが強力と言いますか、ヒロインの想いが言葉や行動の端々からしっかり伝わるんです。透を中心としたヒロイン間の牽制や、嫉妬する会話とか大好物なのでテンション上がって色々と捗りました。
意味が無さそうな会話の殆どは、ハーレム会話劇を楽しむためにあったもの。
これを理解できた時、甘く幸せで歪なハーレムを堪能する事が出来ると言えるでしょう。
焦らしプレイにも受け取れる非常にレベルが高いハーレム表現でした。
中でも、景子ルートの咲と景子の関係性は堪りませんね。透と景子の初夜を終えた翌日の件とかマジで最高。
お互いの好きを理解した上で尊重しているのに、言葉の端々では若干毒付いているのが可愛いのなんのって。
シリアスな展開にふと入り込む癒しのようで、緩急バランスが素晴らしかったです。
結論。
景子が可愛くて可愛くて仕方がなかったよ!!
★物語で感じた事諸々
夢という朧げな世界では、起こる事象も夢らしく何でもあり。
夢の扱い方がとても秀逸だった印象です。
アリスのティーパーティーがさまざまな夢のエントランスって事で、夢が集合意識のように集まるアイディアと設定が既に面白い序盤の展開。
共通ルートでは主人公、咲、弥生、景子の過去と心に抱えた物に向き合う構成で、各話にフォーカスされたヒロインにしっかり寄り添うストーリーだった印象です。
起こりうる事象はほぼ夢なので、連続性や関連性が曖昧に描かれ、これが現実なのか夢の世界なのか朧げ。
ただヒロイン達の内面に根差した心の悩みや葛藤は鮮明に描かれていました。
透自身も最愛のトラウマである舞亜の死を受け入れ、甘く幸せな悪い夢を否定する事が重要なポイント。
8話の個別ルートでは、ヒロインたちが過去のトラウマや葛藤、心の問題に向き合い、幸せな夢を否定して現実世界を受け入れるので、各エンディングでは主人公・透と共に幸せな未来を歩む爽やかな帰結。
ただ、有栖ルートでは妹の死を肯定は出来ず。
夢へ逃げ込んだ透自信の事象が、何の悪戯か有子の夢の始まりにもなってしまった事実が発覚。
物語のスタート時点で全ての夢は始まっていたという仕組まれたミスリードこそ、最大のシナリオギミックだったと言えるでしょう。
その為になおさら、TRUEの有栖ルートを終えた時に思うわけです。
有栖以外のヒロイン、可哀想すぎない?
まさかそれぞれの個別ルートが幸せを望んだ結果に起因する夢の続きだったなんて‥‥。
あぁ儚い。なんて儚いんだろう。
咲にとっては妹を望まれ、大好きな気持ちと折り合いを付けていました。
だからこそ、個別ルートの帰結は長い期間秘めた想いが成就して辿り着いた幸せだったはず。
至る過程は違えど、弥生も景子も好きの想いは同様。
それでも彼女たちは、有栖ルートで有子を救いたいという透の背中を押すんです。
幸せな夢であることを認め、幸せな夢から醒めるために。
辛辣な言い方で恐縮ですが、強力すぎる負けヒロインたちが輝いていたんです。
彼女たちは好きという膨大な感情を、どのようにして折り合いをつけたんでしょうか。
物語内で少しは描かれていましたが、知らないところでさめざめと泣いていたんじゃないかと思うんですよね。
それでも現実を受け入れ、夢から覚めれば幸せな営みは忘却の彼方。
各個別の帰結を知っているからこそ、どうしても感情移入してしまいました。
どうか現実世界で幸せを手にして欲しいと願わずにはいられません。
あと、舞亜ルートの帰結について。
舞亜の死を受け入れて夢を否定してから、再び夢に沈んでしまうという、穿った見方ではある意味で究極のTRUEエンドのように感じました。
夢の中の舞亜は、透の願望が形になった存在のはずなので、ヒロイン個別が幸せな夢の続きであったのと同様に、透にとって最大の幸せな夢の続きだったのでしょう。
真のTRUEでは舞亜との共存を選択し、夢を遡る物語最大の見せ場を2人で駆け抜けるので、兄と妹の呪縛が希望に変わる方が物語として美しく思えます。
やはり結局はBADエンドと素直に受け取るのが正しいのでしょうね。
★TRUE有栖ルートについて
全ての夢の帰結であり、現実世界を受け入れた有子の笑顔が救いとなる物語でした。
共通ルートと各ヒロインルートでばら撒いた伏線を見事に回収。
そして締め方が最高に素晴らしい。
全ては壮大な夢オチだったどんでん返しの驚きと、前の項目で触れた負けヒロインが輝いていたことが個人的に評価を上げるポイントとなりました。
語りたいことはたくさんありますが、一番心に残ったシーンは物語のラスト。
有栖との別れと、有子との再会でしょう。
有栖にとっては全てが夢の中の世界。
目が覚めれば全て忘れてしまう。
感情の爆発で悲しみがよく伝わるんです。
もちろん夢が現実に干渉しているので、この時の有栖と有子の境界線は曖昧ですが、やっぱり有栖はどこまでも有栖なんだと思うんです。
有子の分身とはいえ、有栖の想いは有栖のものだったと思うんです。
涙を流して感情を吐露する有栖の姿は胸が締め付けられるものがあり、この先にあるはずの希望に縋りたくなります。
夢から醒めて現実世界で巡り会う透と有子。
なんだかこれだけで救われた気持ちになりました。
本来有子の瞳の色は青紫ですが、最後のCGで涙を流す有子の右目は緑色に光っていました。
緑は有栖の瞳の色。
声からも有栖の色が垣間見えます。
夢から醒めた有子にはどこか有栖の面影があるんですよね。
そして二人を囲む咲、弥生、景子。
夢の中の出来事は忘れているはずなのに、濃厚な夢の残滓が介入する言葉のやり取り。
物語の開始から全てが夢だったので、ヒロインたちとの恋物語はまさにここから。
繰り返された幸せな夢を否定し、最後には舞亜がいる夢を受け入れた透は、物語の開始時点とは精神的に別人といえます。
同じく幸せな夢を否定した咲と弥生と景子、生きることを諦めなかった有子。
幸せな夢のループは終わりました。
ここが新たな物語スタートライン。
この先にどんなハーレムが繰り広げられるのか想像するのもロマンがあります。
いや、ハーレムだったら本当はダメなんでしょうか、それはそれでアリだと思えてしまう帰結の爽やかさ。
全てが綺麗に収まって、新たな物語の始まりを予感させます。
長い時間をかけてプレイしてきた色んな感情が集結したかのような感覚に囚われ、自然と涙が溢れる綺麗な帰結です。
未来へ希望を残す素晴らしい締め方でした。
★焦らしプレイからのご褒美タイム
ここからは余談として捉えて下さい。
透に好意的なヒロインたち。
咲に関しては完全に恋愛感情を持った義妹ポジション。
手を出そうと思えばいつでも出せる超羨ましい状況にも関わらず、一切手出しをしない主人公君。
武田信玄の風林火山を当てはめるならば、動かざること山のごとし。
おいおいお前、本当にオスなのか?
何度早く押し倒してくれと心の中で叫んだことか。
透が性欲を頑張って抑える焦らしが、プレイヤーのやり場の無い劣情にまで影響し、悶々とした感覚に襲われることに。
エロいことする条件は揃っています。
風の如く素早くヒロインの懐に潜り込み、林の如く静かに愛情を構え、火の如く情熱的に愛を囁く。
でもずっと動かざること山の如し。
誰もが早く押し倒してしまえって思ったはず。
あー、チンチンイライラする。
ただこの壮大な焦らしプレイは、後にしっかりえっちシーンで還元されたので結果オーライ。
沸々と湧き上がる劣情、捗る妄想、それらを全て抱きしめてくれる情熱的なえっちシーンでした。
サンキュー、ハピメア愛してる。
ハピメアのハーレムから学びを得るとしたら、手を出せるのに出さないエロさ。
やりたいけどやってはダメ。
襲って欲しいけど襲ってくれない。
この互いの心情と行動が焦らし焦らされ、極上のおあずけプレイとなる。
特に弥生と景子なんて切なくなるくらいに。
これも極上のエロス。
人間の性欲と理性とは、世界の真理のひとつであり、それを解き明かすヒントがハピメアの学びでありました。
◾️最後にまとめ
最後にパンチラの話しをします。
なんで?ってなるでしょうが一旦話しを聞いて下さい。
全編クリアして改めて思いました。
ハピメアのパンチラはビジュアルノベルが見せてくれた幸せな夢だったのではないかと。
これ、冗談に聞こえるでしょうが真面目な話しです。
ハピメアは夢を描いた物語でした。
そしてパンチラは甘く幸せな夢を見せてくれます。
この場合にパンチラは概念となり、自分にとっての夢のアイコンになります。
ここまで素晴らしいパンチラはやっぱり夢の中にしかないんです。
我々プレイヤーはこのパンチラ、いやもうはっきり言ってパンモロという概念、果たして甘い夢から醒めることができるのでしょうか。
ハピメアの物語は夢から醒めて帰結します。
決して幸せな夢に捉わる事なく、現実世界で地に足つけて生きていこうというメッセージとして受け取れますし、恐らくそうなのでしょう。
なんて残酷なメッセージなんだろう。(拗らせ)
穿った見方かもしれませんが、2次元に対する暗喩なんでしょうか。(多分違う)
その真実こそ夢の中ということにして、この感想を締めさせていただきます。
甘く幸せな夢を見せてくれたパープルソフトウェアの皆様、作品に関わられた全ての方に感謝を。
また、この感想にお付き合いくださった全ての方に感謝を。
ありがとうございました。
最後の最後に追記。2024/06/26
その後『ハピメア Fragmentation Dream RE.ver』もクリアしましたので感想貼っておきます。
合わせてご覧いただければと思います。
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