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映画「フォードvsフェラーリ」で学ぶ、ブランドアーキタイプ

Amazon primeでフォードvsフェラーリを観た。
この作品は、作品名の通り60年代のスポーツカー耐久レースで繰り広げられたフォードとフェラーリの競争という実話を元に脚色された作品だ。
クリスチャン・ベールが演じるケン・マイルズの無骨なかっこよさを、最初から最後まで楽しめる作品で、とても面白かったのだが、今回は作品の感想ではなく、映画の中で語られるフォードのブランドアーキタイプについて考えてみた。


アーキタイプとは

アーキタイプは、ブランドの意味管理システムとして使われている。大きく自立型、支配型、帰属型、安定型の4つの方向性に分類され、それぞれが12種類のアーキタイプに分かれている。
ブランドの管理者は、12種類のアーキタイプの中から一つ、または複数の自分のブランドを表現するアーキタイプを設定し、振る舞いを一貫させることでブランドの一貫性を保ちブランドへの共感を生む。

12種類のアーキタイプ

  1. 創造者 The Creator 新しいものを作り出す

  2. 援助者 The Care giver 他人を世話する

  3. 統治者 The Ruler 統制力を発揮する

  4. 道化師 The Jester 楽しむ

  5. ありふれた男女 The Regular Guy, Gal ありのままでいい

  6. 恋人 The Lover 愛を見つけ、与える

  7. 英雄 The Hero 勇敢に行動する

  8. 無法者 The Outlaw ルールを破る

  9. 魔術師 The Magician 生まれ変わりを促す

  10. 幼子 The Innocent 信じる心を持つ

  11. 探検家 The Explorer 自立を保つ

  12. 賢者 The Sage 世界を理解する

※ブランドアーキタイプ戦略より

映画の中でのフォード

フォードvsフェラーリという名前の通り、作品はル・マン耐久レースを舞台に繰り広げられるフォードとフェラーリの戦いがテーマで、主人公はフォードのチームに所属しているが、主人公側にも関わらずお金の力で勝利を掴みにいくフォードはあまり良い描かれ方をしていない。
特に上級副社長のレオ・ビーブは、主人公のことをあまり気に入っておらず色々と嫌がらせをしてくる嫌なやつに描かれている。
が、しかしこのレオ・ビーブこそフォードのブランドアーキタイプをよく理解しアーキタイプを表現するために行動しているのだ。

以下、多少のネタバレあり。

フォードに似つかわしくないドライバーは採用しない

映画の中でフォードが最初にル・マンに挑戦する際、主人公のケン・マイルズはエンジニアとして車の調整を行い、車のことを知り尽くしている上、ドライバーとしても一流なので、ル・マンで勝つなら彼以外のドライバーを乗せるなんて考えられないと思われているが、レース直前にレオ・ビーブは「ケンはビートニクだからフォードにはふさわしくない、車には乗せられない」と言う。(ビートニクとは標準的な価値観を否定し、性やドラッグの追求をするなどヒッピー文化の礎になった文化)
明らかにドライバーとしての資質は、ケンが最も優れているのにだ。

フォードのアーキタイプとは

ケン・マイルズは確かに無骨で喧嘩っ早く、荒々しいイメージで描かれている。アーキタイプでいえば無法者だ。ちなみに無法者を最もよく表すブランドと言われているのはハーレー・ダビッドソンやナイキである。
ナイキはマイケル・ジョーダンと1985年に契約し、あの名作エアジョーダン1を生み出した。赤と黒だけで作られた初代エアジョーダンは、シューズは白の面積が一定以上あることを定めた当時のNBAルールに沿っていなかったため、マイケル・ジョーダンには着用禁止勧告と罰金が度々科せられたが、ナイキはそれを肩代わりし、ジョーダンに履き続けさせたと言われている。ナイキが反逆者のアーキタイプに沿って一貫した行動をしていることがよくわかるエピソードだ。

では、フォードは何のアーキタイプなのか。当時のフォードは、初代ヘンリー・フォードから2代目のヘンリー・フォード2世に受け継がれ安定期に入っていた。車は安定したアメリカンファミリーを象徴するアイテムの一つであり、最も支持されていた車の一つがフォードだった。
冒険というよりは、安定や日常生活という意味合いから、ありふれた男女、もしくは普通の人が憧れる英雄のアーキタイプなどが相応しく、反逆者のアーキタイプはふさわしくない。つまりレオ・ビーブは、にくたらしくはあるもののフォードのブランドをよく理解してドライバーを選んでいたと言える。

優れたブランドを作るためには一つのアーキタイプをよく表している必要がある。シンプルに思えるこの考え方を実践するのがとてつもなく難しい。
映画の中の登場人物としては好きになれなかったものの、ブランドの管理者としてのレオ・ビーブは尊敬できる人物なのではと思った映画だった。

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