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曖昧な関係を音楽で表現してくれたバンド

付き合ってはいなかった。
でも、恋人たちと同じような過ごし方をした夜があった。
苦しみと幸せが8:2くらいのこの思い出に音楽を添えてくれたのは、クリープハイプだった。

これは意味不明な2人の話。

ラブホテル


夏。
「ああもうだめだな」と思った。
春に知り合ったとき、初めのうちは彼を知ろうとしていた。でも途中から彼が何を考えているのか知るのを諦めた。
正確には、知るのが怖くて知らないふりをした。
目的なんてなんでもいいと思ってしまった。
フロントで無意識のうちに選んでいた307。
自暴自棄になりかけている私を、彼は優しさに溢れた対応で安心させた。
私はあえて、その優しさの裏を見ようとしなかった。

『俺、今は彼女いらないんだよね』
その言葉を聞いてはっきりと絶望し、これがキケンナアソビだと認識するのはもう少し先の話だ。

愛のネタバレ

秋。
この2人の関係はきっとうまくいかない。
そう考えていたときにリリースされた「愛のネタバレ」。
この曲を聴いて何回涙を流しただろうか。
家の最寄り駅にいくつかある夜のコンビニに一緒に行ったこと。
駅まで彼を送ったあと、さっきまで2人でいた家に帰るのが嫌で駅前の椅子でただぼんやりとしていたこと。
初めて見た人に運命を感じてそれを信じて疑わなかったこと。

最初から最後まで歌詞に付随する思い出が湧き出てきて、1人で何度も泣いた。
彼に出会ったばかりの私にこんなネタバレをしたら、絶望なんて言葉では言い表せないくらいの顔をするだろう。タイムマシンがなくてよかった。
うまくいかないと分かっていても、私は彼から離れられずにいた。

本当なんてぶっ飛ばしてよ

冬。
別れが近づいてきていることになんとなく気がついていて、それに未だに気づかないふりをしていた。
今は彼女いらないと言う彼と、曖昧な関係を終わらせたい私。夜だけ恋人同士になる2人。
「ああもうだめだな」と思ったのはこれが最後だ。
さよならどうかお元気で。そう思えるくらいにいつの間にか成長していた。
相変わらず、涙は流していた。

今の私と彼の間に「今度会ったら」は二度と来ない。

死ぬまで一生愛されてると思ってたよ

死ぬまで一生愛されてると思ってたのも、死ぬまで一生愛すると思っていたのも、信じていたのも、結局私だけだったようだ。嘘も本当もない。

それでも。
クリープハイプに出会えていなかったら、傷まみれの思い出はずっと痛々しい傷のままだったかもしれない。

今こうやって生きているのは、言葉にできないぐちゃぐちゃの感情をクリープハイプが音楽で表現してくれたからだと思う。

どん底にいる人間を励ますというよりは、同じくらいどん底まで沈んでくれて、ずっと共感しててくれる、そんな気がする。

クリープハイプがいなくなったら寂しいし悲しいから、私はこのバンドを死ぬまで一生愛する。
これから先の人生、傷ついたときに真っ先に助けを求めるのも、曲を聴いて感情に浸るのも、クリープハイプだ。

でもまたライブに行くときは、泣かずに参戦できたらいいな。そう思いながら、私は今日もクリープハイプの沼に浸っている。

これは、辛かった日々もクリープハイプのおかげで生きていられて、少し強くなった1人の話。

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