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ミニマルな小説⑥クリスマスプレゼント

『やっぱりサンタなんていなかったんだね!』

12月25日早朝

クリスマスプレゼントの

球体の中で雪が舞う

スノードームを枕元に置こうとした瞬間

ついに見つかってしまった

『パパの嘘つき!』

その事がきっかけで

娘からは嫌われてしまった

妻も娘に何度も話してくれていた

それでも家の中ではすれ違う日々

そしてそのまま思春期に入り

実家を離れ東京へ

そのまま結婚をし

実家にも戻らなくなった

妻は時折り娘とは会っていたようだ

僕の最後にも来ないようだ

それくらいあの日の朝は

娘にとって衝撃だったのだろう

横たわってる自分を見ながら思った

『今、娘が幸せならそれでいいか』
 
 

『やっぱりサンタなんていなかったんだね!』

12月25日早朝

パパが枕元にクリスマスプレゼントを

置いている所を見てしまった

私が欲しかったスノードーム

『パパの嘘つき!』

私はとっさに叫んでしまっていた

その事がきっかけで

パパと話せなくなってしまった

それからは何か相談ごとがあっても

ママにしか話せなくなってしまった

そしてそのまま高校に入り卒業

東京の大学へ

卒業してそのまま東京の会社に入り

そこで出会った主人と結婚をした

実家にはもう帰っていない

ママは時折り東京に来て

私の娘と遊んでくれる

パパは来てくれなかった

それくらいあの一言は

ショックを与えてしまっていたんだろう

パパが突然この世を去った

お通夜の日は娘のピアノのコンクール

娘にとって大事なコンクール

ママは娘の将来を考えなさいと

電話で話してくれ

パパのお通夜には行かなかった

娘はそのコンクールで優勝し

海外への留学が決まった

私は後悔をした
 
 

娘が海外へ出発した日に

空港からその足でパパのお墓参りに行った

あの日から行けてなかった

私は親不孝だ

パパの眠る場所で私はつぶやいた

『パパごめんね。今更だけど、大好きだよ。』

季節外れの雪が降ってきた

まるでパパのクリスマスプレゼントのように
 
 

僕は孫が海外に出発する日

誰にも見られず見送りにいった

娘がタクシーに乗って何処かへ向かった

驚いた

僕の眠る場所だった

花を入れ替えながら娘がつぶやいた

『パパごめんね。今更だけど、大好きだよ。』

僕は衝撃だった

娘から嫌われていると思っていたからだ

僕の気持ちを娘に伝えたい

神様から言われていた事を思い出した

死んだ人間はプレゼントを1つだけ貰える
 
 

僕はつぶやいた
 
 
 

『神様、雪を降らして下さい。』

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