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デザインのストーリー作りにも漫画術は必要だ

荒木飛呂彦の悪役の作り方」という本が11月15日に発売されます。この本は「荒木飛呂彦の漫画術」の新シリーズです。新シリーズの前に漫画術を読み、デザインにも通じる考え方だなと思ったので感じたことをまとめます。

4つの重要要素

この本では、漫画の王道を歩くために必要な4つの要素として、キャラクター、世界観、ストーリー、テーマが掲げられています。本の中では丁寧に説明されていますが、ものすごく簡単にいうとこの4つを絵で表現するものが漫画ということです。細かい内容についてはネタバレになるのでここには書きませんが、この考え方はグラフィックデザインを表現する時にも通じるものがあると思います。

なぜグラフィックデザインに世界観やストーリーが必要なのか

どんなに些細なデザインでもそこには作られる理由があります。売り上げを上げたい、人を集めたいなど多くの場合は事業の成功に密接に関係する場合が多いと思います。デザイナーは誰かからの依頼で、目的を達成するためのクリエイティブを作ります。クリエイティブは撮影を含めた多くの人が関わるようなものから、自分一人で完結するようなものまで様々ですが、なぜそのクリエイティブが良いのかと考える時に必要になるのがストーリーです。

デザイナーはバナーを一つ作るのでも、誰に届けるものなのかどんな環境でみられるのかを考慮して、デザインを組み立てていきます。しかし、ただ見やすいものを作るのがデザインではありません。見た人の心を動かすものが良いデザインです。人は、物事をストーリーで理解するので、ストーリーのないものにはあまり共感しません。デザインにおけるストーリーは様々なもので構成されていますが、文字やエレメントの配置でもストーリーが語られている良いデザインだといえます。

エレメントが語るストーリーとは

サンプル10周年クリエイティブ

このクリエイティブは、何かの10周年を記念したものです。どちらの背景も一見ただストライプで華やかにしただけで、それぞれの違いは線が細いか太いかだけに見えますが、右のストライプは10周年に合わせて10本にしています。たったそれだけのことですが、文脈からエレメントを想像するとそれだけで、意味が生まれて連想や期待が膨らみます。ストーリーは世界観からさらに膨らみます。10周年のブランドがゲームメーカーであれば、ドットのようなモチーフが入ってくるかもしれません。ブランドらしさとはブランドが持つ世界観であり、それを膨らませるのがグラフィックデザインなのです。

余談、王道とは

この本の前提は、荒木飛呂彦さんが、ジョジョの奇妙な冒険をはじめとする自分の作品は「王道」であると考えていることです。王道の捉え方は様々だと思いますが、自分は、スープストックトーキョーを生み出したことで知られる遠山正道さんが、スープストックを生み出す時に「メジャー感」を大切にしたことを思い出しました。どちらも、多くの人に愛される漫画でありブランドですが、最初は一風変わったコンセプトを掲げたどちらかといえばニッチなブランドとしてスタートしたと思います。ですが、その根底には多くの人に届けるため、誰でもが楽しみ、共感できる価値を持っていたから、現在のようなメジャーブランドに育ったのでしょう。

限られた人だけが楽しめる知る人ぞ知る的なブランドもよいですが、やるからにはメジャーを目指したいですね

荒木飛呂彦の漫画術 (集英社新書)

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