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論文徒然日記1

毎日読んでいる医学論文を徒然なく翻訳して書き残しておこうのコーナー

今日はnature genetics 2018/5 /21に記載されるカロリンスカの論文

個人的には統合失調症の原因遺伝子ではなく、原因細胞を調べているのが面白いところ


Genetic identification of brain cell types underlying schizophrenia


背景:統合失調症の遺伝的要因に関する知識は著しく進歩しており、統合失調症の遺伝的要因の多くが共通の変異に起因することが明らかとなっている 。 しかし、かなりの研究において統合失調症を発現する遺伝子を特定し、 統合失調症の発病に関与する細胞の優先順位付けのため、ゲノム解析の結果を細胞研究に結びつけることは困難である。今回我々は、統合失調症のゲノム解析結果を単一細胞RNAシークエンシング(scRNA-seq)によって定義される脳細胞型と厳密に比較し、遺伝子発現プロファイルによって定義された特定の脳細胞タイプとヒトゲノムの共通点を結びつけ、統合失調症の共通変異遺伝学的所見が最も有益な脳細胞タイプの特定を行った。
方法:scRNA-seqから脳の細胞を分類することにより、統合失調症に関与するゲノム遺伝子が特定の脳細胞型にマッピングされるかどうかを評価した。我々は、カロリンスカ研究所からの脳scRNA-seqデータのスーパーセットを組み立てた 。 カロリンスカ研究所スーパーセットの脳領域には、新皮質、海馬、視床下部、線条体および中脳、ならびに希突起膠細胞、ドーパミン作動性ニューロンおよび皮質パルブアルブミン作動性ニューロンに濃縮されたサンプルが含まれていた。 これらのデータは、同じラボの同一の方法を用いて生成され、固有の分子識別子によって領域間の転写を直接比較し得ることができた。
結論:脳のさまざまな場所から得られた単一細胞の発現遺伝子データを、ゲノム解析から得られた統合失調症と相関する遺伝子と比べ、統合失調症に関わる遺伝子が濃縮している細胞を探索したところ、濃縮が見られた細胞は24種類の脳細胞のうちたった4種類であることが明らかになった。即ち、海馬CA1の錐体ニューロン、線条体の中型有棘ニューロン、新皮質体性感覚野の錐体ニューロン、そして皮質の介在ニューロンの4種類に同定された。また、本研究所では共通変異ゲノムの結果が、錐体ニューロン、中型有棘ニューロン(MSN)および介在ニューロンに一貫してマッピングされるが、胚細胞、前駆細胞またはグリア細胞とは一貫性がないことを見出した。すなわち、成人の細胞に限られていることが明らかになった。この結果が投合失調症に特異的であることを示すため、うつ病のSNPとも比べたが、うつ病ではGABA作動性神経をはじめとするちがった細胞に濃縮されることが示された。また、すでに蓄積されている8つのパブリックなゲノムワイド研究と比較し、同じ結果が得られるかも調べ、今回の結果を他のデータベースの結果からも導けることを明らかにした。
考察:統合失調症のゲノム解析検査から、MSNに関連する遺伝的リスクは、グルタミン酸作動性ピラミッド細胞および介在ニューロンのゲノムと重複せず、異なるリスク遺伝子が相互作用して統合失調症の症状を生じることを示唆した。本研究の限界点としてKI scRNA-seqデータは妊娠、出生後早期または青年期のデータが含まれていないことや、正確にどのように統合失調症GWASが細胞特異的遺伝子発現に影響を与えるかはいまだ解決されていないことなどがあげられる。しかし本研究は単一細胞の遺伝子発現を調べることが可能になり初めて実現した研究であり、これらの結果は、インビボ研究およびインビトロモデリングを導くために使用され、異なるリスク遺伝子が相互作用して統合失調症の症状を生じる方法を分析するための基礎を提供することができる。この事実は、将来の更なる大規模な研究または分析において考慮されるべきである。

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