一般常識という芳香に包まれる安心感。

 湯シャンを始めてから一年半が経とうとしている。運がいいことに、最初からあまり湯シャントラブルに見舞われることのなかった私だが、現在も相変わらず、フケも出ないしベタつきもない。頭皮が健康なおかげか髪もぐんぐん伸びて、ベリーショートだった髪は今やセミロング。
 しかし結論から言うと、現在大体2、3日に一回のペースで、いち髪プレミアムという市販のシャンプーを使っている。ちなみに、こちらのシャンプーも某アナライザーさんが紹介していたもので、確かに洗浄力は弱め。ぶっちゃけ洗い上がりの感じは湯シャンと大差ないかも?って思うくらい、しっとりした洗い心地。

 湯シャンだけで全く問題ない私が、なぜわざわざ頭皮に悪いシャンプーをするのか?

 少し話が逸れるが、我が夫は圧倒的ロングヘア派だ。ショートの女性に興味がなさすぎて、そもそもショート女子は視界に入ってないらしい。(と言いつつ、夫と付き合いだした頃の私はショートヘアだった。本当に、なんで私と付き合ってくれたのか謎の極み…)確かに、光が当たるとツヤツヤして、サラッと風に靡いて良い香りがフワッと漂う。そんなロングヘアは夫のみならず、世間全体の理想じゃなかろうか。それが本当に私たちが望んだことなのか、はたまた大手メーカーのCMが作り出した幻想なのかはさておき。
 さて、そんな彼が、私がシャンプーの類を使うのをやめたらしいことに気付いた当初、口出しこそしないがちょっと微妙なリアクションだった。そりゃ当然だ。私ですら肌断食を知る前は、毎日シャンプーとトリートメントをするのは当たり前だと思ってたんだから。シャンプーしないなんて、よほど見た目に頓着しない、人間関係を諦めた世捨て人だけだと思っていた。そんな世捨てムーブを!よもや自分の奥さんが!!…まじか………(絶句)となるのは、一般的な感覚だと思う。ネットでも、湯シャンの匂いについて激しい議論が交わされているのをちらほら目にする。アンチ湯シャンの人々の言い分は、「本人が気づいてないだけで本当は臭い」というもの。湯シャラーとしては、この意見に大しては「なんで臭い人が湯シャンしてる人だって分かったの?」と訝しんでいるけどね。だって、過剰洗浄が常識化しているこの現代日本で、自分は湯シャンしてます!!ってわざわざ公言する人がいるのか…!?現に私もこうして肌断食と湯シャンについてネットでは綴っているけれど、リアルでは絶っっ………対言わないもん。仮にヘアケア剤について聞かれたとて、「ありがとう!いち髪だよ〜!」で話題終了だ。いち髪使ってるのは嘘じゃないし。

 まぁ本件の真相についてはさておき、湯シャンというものが、日常的にシャンプーを使って何のトラブルもない人たちからすると、思わず糾弾せずにはいられない、非常識な行為だということは確かなようだ。裏を返せば、シャンプーをすることによって、世間の常識にするりと馴染めるという絶対的な安心感がある。これは私も実感があって、シャンプーをした日は安心して夫に密着できるし、積極的に“カワイイ奥さん”になっている自覚がある。実際の清潔よりも“清潔”が重要視されるこの世の中では、湯シャンを貫くのは、精神的に本当に難しいと感じた。

 一方、欧米では毎日シャンプーする方がマイノリティだという。お肌のために湯シャンを継続したい私は、日本を脱出して仏在住のおしゃれインスタグラマーになるべきなのかもしれない。

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