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【感想】美少女万華鏡 -呪われし伝説の少女-

ブランド : ωstar    発売日 : 2011-12-29
シナリオ : 吉祥寺ドロレス 原画 : 八宝備仁

⚠️ここからネタバレあり⚠️






◾️ネタバレ感想

キリエの甘美な誘惑に抗うなど出来るわけがありません。 極上です。

★はじめに

ロープライス作品の雄として有名な美少女万華鏡シリーズ。
このシリーズでまず思い浮かぶのは八宝備仁さんの超美麗な原画でしょう。ビジュアルに惹かれて興味を持った方は多いのではないでしょうか。
自分はまさにそうでした。

原画であり企画担当である八宝備仁さんが語るには、複数ヒロインがいるフルプライス作品より、自分の好きなヒロインだけを選んで低価格で買えるスタイルにしたかったとの事。

その第1作目にあたる本作は、発売前まで分割商法と批判されていながら、発売後に驚愕なクオリティが話題となり賞賛の声が拡散されていったようです。

美少女万華鏡シリーズは2024年4月に最新作『美少女万華鏡異聞 雪おんな』の発売を控えています。
この記事が投稿されるのが2月なので発売まであと2ヶ月。プレイのきっかけも最新作を前に全シリーズ網羅してから挑もうと思ったからなので楽しみすぎます。

さて、この感想は批評空間に投稿した感想に加筆修正したものです。
本ブログでは先にシリーズ第4作目にあたる『美少女万華鏡 罪と罰の少女』の感想を投稿(クリア直後に投稿)してますが、プレイの時系列で言えば本作がシリーズ最初に触れた作品になります。
それではどうぞお付き合いください。


★プレイした印象

正直言って舐めてました。
本作はジャンルで分ければ抜きゲーなので、シナリオゲーの合間に可愛いキャラといちゃいちゃ楽しめれば良いな程度、息抜きのつもりでプレイを始めました。
ただこの作品、序盤からどうやら思ってた感じと違うと気づきます。シナリオの導入、不可思議な舞台、魅惑的なヒロイン。
どれも良作シナリオゲーの雰囲気を纏っています。

決して抜きゲーをシナリオゲーの下位に見るつりはなく、明確に強みを発揮する舞台が異なるという認識での話しですが、本作はどちらの強みも内包していた印象を抱きました。まさに上質とはこの事。
素晴らしい完成度を誇った美しいエロゲーでした。

このクオリティであれば話題になるのも納得ですし、10年以上シリーズが続いてるのは必然と言えます。
このままずっと続いて欲しいですね。


★甘美で幻想的な世界観

本作の魅力は幻想的な世界観と退廃的な恋、そして極上のえちシーン。物語はあまり起伏があるわけではありませんが、短編として非常にまとまりが良く、何を強みとしているのかが理解しやすい。

ヴァンパイアの少女と変態的教師の退廃的な恋、幻想的な世界観を際立たせる美しい音楽、劣情を刺激する魅惑的なスチルとシーンテキスト。
全てにおいて美しい世界が完成されています。

世界観を構築する上で重要な背景美術は、アンティークな雰囲気を醸し出す洋館の内装や、キリエが好む赤ワインのイメージスチルなど、超ハイクオリティで素晴らしいもの。

楽曲も美しい旋律の曲で構成されるなかで、ピアノの超有名クラシックのアレンジが使用されているのも本作の魅力。
キリエのヴァンパイア面を際立たせるのは月の光ですが、このモチーフを完璧に連想させるヴェートーベンのピアノソナタ第14番「月光」は極上の親和性です。

また、ジャガーで暴走するシーンにはショパンの遺作「幻想即興曲」を。
この曲の演奏には左手が6連符、右手が十六分音符で、異なる二つの速さが混在しているクロスリズムが特徴。
ピアノの鍵盤からはスピードに狂う描写は緊迫感が伴いますが、状況に焦る滋比古と、一方で煽るキリエという心境の違いをクロスリズムであらわしてるかのようで興味深いです。(若干こじつけですが)

これら全てが完璧な調和を果たし、どこか退廃的で圧倒的に甘美な世界が描かれていました。
本作は抜きゲーとされてはいますが、作品全体に漂う独特の空気を感受すると、雰囲気ゲーの印象の方が強い気がします。


★退廃的な純愛

女学生と教師の背徳、かたや主人と下僕の主従。
表と裏のバランスが秀逸です。
キリエの官能的な声は脳を蕩けさせます。

この声はえっちすぎ。

キリエは誇り高きヴァンパイアであり、人間を下位と見ている為に振る舞いは辛辣。
その棘は薔薇の花のようで、触れようとすれば無事では済まない甘美ゆえの危うさがあります。

その棘が主人公の狂信的かつ変態的な愛に満たされ、身体を重ねるうちにだんだん抜け落ちていく。
この心の変化の過程が何とも愛しく、ヴァンパイアである前に乙女であったと気付かされます。
それは間違いなく純愛でした。

主人公の思考は常人の理解に及ばないところにあり共感は難しいですが、キリエへの狂愛が主人公自身を愛の沼に落とし、最終的に人間を辞めて眷属として生きていくという帰結は退廃的な純愛を貫徹しています。

キリエも主人公に自らの過去を打ち明けるまでに想いを寄せるに至るので、眷属として共に生きていくエンディングは幸せだったでしょう。

感情の機微がとても読み取りやすく感じたので、キリエの心の変化は本作の見どころと言えます。
その為に尚更えちシーンが段階を経て愛情やプレイ内容がレベルアップしていくのを見るのが楽しみでもあり、愛の情事こそ最大の見せ場とするに説得力がありました。素晴らしい。


★えちシーンについて

作品に漂う雰囲気の良さと、物語の骨子がしっかり定まっているので、最初のえちシーンが来るまで抜きゲーだった事を忘れていました。
先にも書いた通り、本作最大の見せ場は極上のえちシーンです。

神聖であり圧倒的に美しい。

八宝備仁さんの美しい原画にアニメーションが付くという贅沢仕様。これを見るだけにプレイしても良いと思えるほど。

物語に添いながらもテンポよくシーンが差し込まれ、二人が肉欲と愛に堕ちていく過程がよく分かります。

シーン内容は濃厚でテキストも淫語を伴い官能的。シーンBGMとCGの美しさが最大限に際立っていて、劣情に頭が追いつかなくなります。

多少の下品さが実用性に繋がるという方ならば、本作は使い物にならないでしょう。
あまりに美し過ぎるのです。
ただそれが個人的に本作最大の魅力でした。



◾️最後にまとめ

本作をあくまで抜きゲーと取るか、退廃的な純愛と取るかで評価が変わる作品でした。
個人的には極上の美しさに魅了されたため後者。
美少女万華鏡シリーズ、恐るべしです。

世界観とキリエがあまりに素晴らしかったので次回作以降も必ずプレイしようと思ったのは言うまでもないですね。

美しい作品を届けてくださったオメガスターの皆様、作品に関わられた全ての方に感謝を。
またこの感想を読んでくださいあなたにも最大限の感謝を。
ありがとうございました。


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