kindle unlimitedで読んだ本まとめ

Kindle Unlimitedに3ヶ月登録していました。(2023年7〜10月)
読んだ中でも面白かった作品をまとめます。
(※すでにKindle Unlimitedでの提供が終了しているタイトルもあります)

●『[映]アムリタシリーズ』(野崎まど)

このシリーズは『舞面真面とお面の女』を除き読んだことはあったのですが、『舞面〜』を読んだら他の作品も再読したくなり、『[映]アムリタ』『死なない生徒殺人事件』『2』を続けて読みました。
(『小説家の作り方』『パーフェクトフレンド』は内容をしっかり覚えていたので除外)

人智を超越した《天才》・最原最早(さいはらもはや)の描き方、クセになる軽妙なやりとり、先の読めない展開。
何回読み直しても楽しめるシリーズです。

●『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』(汐見夏衛)

戦時中にタイムスリップした主人公・百合と、特攻隊員・彰の儚い恋の話。

失礼ながら、表紙からは『よくある感動ものラノベかな?』という印象を受けたのですが、そんな先入観を抱いていたことを後悔しました。
戦争の重さをしっかり描写し、その憤りややるせなさを、少女世代に共感できるように描く一方、特攻隊員との恋は穏やかで優しい。この二つの要素がバランスよく両立しています。
戦争がすっかり薄れつつある今の世代にこそ読んでほしい。

●『君はきっとまだ知らない』(汐見夏衛)

男女4人の幼馴染。そのうちの1人、しっかり者の女の子・光夏がいじめに遭って……というお話。

4人のキャラがそれぞれ魅力的で、等身大なやりとりは青春そのもの。
ところどころで感じる違和感が、最後に繋がる展開は驚きました。
上の作品もそうですが、汐見さんは中高生女子の葛藤を書くのがとても上手い。

●『星の子』(今村夏子)

自身の体の弱さが原因で両親が新興宗教にはまってしまった女の子の話。というと、暗い展開を想像してしまいますが、流れる空気はどこまでも静かで優しい。

女の子が宗教に浸かっていることを知りながらも、差別せず接する周りの人達に救われます。 
最後は尻切れとんぼのようにも感じてしまいますが、不穏な噂や近づく両親との離別から、その後の展開が想像できます。
温かく美しいラストシーンが切ないです。

●『硝子の塔の殺人』(知念実希人)

ミステリ好きな亡き主が建てたという《硝子の塔》。集められた曰くありげな面々。起こるべくして起きた殺人の裏側にはミステリへの偏愛が潜んでいて……。

著者の名前から、勝手に医療ミステリだと思ってしまっていたのですが、重厚な本格ミステリでした。
いかにもな舞台設定から二転三転する展開。
『硝子の塔の殺人』に関わった人間たちの、ミステリに対する偏愛と執着がなせる業。
王道のミステリを心ゆくまで堪能しました。

●『終わる世界のアルバム』(杉井光)

前触れなく人が消滅して、その痕跡すらなくなってしまう世界。そんな中でひとりだけ記憶を保持する主人公。

親しい人が突然にいなくなってしまう現象は悲しく理不尽で、美しい文章がその切なさを引き立たせます。
近い未来滅びる中で、恋をしたり笑い合ったり、日常を続ける人たちの姿には、諦めからの穏やかさがあります。

●『灼熱の小早川さん』(田中ロミオ)

内心クラスメイトを見下している優等生・飯嶋。クラス委員の小早川さんに告白したことで、彼の学校生活は思いもよらぬ方向へ……。

クラスメイトを愚かと切り捨て、《正義》を振りかざす小早川さんの、痛々しさとエネルギーが凄まじい。
クラスメイトにも悪いところはありつつも、やはり、どちらかといえば彼らに同情してしまう。
小早川さんのエネルギーがフル解放される終盤の爽快感、なんとなく収まるべきところに収まるラストが好き。

●『なぞとき遺跡発掘部』(日向夏)

考古学専攻の貧乏女子高生・灯里が、発掘調査先で直面する謎の数々を解き明かしていく。

『薬屋のひとりごと』の日向夏さんの別シリーズ。
凝った修辞はないけれど読みやすい文章、一癖あるキャラたち、なにより主人公の女の子の逞しく飄々とした性格が魅力的。
派手な展開はないですが、安心して読みます。

●『神栖麗奈は此処にいる』『神栖麗奈は此処に散る』(御影瑛路)

美しい女子高生・神栖麗奈。彼女に関わる人々の間で死が蔓延する理由とは。

《神栖麗奈》という存在を巡るミステリ(ホラー?)。
最初の短編ではオチが見えてしまうのですが、それが話数を重ねるうち、得体の知れない存在への恐怖を覚えました。

●『キネマ探偵カレイドミステリー』(斜線堂有紀)

引きこもりの大学生・嗄井戸と、ひょんなきっかけで彼に関わることになった平凡な大学生・奈緒崎が、映画にまつわる謎を解決していく。

斜線堂有紀さんのデビュー作……とは思えない完成度。
引きこもりで映画マニアの探偵・嗄井戸のキャラと、古典名作映画にまつわる謎が魅力的です。

●『恋に至る病』(斜線堂有紀)

美しく、人を惹きつける魔性を持つ女子高生・寄河景と、彼女を愛する少年・宮嶺。小学校期のある出来事が、彼らを罪へと導いてしまう。

ずっと気になっていた本なので読めて嬉しかったです。
不思議な求心力を持つ美少女。どこまでが嘘でどこまでが真実の言葉か、どこまでが恋でどこまでが打算か。底知らない寄河景は、だからこそ魅力的に映ります。

●『私が大好きな小説家を殺すまで』(斜線堂有紀)

幼少期に虐待され自殺しようとしたところを、小説家・遥川祐真に救われた梓。やがて彼と暮らすようになるが、彼女の書いた小説をきっかけに2人の関係は一変する。

初めはただ庇護されていた少女と、小説を書くのに没頭していた小説家。それから共依存関係に至るまでの2人の変化が切ないです。
2人が幸せになる方法は無かったのかと想像してしまう。

●『夏の終わりに君が死ねば完璧だったから』(斜線堂有紀)

体が徐々に金化する《金塊病》にかかった少女・弥子と、貧しく島に囚われている少年・日向。
弥子の死体には死後3億円の価値がつく。弥子はそれを日向に譲ると言い出して……。

自分の死体が金塊に変わると言われたら、人はどう生きて、そして死ねばいいのか。
金に目が眩んだ周りの人々の態度が生々しくて恐ろしい。そんな中だからこそ、主人公とヒロインの選択が輝きます。

●『おはよう、愚か者。おやすみ、ボクの世界』(松村涼哉)

SNSに書き込まれた、高校生が中学生たちから3023万円の恐喝を行ったという告発。その告発の当事者となった音彦だが、その裏には様々な思惑が絡み……。

暴力・恐喝事件の告発から始まるという衝撃的な幕開け。
事件の見え方が二転三転し、誰を信じて良いかすらわからなくなってしまう展開に、SNS上の告発によるスリリングな場面の連続。
先が気になって一気読みしてしまいました。

●『悪逆大戦』(綾里けいし)

108番目の王の子が、地獄に堕ちてしまった愛する人を救うため序列が高い王の子たちに勝負を挑む。
勝負の駒となるのは実在・非実在問わず有名な悪人たち……という設定がすでに美味しいです。
変わり者の王の子・ネロとの関係も好き。

●『交換ウソ日記』1、2(櫻いいよ)

ある日、移動教室の机の中に『好きだ』という告白の手紙を見つけた希美。自分宛と思ったその手紙の主とやりとりしているうちに、希美はある勘違いに気づいてしまい……。

自分と他人と比べて悩んだり、本当の自分を曝け出せず葛藤したり。等身大の高校生の姿が瑞々しいです。
個人的には《2》の江理乃の話が好き。

●『トリックスターズ』(久住四季)

世界に6人しかいない魔術師の一人・佐杏冴奈と、《魔学》を研究する大学に入学した天乃原周。彼らは魔術師アレイスター・クローリーの血族と名乗る者によって推理ゲームに巻き込まれていく。

《魔学》、文字通り魔術の学問研究が存在する世界で起きる事件を推理するという、特殊設定ミステリの走りのような作品。
冒頭の挑戦状には否応なくテンションが上がります。
トリックについては比較的読めてしまうのですが、《魔学》が絡む理由付けや動機が目新しく面白いです。

※※※※※※

ここからはKindle Unlimitedを使ってみての所感です。

まず、以前登録していた頃(2年前)より、読みたいと思う本の数はかなり増えていました。
特にライトノベル・ライト文芸系が充実した印象。
スマホで読むにはこうした軽めの書籍のほうが良いので、これは嬉しい変化でした。
(『旅のラゴス』(筒井康隆)とかも読んでみたかったのですが断念……)

また、毎月の更新で目玉とも言える売れ筋作品が必ず入るのが嬉しい(斜線堂有紀さんや、『硝子の塔の殺人』など)。

ちょっとした空き時間に読んだり、今まで読んだことのなかった作家を発掘するのにも便利でした。

デメリットとしては、作品の探しづらさ。
新着作品を探すのも、面白そうな作品を探すのもやりづらい。

私は『メディアワークス文庫』『講談社タイガ』などレーベルで検索して、unlimited対象で絞り込み検索してました。
せめて検索結果を人気順で並べ替えられるようにしてほしいです。

とはいえ、定額でこれだけ豊富な書籍が読めるのは魅力的。
通常は月額980円ですが、キャンペーンで安くなっている時を狙って登録するのもおすすめです。





この記事が参加している募集

#読書感想文

188,615件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?