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タマゴバッグ

 ミナペルホネン。みんな大好き、ミナペルホネン。
 圧倒的におしゃれで可愛いテキスタイル。そして圧倒的に可愛くない、あまりにイカつい価格設定。
 先日子育てセンターにて、run run runに並んでブランドを代表する柄・tambourineのタマゴバッグをお持ちの女性を見かけた。
 ミナのタマゴバッグ!私も欲しかったなあ。しばし感慨に耽る。
 タマゴバッグを持ってらっしゃるくらいだから、彼女がさぞおしゃれに熱心で、相応にお金もかけているだろうことは容易に想像がつく。
コンパクトなショートボブに、ふんわりしたコットンの白いシャツワンピに、足元は毛のタイツの上に厚手の靴下を重ねばき。テイだけ見れば、まさにナチュラル系インスタグラマーのそれ。私も大好きなテイストである。

 しかし、はっきり言って、あまり素敵に見えなかった。3歳くらいのお子さんをお連れだったのだが、装いのせいで、おばあさんなのかな?とまでは行かないが…、ぱっと見随分年配の方に見えた。私はあれがブランド物のバッグだと知っているけれど、知っていても、なんだか田舎のおばあちゃんが端切れで手作りしてくれたみたいだった。その田舎臭さ、野暮ったさを、可愛さに昇華できればよかったのだろうが、残念ながら、彼女のタマゴは不満げに、ありのまま燻っている。
 もちろん、実年齢よりただ若く見られることが良いこととは思っていない。が、実年齢よりただただ老けて見えるのはいかがなものか。高校生が大学生に間違えられるようなことならいざ知らず、25も過ぎたなら、どうだろう。

 ファッションにこだわりがありそうだが、当の本人は素敵ではない。
 要するに、独りよがりなのだ。プライドが高そう、自意識が強そう。そうした人を見た時、第三者が受ける印象は辛辣なものだ。
 少なくとも、尊敬はされない。
 もちろん、本人が「誰になんと思われようと関係ない。私は私のしたいようにする!!」という強固な意志を持っている場合は別だ。それで心から幸せを感じるなら、むしろ絶対にそうするべきだ。街で見かけた彼女のことを、私は素敵だと思わなかったけど、彼女自身はそんなこと知ったこっちゃないわけで。彼女自身が、タマゴバッグにふんわりワンピの自分のことを心から好いていられるなら、それは大成功のオシャレだし、とてもカッコイイことだと思う。
 私自身もかつては、ファッションについて、「他人モテより自分モテ」というテーマを掲げていた時期がある。しかし私の場合は、結局それは完全な強がりで、本当のところは、めちゃくちゃ他人からモテたかった。尊敬され、大切にされたかった。誰をも差し置いて貫き通したいほど強い自我なんて、私にはなかったのだ。

 大した自我もなければカッコよくもない私だけど、ようやくそんな自分のことも好きになれそうな兆しがある。他人モテより自分モテを優先できるカッコイイ女に憧れちゃって、迷走していた自分も、今から振り返れば、若くて必死で闇雲で、なんともカワイイじゃないの。今から振り替えると「なんじゃこりゃ」と目を覆いたくなるような服装、髪型、メイク(あるいはノーメイク)の数々。だけど、その時は必死で真剣で、それがベストだと思ってたんだから。カワイイ。

 あら不思議。こうして書いている間に、街で見かけたタマゴバッグの女性だって、なんだかとても可愛く感じられてきた。

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