[愛人]サデークの中国人青年の家

前回の記事で愛人(ラマン)について話したが、今回は去年サデークにある中国人青年の住んでいた家に行ってきた話を書こうと思う。


去年10月のベトナム滞在時、サデークの中国人青年の家を訪問することは、前もって胸に決めていた。

ホテルがあるホーチミンのメインエリアからタクシーに乗って約30分ほどでBến Xe Miền Tây ターミナルへ。

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☝️私のインスタストーリーのスクショであるが、こんな感じでいろんな地域が書かれたチケットブースがずーっと並んでいるのだが、このベトナム語の文字に慣れていないツーリストには探すのが至難の技…😂

やっと「Sa Dec」の文字を見つけ、ブースに並ぶ。

サデーク行きのバスはありますか?と英語で言うと伝わったのだが、その後のやりとりは時刻を紙に書いてきたりと、全て筆談で進んだ😂

何とかチケットを入手したわけだが、スタッフは何も言わない。私が、乗り場はあっち?と指差して訊くと、👈There!とだけ言われた。😂

その方向に行くとバス乗り場に入っていく入り口?があるのだが、何箇所かある。チケットを見てもベトナム語で分からず、しかもスタッフの手書きの数字がどうも読めないので、入り口にいたガードマンにチケットを見せると、入り口の先を指さしたので、とりあえずそこから入る。

しかし入っていくと、いろんなバスがとまっていて乗り場もあちこちにあり、どこに自分の乗るバスや乗り場があるのか、全く見当もつかない。😂(一応チケットに自分のバスの車のナンバーは書いてあるのだが、とにかくごちゃごちゃしすぎて何が何だか分からないのだ)

バスと乗り場を探してぐるぐる歩き回っていたら、通路で座っていたおじさんが声をかけてきた。

ベトナム語だったので何を言ったのか全く分からないが、私のチケットを見るとだいぶ遠い方向を指差していたので、とりあえずそっちに行ってみることにした。

すると、行った先に私の乗るバス会社のバス乗り場をようやく見つけた😄(おじさん、ありがとう!!)

しかし、私のバスの時間がだいぶ先だからなのだが、電光掲示板を見ながら待っているのだが私のバスの情報が全く表示されない。

すると、今度はフランスパンを売るおじさんが話しかけてきた。(地方行きの長距離バス利用客に、乗車前にお菓子やパン、飲み物を売っている人たちがたくさんいたのだ)

最初はパンを売りつけにきたのだと思ったのだが笑、掌を出して"チケットを見せて"というジェスチャーをしてきた。

チケットを見せると今度は、何やら自分の腕時計を指差し、そしてバスの停まる場所を指差した。

おそらく、"君のバスはこの時間になったらここにくるよ" と伝えていたのだと思う。

言葉が通じなくてもそんなことは気にせず助けてくれたおじさんの優しさに、心から感動した。

今となってはThank you!!って言うだけじゃなくてお礼としてパンひとつでも買えばよかったな、とすこし思っている。

しかし、このターミナルは地方行きのバスがほとんどのようで、外国人ツーリストの利用者を見ることがほとんどなかった。そのため私のようなツーリストは誰が見ても分かってしまうし、目立つようだった😅

 バスに乗車するときにも、添乗員さんは座席はここだよ、こうやって上がるんだよ、と全てジェスチャーで伝えてくれた😂(2段ベッドタイプの寝台バスであった)

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水とウェットティッシュが貰えて、wifiも使えて、片道115000ドン、良いと思う。気に入った。

サデークまでの道のりは高速道路のような道を通って行くのだが、日本の高速ほどの速さではなかった。途中サービスエリアのような場所でトイレ休憩もあった。(添乗員のベトナム語のアナウンスが分からず、荷物を置いたままぞろぞろと出て行く他の客を見て理解した😅)

バスから見える風景は、ほとんど田んぼやジャングルといった感じ。

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なんと牛も見ることができた。

ホーチミンから約3時間30分で、ようやくサデークのバスターミナルに到着。

ターミナルを出たところで話しかけてきたバイタクのおじさんに、中国人青年の家の写真を見せたら、分かると言うので、乗せていってもらった。

さほど遠くないところに、その家はあった。

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だいぶ古さが目立つが、それでもなお、この通りにある他の建物とは明らかに違う、西洋建築の荘厳で豪華な家であった。

門を入って左手のブースでチケットを買い、家の中に入ってみる。

最初に目に飛び込んでくるのは、このびっくりするくらい豪華な廟。

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金の装飾が印象的だ。

建物の建築様式は西洋の文化を取り入れているのに、家の中に入れば中国の伝統がある。面白い

廟の上の額に書かれた、"中西共仰"は、中国の文化も西洋の文化も共にリスペクトする、といったような意味だろうか?

「北の愛人」の中には、中国人青年の父親が、この時代では英語やフランス語を勉強することが重要だと話していたという描写や、フランス語を話す青年という人物そのものにも、この言葉は重なる。

たしかにこの場所には、青年とその家族たちの人生があったのだ、そして今もなお愛人という作品やこの家によって、彼という人物とその人生は記憶されていくのだ、ということを実感した。

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映画のシーンの写真と、デュラスの写真。

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青年と家族の写真。

青年、優しそうに見える。そしてツーショット写真の奥様、華奢でとても可愛らしい。

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内装、家具、骨董品の一つ一つがとてもゴージャスで、中国の雰囲気を感じ取れる。

この家を訪問したのは、青年の人生について関心があったからだが、

訪問して実際に得られたことは、デュラスに関連したことや「愛人」に描写されている彼の要素よりむしろ、

彼や彼の家族が、仏領インドシナという(彼にとって)異文化が混在する地で、中国人としての伝統やアイデンティティをどのように維持・形成してきたのかという、生き様の一部であった。

(筆者は文化人類学を学んだので、植民地時代の移民の文化受容態度や過程、その地域の言語、宗教の多様性など、その辺非常に興味があり、この家を訪問後ももっともっと知りたいと思っている。この記事でも語りたいがこのくらいに留めておく。)


そして、家を出てバスターミナルに向かおうとしたときに気付いたのだが、

この家とこれが面している通りの様子が、とても不釣り合いなのである。

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青年が生きていた当時と今とでは周りの様子も変わっているかも知れないが、

家を通り過ぎるとその先にはこのようなアジアのローカル感のある、人々がひしめき合っている市場があった。

西洋風で荘厳な雰囲気の家と、青果も植物も動物も何でも売っているローカルな市場のギャップもまた面白い。

このギャップに、青年の富と少女の貧しさとのコントラストに通じるものを感じたのは、私が「愛人」に囚われすぎなだけだろうか。。。

バスターミナルのある方向がこの通りの先だったので、せっかくだからこの市場を通ってみたのだが、ただでさえ狭い通路なのに、すれ違うバイクが多すぎて、なかなかスムーズに進んでいけなかった😅

市場を抜けて橋を渡る。

橋から撮った集落の写真

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このごちゃごちゃした集落のある地域に、富豪の西洋風建築の屋敷があるとは普通なら想像しがたいだろう。😅

教会を見つけた。

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ピンク色が可愛い❣️

教会もなんというか、周りの風景がなくても、どことなく欧州ではなくてアジアだとわかる雰囲気があるような…


15分ほど歩いてバスターミナルに戻った。

帰りのバスに乗りたいのだが、サデークのバスターミナルはホーチミンとは違って、ごちゃごちゃと地名が並んだ長いチケットブースや、そこにごった返す客もいないし、バスも少ない。

ホーチミンに帰らなければならないのに、チケットブースらしき場所も全く見当たらず困っていると、運よく行きのバスの添乗員が近くにいるのを見つけた。

英語が通じるか分からなかったがそんなことも忘れて彼に必死で、どうやってサイゴンに帰ったらいいですか??サイゴンに行きたいんです…🥺と英語で伝えると、

なにやら腕時計を指差して(時刻を伝えたのかな?)、Ho chi minh?と訊き、私が頷くと、近くにあった建物に連れて行ってくれた。

そこはバス会社の窓口だった。そこの女性スタッフとのコミュニケーションも若干苦労したが、無事15分後に出るバスのチケットを購入できた。

こうして帰りのバスに乗り無事ホーチミンのターミナルに帰ることができた。

(後でバス会社のhpを見て判明したのだが、この私が乗った17時頃のホーチミン行きのバス、なんと終バスだった!あと30分くらい遅く戻っていたらと思うと…想像だけでパニックになりそう😰)


地方都市なので観光客もほぼおらず、現地の人と言葉でコミュニケーションをとることもなかなか難しく、タフな旅であったが、

それでもサデークに来て青年の家を訪問し、彼の人生を知ることができたのは、本当に感慨深いものであった。

そして、ベトナムの人々の優しさを受けて、自分も困っている人には彼らのようにたとえ言葉が通じなくても助けを差し伸べていきたい、と心から思った。

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このバスのチケットと青年の家のチケットは、いつまでも大切にとっておくつもりだ。

このチケットは、バケットリストの一つを達成した証であり、

困っていた私を助けてくれたベトナムの人々の優しさを思い出させてくれるものであり、

そして、今後も行きたい場所に旅に出るための勇気をくれる御守りでもある。


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