見出し画像

Pec-ceP 2 事業計画

社団法人「赤道で水素を作る会」の自己紹介(再掲)          名称  一般社団法人 赤道で水素を作る会
所在地  静岡県熱海市熱海1739-34 パサニアクラブ1910
代表理事 吉田峰男                          業務執行理事 岩井俊樹 藤原光利  監事  滝沢正          設立 任意の研究会として2011年有志により活動開始           2019年11月一般社団法人設立 


後編
『事業化』構想                           事業化構想といっても、事業化の主体は私達ではありません。私達に出来るのは構想のアウトラインを描くところまでです。

1.事業化への検証(協力者・支援者募集)
事業企画グループ(冒険投資家・投資会社)によるフィージビリティ調査 借り入れによらない(企画段階での)研究資金の調達 特許権の分割譲渡
2.総括的な経営計画の作成  
2-1 事業参加企業募集と資金調達計画
試験プラント段階での資金調達 自社資本 政府支援
2-2 収益事業化 特殊法人など政府・政府系企業・一般営利企業

赤道反流上で生産されるH2,CH4,NH3との発電向け適性         クリーン水素と二次製品が発電所などの大量消費先での発電手段に対し価格的優位に立てるかどうかが、本事業の成否を分ける。
本事業は当社団が行うものではないが、事業主体がどこになるにしても、価格的に優位であれば供給規模が拡大し、大量生産によるコストダウンが更に進むからである。

赤道反流にフロート基地を敷設し、そこに生産設備と製品の積み出し設備を作るための工事は設置する場所が海水面だというだけで、人里離れた平坦な原野の大規模な開墾などに似ている。開墾事業を進めるには全部が完成するまで待つ必要がなく、浮遊するセルと太陽光パネル、電解装置、生産されたH2の充填と積み出し用のトルエンコンテナー、そしてそれらの資材を運搬し、復路でMCHを持ち帰れる上に、船上で作業員が寝泊りできる貨客船を係留できる設備があれば事業を開始することが出来る。つまり、未開発の原野の開墾のように、あらかじめ確保された予算の中で出来る規模のフロートを作りながらそこでH2生産事業を開始できるので、リスクの少ない段階的・継続的な設備投資が可能になる。


水素の生産コストは太陽光発電による電力が上記のランニングコストに含まれるので『ゼロ』と考えてよいから、あとは海上輸送費ということになる。
それに対して、競合する化石燃料由来の水素の価格は天然ガスの価格を大幅に上回る(CH4から2H2を製造すると天然ガス重量の1/4しか製造できない)
MCHコンテナーの輸送でも充分に利益を得ることができる。
日本では2030年の水素ガスの輸入価格の目標を¥30/Nm3としており、中国では¥17/m3程度を目標にしている。
通常の電解による水素生産でこの目的価格を実現するのには無理があるので、¥17/m3が得られる製法としては低品質石炭や原子力電源の水蒸気改質によるものと思われるが、それでもこの価格が得られるかどうかは未知数である。

「赤道水素」であれば、CIFコスト¥17/m3はまったく問題なく達成できる。下記に輸送費の見積もりを記す。
1/Nm3は89.3g=0.1㎏  1㎏=¥170 MCH=¥8500
20Feetコンテナ(トルエン充填専用コンテナー) 容積32m3 
最大積載量28,000kg(自重3tonを引いて25,000㎏)
32m3はMCH(比重1.05)で33ton そのうち、含有される水素は1600kg/container
1600kgの水素価格は¥170/Nm3(0.1㎏)=\1700/kgだから、コンテナーあたり\272万。
コンテナー1000個で28000ton/cargo
水素1600000kg=1600ton/cargo=\2,720,000,000=27億
つまり、35000tonの貨物船で一回輸送すると、27億円になる。
赤道反流→上海で¥50,000/containerと仮定するとコンテナー1000個で5000万/航海
諸費用を含めて1億としても1億/27億 約4%
<参考>
http://www.pref.mie.lg.jp/common/content/000410181.pdf

<陸揚げ後の費用>
赤道水素の問題は輸送価格よりも陸揚げ後の費用にあるかと思われる。陸揚げされたMCHから水素を取り出して水素の貯蔵をするとなると、1600tonの水素を低温液化したまま貯蔵することは現実的ではないので、MCHはコンテナーのまま小口の貯蔵スペースに移し、そこで水素を取り出し、液体水素トレーラーか圧縮水素トレーラーに封入して使用者に納入しなければならない。この作業を使用者の在庫が切れないように補充するのは大変な負担になる。

水素導入期の社会では市場が小さすぎるという問題もある。
工業用の水素は自家生産が多いが、水素製造時の熱源を利用するなど構造が出来上がっているので、外部から水素だけを購入する動機に乏しい。
結局、大量の水素をコンテナーのまま右から左に次々と捌いていくのには発電所で使うしかない。
既存の天然ガス発電設備に対して水素ガスを混焼する方法は確立しているが、混焼できるのは技術的に言ってMax30%とされている。
しかし、この方法で発電しても削減できるCO2は10%程度であるし、発電所側から見ても節約できる燃料費は天然ガスと水素の調達費用の差額にすぎない。
石炭火力発電所での水素は燃焼炉の高熱化に使われているが、石炭の水蒸気改質で得られるので赤道水素の売り込み先としては望みがない。
小口需要先への売り込みにはいろいろなケースが考えられるが、一般的には需要現地で天然ガス由来の水素を生産した方が安上がりになると思われる。小規模の天然ガス由来水素の生産工場が出すCO2は規制の対象にならない可能性が今後も高い。水素生産時にCO2を排出しても、その水素の利用によってトータルのCO2削減効果が見込めるからである。

以上のように、クリーン水素単体は生産コストは低廉であっても、陸揚げ後の使用可能範囲は決して広くない。
水素を最大限生産してCO2削減に役立てるためには、フロート基地上の無料無制限の太陽光発電能力やその他の利点を生かし、水素から二次製品を製造して用途を拡げることに尽きる。

水素の二次製品としては再生メタンとアンモニア(後述)を生産する。再生メタンは天然ガス火力発電所の燃料になることから、またアンモニアも製造コストさえ安ければ、その物理的特性は発電材料に適していることから、大規模な使用が可能であり、その分CO2削減に目覚しく貢献できる。

<再生メタン>
再生メタンの用途は天然ガスとまったく同じであるから販売先には事欠かない。輸送なども従来の社会インフラに便乗できるので納入コストも既存の天然ガス業者に大きく劣ることはなく、天然ガスとの価格競争は生産コストによる部分が多い。
サバティエ反応によるメタン製造は商業的に大規模に行われてはいないが、理由は天然メタンが豊富にある中で人工的に作っても経済的に意味がないというだけであって技術的な問題からではない。
しかし、ランニングに必要な原料や熱源はすべて無料で入手できるというフロート基地の特殊条件下であれば事情は大きく変わる。
天然ガスは市況商品であり、再生メタンも天然ガスの日々の相場で販売できる。市場規模も大きいので赤道水素が市場に参加しても相場に影響を与えて既得権層を脅かすほどではないのではないか。
再生メタンの製造が軌道に乗るまで、原料のCO2はフロート上で大気中から取り入れるしかないが、火力発電所などが排出する産業廃棄物としてのCO2を適正な手数料を徴収して引き取れるようになれば、それを再生メタンの原料として利用するようにして生産コストを切り詰めることができる。通常であればCO2をドライアイスにして運ぶのには費用がかかるが、この構想であればフロートに空き荷で戻るメタンタンカーに積み込むことで輸送費を削減できる。産廃のCO2で作ったメタンを燃してCO2を排出しても、CO2が循環するだけであるから、同量を天然ガスで消費することと比べれば莫大なCO2削減に寄与する。                          当サイト内の関連ページ 水素キャリアとしての合成メタン  https://note.com/pec_cep/n/na243b14aca70

サバティ反応によるメタン合成                http://sekido-suiso.main.jp/yy/sabatier.pdf

<アンモニア>                           アンモニアは化学的には発電燃料に適した物質であるが、従来の製造方法では原料の一部の水素を作るのにコストがかかるので、使用目的は肥料やプラスチックなどの高分子材料などが主になっており、(現在のアンモニア製造コストでは天然ガスに価格競合できないために)実際に発電所で稼動している実例がない。
したがって、再生メタンのように生産すればすぐに発電に使えるものではなく、アンモニア発電用の設備を新しく作らなければならないという課題があるが、それさえ解決すれば非常に有望な発電燃料になりうる。フロート基地で生産すれば生産に必要な原料(H2とN2)と製造環境(高温・高圧)は全て自前で無料で入手できる強みがあるので、メタンに比べて液化輸送が簡単な半面、同重量で運べるエネルギー量が少なくなるという弱点も、生産地から直接消費地に大量輸送大量消費できる発電目的であれば大きなハンディにならない。
発電をするためには常に大量の在庫を手元に置いておかなければならないが、アンモニアは天然ガスに比べて液化温度が高い分在庫の維持管理費用が安上がりで済むと期待される。
アンモニアの場合も製造原価イコール海上輸送費であるといって差し支えないので、アンモニアタンカーの空荷航路で産廃CO2を運び、再生メタンの原料にするCO2リサイクルに組み込めば、在庫貯蔵の経済性とあいまって、陸上輸送の部分が少ない沿海部での中規模発電には理想的な燃料になりうる。
このことはまた、中国以外の諸国にアンモニアを窒素肥料などの原料として輸出するよりも、発電プラントとして輸出できる可能性がある。
低価格なアンモニアの輸出は、輸出先発展途上国の脆弱な既存アンモニア工業の基盤を揺るがしてしまうので避けるべきだが、発電原料であればその国の発電燃料に多様化を与えることにもなり、中国から見れば発電目的のアンモニア供給を独占できることになる。(陸上でアンモニアを製造しても、水素製造コスト面で差が出てしまうので発電燃料としては引き合わない。)
もし仮に中国がXEROX方式で発電プラントを無償輸出し、以降のアンモニア輸出で利益を得る形を取れれば、輸入国は先行投資なしで電力を手に入れることができ、低価格アンモニアの流入による輸入国産業への打撃を避けることができるので、基本的にはWIN-WINの関係が成立し、クリーンエネルギーの普及にも繋がる。                         

アンモニアの製造 http://sekido-suiso.main.jp/yy/haber.pdf

        生産コスト 大量輸送適性 発電適性 CO2排出㎏/㎏
赤道水素      ◎      ○×     ◎   ◎◎ CO2排出0
水蒸気改質水素   ○      × ×     △   ×H1㎏/CO2 22㎏
再生メタン                ◎      ○ ×    ◎    ◎CO2 neutral
天然ガス      ◎      ○ ○    △    ×H1㎏/CO2 22㎏
石炭        ○      ◎     △    ×××
赤道アンモニア   ○       ○     ○     ◎◎ CO2排出0
原子力                       ○(安全対策) ◎      ○(水が必要) CO2排出0
風力発電         ○(不安定)  ○    ○××× CO2排出0

フロートの有効利用                         6,000km2もの面積を持つメガフロートでは太陽光発電のためのパネルを屋根の上一面に敷き詰めると、その下にいろいろな設備を置いても水面スペース(筏の部分)と水中スペースが余ってしまうので、そこでフロートの利点を生かした事業を同時に行い、フロートをコンビナート的に有効活用することで事業収益を最大化することができる。

<フロートの余剰スペースを活用した産廃CO2の水面下貯蔵>      産業用に排出されるCO2やNOxを回収するだけなら、純技術的には難しいことはない。問題は回収したこれらのガスの廃棄または再利用法である。現在研究中(一部実用化)されているものとしては廃CO2を油田抗跡などに注入し、周囲の地層に滲み込ませる方法があるが、立地条件などの制約から採算が取れそうにないものも多く万能的なソリューションにはなり難い。   しかし、もし仮に石炭火力発電所などから排出されるCO2やNOxを完全に回収できれば、その石炭火力発電所は自然再生エネルギーに引けを取らない環境対策済みの発電所になる。周知のように石炭火力発電の長所は原価の安い石炭を燃料として使えることであるから、そこにCO2やNOx,SOxを処分する費用を加えても他の燃料と競争できるのであれば火力発電を目の敵にする必要もなくなる。一方でフロートの水面下にはいろいろな設備を置くものの、その面積はソーラーパネルの設置面積に比べればごく僅かであり、残りの余剰面積の水面下には多数のエアバッグを沈めることが出来る。CO2を水中のバッグに収納すれば水圧とバランスが取れるので、加圧しても陸上のように堅固なボンベを必要としない。別のページで触れているので詳細は省くが収納できるCO2は数億㌧あるいは数十億㌧に及ぶ。しかも、その一部は再生メタン製造などに使える資産である。                  火力発電所や重工業から排出されるCO2を回収し、ローコストで赤道反流まで大量輸送できるようになれば、石炭火力発電は自然再生エネルギーに変貌する。現在でも膨大な量の原油や天然ガスや石炭が海上輸送されているわけだから、輸送問題はコスト面だけであろう。排ガス問題さえ片付けば、石炭火力発電所もH2やCH4を混焼して石炭の燃焼効率をよくしたり、排熱の有効利用などの改善を加えた次世代石炭火力発電所の建設ができるようになるであろう。

http://sekido-suiso.main.jp/yy/co2_storage.html


<電気分解時の副生品としての低濃度重水の貯蔵と利用>                            重水D2OはHの同位元素deuteriumが含まれている水のことで、天然水にはもともと1/7000程度含まれるとされている。中性子が一個多くてその分質量が重いことから物理的には比重や沸点などに自然水(軽水)と微妙な差がある。電解速度は水の数分の1であるから,水の電解残液の中には重水が濃縮される。フロートには多数の電解槽があるので、そこで生じる残液を他の電解槽に集約して電解を行うと重水濃度を上げることが出来る。フロート上でこの作業を行う利点は単に電解槽が多数あるからだけではない。電解槽ではH2を製造するために電力を消費する。重水の製造が目的ではないので、電気コストを原価に含める必要がない。フロート上であれば大量に製造した高濃度重水を水面下のバッグに貯蔵できる。物理的性質は水と同じであるから、バッグ本体の保存性にも難しい点はない。純粋の重水を作るのには、作る場所に船で運べばよい。無料の水から精製する重水が高価なのは、精製に多量の電力を使用するからである。

<海水からのリチウム採取>                     核融合の燃料はつまるところ重水素とリチウムということになります。  リチウムは鉱物資源として940万㌧ほどあるといわれていますが、海水1㎥にも0.2gほど存在するといわれています。リチウムはリチウム電池の原料として広範に使われていて、資源回収も進んでいますが鉱物資源をどこまでも掘り起こすとなると新たな環境問題が発生します。一方で海水からリチウムを取り出す方法は実用段階に差し掛かっています。(実際の海水からリチウムを回収する試験をしたところ、3日間で海水に含まれるリチウムのうち最大約7%を回収できたという報告がある。)               海水を蒸留して淡水化する場合に生じる濃縮された海水は当然リチウムの含有率は高くなり、析出作業の効率も上昇します。核融合発電が実現すると、その原料になるリチウムは大量に必要になり今のままでは枯渇するか、価格が暴騰してしまうので海水からのリチウム析出は今後期待される事業です。

<海洋温度差発電>                         自然再生エネルギーの利用法がいろいろ提案されている中で最初から採算的に実現可能性の薄いものが多いなかで、この「海洋温度差発電」はさまざまな前提条件がつくものの、その条件さえ折り合えばフロートの多面的な利用法として可能性を検討できるもの一つであると考えられます。

前編に戻る https://note.com/pec_cep/n/n5d5839d5082a

10/28 公開しました。 「何故中国か?」

「投資計画 近日公開」                       仕事依頼 HP制作


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?