大いなる遺産/チャールズ・ディケンズ 読書感想文 〜少年ピップ、成長のストーリー〜

「大いなる遺産」はチャールズ・ディケンズの長編小説。

労働者階級の孤児、フィリップ・ピリップことピップが

贈り主不明の多額の財産を受け取ってジェントルマンになる、
という物語です。

その中に、恋あり、友情あり。

豊さと貧しさ、高慢と謙虚、復讐と恩返し、
犯罪と法、出会いと別れ。相反するものの中に、
揺さぶられながら、進んでいく人生の旅。

人間が人生で経験するあらゆる出来事が、
物語の中にぎっしりと詰まっています。

一言で言うなら、大いなる遺産は
「少年ピップが成長していく話」です。

浪費、高慢、猜疑心、思い込みで人を判断するなど、
幼くて、未熟な主人公のピップ。
しかし彼の周りには、その未熟さを容認し、
彼を愛してくれる人達がいました。

多くの登場人物から愛される理由として、
ピップは本質的に、無邪気でやさしく、
そしてどこか可愛げのある、
人間味に溢れた性質を持っています。

色んな人に助けられ、
そして成長していくピップ。
読了した時、読者である私たち自身も
ピップの物語を通じて、
成長の意味を知ることでしょう。


さて、「少年ピップが成長していく話」
と一言で言いましたが、その中身は、
一言で片付けるには、
とてももったいない程の
めくるめく展開があります。
ユーモラスなキャラクターの登場人物の数々。
それらが物語に彩りを与え、
読者をどんどん引き込んでいきます。

ざっと挙げていきましょう。

墓場で出会った恐ろしい囚人。
口うるさい姉。
義兄、鍛冶屋のジョー・ガージェリー。
大金持ちだが、窓のない部屋で暮らすミス・ハヴィシャム。
そしてミスはヴィシャムと暮らす、超美少女エステラ。
ジョーの家に手伝いに来たビディ。
仕立て屋トラブの憎らしい小僧。
敏腕弁護士のミスター・ジャガーズ。
ジャガーズの事務所で働くウェミック。
やさしい好人物の友人ハーバート。

他にもたくさんの登場人物が居ます。

(余談ですが、長い小説を読むときは、
新しい人物が初めて登場する箇所の
ページを折ったり、
ラインを引いたりしておくと、
後で感想を書くときに便利です。)

物語の前半で起こる様々なイベントが、
後半でつながっていく時の
「こういうことなのか!」
という驚きと感動、興奮。

その見事な展開に、文豪ディケンズ後期の、
作家としての円熟した手腕が見られます。

クリスマス、墓場、貧困、監獄、など、
ディケンズの他の小説でも登場するパーツが
物語に組み込まれています。

そういった意味でも、
文豪ディケンズの集大成、
と言える作品。
それがこの「大いなる遺産」です。

読んでない方には超オススメ。
文学作品の名作中の名作です。



この記事が参加している募集

#読書感想文

189,141件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?