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ベニー・シングスという生き方

「アートというものは本来、内の世界の人間に、外の世界(自由)を知らしめる存在」とは、社会学者である宮台真司の言葉です。


ネットを通じて、好きなものをチェックし、好きなものだけを選び取る。そんな生活が当たり前になった今、なぜだか少しづつ退屈に、そしてどこか窮屈に感じてしまう…事ってありませんか?つまり自由になったはずなのに、いつのまにか不自由を感じていると。

そんな時、自分の知り得なかった新しい世界観を、聴き心地良く、さも当たり前に昔からそこにあったかの様に知らせてくれる。そんな魔法のポップスを届けてくれる存在がいるのです。

今回ご紹介するのはベニー・シングスです。



Benny Sings  “Not Enough”

ポップ・マエストロと呼ばれる彼は、広く知られるその名前とは裏腹に、オランダDox Recordsという小さなレーベルを拠点に活動しています。

彼の音楽を一言で言えば、「モダンなポップス」なのですが、その膨大な雑食性と、サウンドディレクターやトラックメイカーとして培ってきた技術、クオリティの高さは、まさに唯一無二の異彩を放っています。

ポイントは彼のポップセンスが、大衆性に合わせた結果ではなく、彼自身が本来持つ愛嬌の良さに基づいたものだということです。そしてオランダという決して音楽先進国ではない地で、自分のペースで醸造された人懐っこい楽曲たちに、それでも僕らは新しい風を感じることができます。



We'll Make It Right  “Hey Baby”

We'll make it rightは、同じくDox Recordsに所属する仲間たちとベニー・シングスとで構成されたバンドです。小さなコミュニティでありながら、閉塞感はなく、それぞれが自分の在り方と音楽とを結びつけて楽しんでいる様子が伝わってきます。


ベニー・シングスという人はとてもシャイであまり表舞台に立ちません。しかしポップ・ミュージックに誰よりも真摯に向かい合い、商業ラインとは切り離した所で、人に何を伝えるべきかを常に考えているように思えます。

何度時代が移り変わっても、「みんなと同じだから安心安全」が正解では無くなるタイミングは巡ってきます。そんな時、大切にしておきたいメッセージと外の世界を気さくに託けてくれる。ベニー・シングスはそんな本物のアーティストなのでしょう。


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