見出し画像

30歳、ついに結婚したくなる

数年前、私は30歳になった。中国から帰国したばかりで、都内のアプリ開発会社で毎日遅くまで、まさに馬車馬のように働いていた。

恋愛はというと、大学時代に大失恋をしてから、なかなか次に踏み出せず、長続きもせず、もう5年以上おひとりさま状態だった。

この年、父に大腸がんが見つかり、結腸にも転移していて、すぐに手術することになった。

私はというと、父の手術日が決まったという連絡をうけ、実家近くの病院へ父を見舞った。

思ったよりも元気そうで一安心。私が冗談で、「子どもたち3人とも大人になって、仕事もいい感じにデキて、もういつ死んでも安心でしょ」と言うと、父は、「まだ一人、末の娘(私)が結婚しておらず、孫(私の子)も見れていない。結婚はいいものだよ。生涯の伴侶と築いた家庭は宝物だ。お前にも良い人見つかるまでは死ねない」と言ってきたのだ。

たからもの?

「宝物」

「私は一生独身かもなぁ」と返事をしたけど、後になって、時間が経つほどに、父が言った「宝物」という言葉がずっとひっかかっていた。

我が家は、同居の祖父母と、両親、姉、兄、私の7人家族だった。家族みんなユーモアがあっておしゃべりで、個性的ではあるけれど、家族仲はすこぶる良かった。

「宝物」と言われてから、幼い頃の楽しかったことや、幸せな瞬間を次々と思い出した。

私も「宝物」が欲しくなった。
父の発言がきっかけで、私は婚活することにしたのだった。