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Peak2Peakのデジタル写真講座第12回「光を味方につけよう」

<photo+graph>
フォトグラフとはphoto=光でgraph=描くことである。光が物体に当たって反射し、その光をカメラは記録する。かつてロラン・バルトは「写真とは全て過去にあったこと」と言ったが、もし未来から届く光があれば、きっと写真は絵画に近づきより自由を得るだろう。しかし、今のところ、写真は過去から届いた光しか、記録できない。

光には色があり、強さがある。角度があり、拡散の度合いがある。朝の光は低い位置から山々を照らし、「モルゲンロート」などと持て囃されるように、赤い色味であることが多い。低い位置から差し込んでくる太陽光線は、大気の中を長く通過してくるので、日中頭上に太陽がある時よりも拡散の度合いが高くなって柔らかい光になる。

<時の移ろい>
4月中旬、鹿島槍ヶ岳へ向かう稜線で幕営した。早朝、天気予報の読み通り、剱岳の荘厳な姿が朝日に浮かび上がった。被写体に斜めに差し込む光は、絵画の世界で言う「レンブラントライティング」に近く、被写体に陰影をつけ立体感、存在感を演出してくれる。

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後立山連峰は剱岳の眺望が素晴らしいが、とくに鹿島槍ヶ岳からの姿は、三窓雪渓、八ッ峰、長次郎雪渓、源次郎尾根、別山尾根の重なり具合よく、朝日が素晴らしい陰影をもたらしてくれる。4月中旬以降なら、爺ヶ岳南尾根ルートからアプローチすれば、天候次第ではあるが、そう困難なく稜線に出ることができる。

針ノ木岳周辺から撮った写真(下)と比べると、谷と稜線の重なり具合が違って見えることがわかるだろる。こちらは夕方の撮影だが、剱岳のこちらを向いている面は完全な影になってしまっている。(こうした場合は山容はシルエット的にとらえ、夕焼けの空を描くことにした方がいいだろう)

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次の写真は爺ヶ岳山頂から剱岳に沈む夕陽を狙ったもの。強い光源=太陽が画面内にあるので、露光値の設定は慎重に行うことが必要だ。明るく撮りすぎると太陽とその周辺がカメラのダイナミックレンジからはみ出してしまう。山容はシルエットにと割り切って、光源周辺がダイナミックレンジにぎりぎり入るように、アンダー気味の露光が選択肢だ。

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次の写真(上)は、剱御前からの朝の剱岳だ。斜めに差し込んでくる光は赤く色づいて柔らかい。まず雲が焼け、次第に岩肌を染めていく。刻一刻と変わる光に、迷う暇なくシャッターを切っていく。一枚一枚どれとして同じ一瞬とその描写はない。

「時」を一瞬に込めるのが写真の醍醐味のひとつ。光の移ろいを写すことができれば、その「時」を感じる写真になるのではないか。

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<ダイナミックレンジを使い切る>
フラットな昼間の光と違い、光源(太陽)映り込んだり、陰影がある朝夕の風景は、捉えている画面内の明暗差が大きい場合が多い。この場合、「ハイライト重点露光」というアプローチがアナログ時代からある。フィルムは最新のデジタルカメラのセンサーよりもダイナミックレンジが狭かったので、この「ハイライト重点露光」明るい部分を白飛びさせないように露光値を設定する必要があった。考え方はこうだ。

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