ショスタコーヴィッチ作曲 オペラ「鼻」
かねてより噂を聞き、ぜひ生で観たいと思っていたある演出のオペラ作品がある。それが、ショスタコーヴィッチ作曲のオペラ「鼻」のロンドンのコヴェントガーデン(ロイヤル・オペラ・ハウス)で上演されていた(16/17シーズンの記録が最後?)だ。言わずと知れたゴーゴリの同名の小説が原作。ペテルブルクものとよばれる作品で、ヴォズネツェンスキー通りの一角には小説内で「鼻」が歩いていた場所に鼻のモニュメントがある。学生当時メトロ・センナヤ駅から音楽院まで歩く道すがら、グリボエードフ運河の節操のない車の行き来を避けて、少し遠回りではあったが歩いたものだ。
さて、このオペラのコヴェントガーデンの演出では、途中「鼻」がタップダンスを踊るというので有名であった。
この動画である(コヴェントガーデンの公式)。
で、カザンでの演奏会を終えて、ペテルブルクからベルリンに帰って来てから、ベルリンのコーミッシェ・オーパーでコントラバス首席をつとめる友人から「鼻」を聴きにこないかと誘いを受けた。実はベルリンにいながら今まで一度もコーミエッシェ・オーパーに行ったことがなかった。そんなこともあったので喜び勇んで劇場へ。
どんな演出なのかも気になったので、事前に調べてみると、サイトには見覚えのあるあの「鼻のタップダンス」の写真がトップに掲載されているではないか。これはひょっとして、と思い友人に尋ねてみるとロンドンとベルリンでの共同制作なのだそう。通りで同じ演出での写真が載っているわけだ。
この共同演出。結構他でもあり、ペテルブルクではミハイロフスキー劇場でチェルニャコフ演出でベルリンの国立劇場(バレンボイム音楽監督)とオペラ「トルバトーレ」を上演していたのも記憶に新しい。
(写真上:ベルリン・コーミッシェ・オーパー。筆者撮影。)
コーミッシェ・オーパーの劇場はとても良い大きさ。コヴェントガーデンほど巨大でなく、ほどよい。気になるのは床が絨毯ということと扉の代わりに大掛かりな厚手のカーテンが桟敷席の後ろ一体にあることか。さらに天井は老朽化の影響で安全ネットがはられている。床が木そのままであればもっと全部の音がよく響くだろうなと、そういう印象を終演後に持った。
演出は知っているということで、あえて奏者や指揮者が見える位置に席を用意していてくれた(気遣いに感謝)。
全体に比較的早いテンポ設定での演奏で、ショスタコーヴィチ感はしなかったが、本来楽譜に書かれている編成より圧倒てきに少ない編成でがんばっているなと感心。
コロナ禍でありながら、大勢で賑わっていたのも音楽界に活気が戻って来そうな予兆として喜ばしい。
終演後は、招待してくれた友人と朝5時近くまで音楽話に花が咲いた。
あ、ちなみにコーミッシェでの「鼻」はドイツ語での上演。コヴェントガーデンではもう上演していないようなので、この演出が気になる方はベルリンへGo!
(メータ)
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