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「農業とは、土に生命を与えることです。」

竹下哲生のバイオダイナミック農業講座
~静寂ゆえにダイナミックな発酵の世界~

農業と発酵は全く関係ないようですが、むしろ有機農業とは発酵なくして成し遂げられない農業だと思っていました。
 
というのも、有機農業では化学肥料を使わずに堆肥やボカシ肥料を使いますが、それらは発酵によって生み出されているからです。
 
僕が農園で使用する堆肥やボカシ肥料は自分で発酵させて作っているのですが、失敗したこともあります。その時の(文字通り)苦い経験から腐敗してしまった堆肥は絶対に、畑に入れないようになりました。カビが生えてしまったり、腐敗臭のする食べ物を自分が食べないように。
 
そんな感じで、経験的にうまくいったことを繋げていき、今の農業スタイルになってきた訳ですが、あるとき自分が目指している土(畑)は、発酵してる土のことではないかと気がつきました。
 
さて、その講座の内容は、
竹下先生本人が講義前にすでに「講義録」を作っていて、本人も自信があったと言っていたことだけある、とても素晴しいものでした。

というわけで、今回の講座は、世界に誇る日本の伝統醸造技術の日本酒造りから詳しく入っていきました。
 
なぜ日本酒?と説明を聞きながら思っていましたが、後になってから、その意味を理解することに。
 
酒造りではまずは「酒母」というお酒の元を作ります。それは糖をアルコールに変える酵母を増やしていくためです。
ビールの場合も、スターターといって少ない量でビールを作り酵母を増やしてから、メインの発酵タンクに投入して醸造するやり方もあります。
パン作りでも、パン種を作って酵母を増やしていく方法があります。
 
おそらく酵母を活発に活動させるには、ある程度の密度が必要になるので、始めから大きな環境に酵母を放たないのだと思います。
 
そもそも人々はなんのために食品を発酵させるのか。
  
当たり前ですが、無添加の食べ物は常温ではすぐに腐ってしまう。 冷蔵庫のない時代、食べ物を長く「保存」をするため世界各地で、発酵食品が地域ごとに発達していきました。
 
でもそれだけではなく、味も良くなったり、栄養価があがったりと、副産物として身体に良いことがたくさんあるのが発酵食品の特徴ですね。
 
前回の講座では「硫黄プロセス」であるモノが「燃える」ということにフォーカスしました。
「発酵」も、静かに燃えている状態です。
 
植物は「生産者」としての光合成により物質を構築していきます。水と空気から炭水化物を合成し、樹木の場合一生成長し続けていきます。まさに無から、有を創りだしています。
 
動物は「消費者」として、酸素を消費し、植物の炭水化物を取り込むことで生きていきます。
 
「発酵」では、わずかな呼吸によって本来腐ってしまう植物や動物を長期間保存します。アルコールの場合、酸素に触れなければ幾年も保存可能です。
 
そんな「発酵」は、この「生産者」と「消費者」の間に位置するそうです。

現代の農地は、家畜糞を処理する都合の良い場所となり果てていますが、果たして自然はそれを望んでいるのでしょうか?

それについて竹下先生は尊敬する上司へのプレゼントを選ぶように、自然に対して与えるものを選ぶべきだ、と思わず納得出来る例えを示してくれました。
 
バイオダイナミック農業とは、農業者によって天然の自然である、「土」に生命を吹き込み、作物から得られた収穫物を長い期間「発酵的生命」によってすぐに「崩壊・分解」しないように、「土」を一つの生命体のようにすることなのだろう。
 
呼吸をし、消化をし、感受性を持ち、あたかも生命体のように「土」が活動を始めることで、人間や動物にとって最良の収穫物を与えてくれる。
 
バイオダイナミックのデメター認証を取得するには、農園内で使用する堆肥や肥料も、農園内から調達する必要があります。自然農の考えと同じですが農園外から何も持ち込まず、農園内で循環を作り、全てを農園内で自己完結することを目指します。
 
「農業には発酵技術が必要だ」と考えていましたが、
土(畑)そのものを発酵(生命化)させようとするバイオダイナミック農業。だから自分はこの農法に魅かれたんだろうな。
 
そのカギになるのは、農業者と個別的関係を持っている堆肥になります。まるで、酒造りの「酒母」のようだな存在だなと思います。
 
そこで根本的な疑問が沸いてくるのですが、一体生命力に満ちた堆肥とは、どんなものなんだろう?
ヒントは農業講座の第四講だそうです。






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