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「音楽を作る」ってなんだろう

音楽尽くしで刺激を受けた日に、いろんなことを考えたので忘れないうちに記録。

※この記事は、あくまでいちアマチュア管楽器奏者の考えです。
これまでの経験や、パートによって考え方は大きく変わってくると考えています。その場合はコメントなどで教えていただけると嬉しいです。

前提として、わたしの音楽歴を軽く。

ピアノをかじった小学時代、トランペットに出会った中学時代を経て、なんちゃって進学校で吹奏楽コンクールガチ勢のはしくれになる。
吹奏楽はやり切った、と感じていたので大学進学とともに上京し某大学オーケストラに入団。ガチオケだったけどなんとかやりきる。
大学卒業後はOBオーケストラには入らず2年ほどアマオケジプシー。その後知人に「オケ立ち上げるから乗らない?」と声をかけてもらった新進気鋭のアマオケに入団、細く長く続けるべく試行錯誤中。今に至る。
しいて言えばパワープレイヤー、でもチャイコフスキーをアシスタントなしで吹き切れるわけではない。
地獄耳だけど音程的な耳の良さは人並み、何となく頭を使って吹きたいけど、感覚で演奏しがち、音楽を風景で表現しがちなコテッコテの文系奏者。

「音楽を作る」って何?と考え始めたきっかけ

先日出演したブラスアンサンブルの演奏会です。
2回目の参加で、他の参加者は前回に引き続きだったり、今回初めましての人だったり。難曲揃いだったので、いろいろありつつも何とか全プログラムを終えることができました。が、不完全燃焼だったと感じています。

なぜだろう?と考えてみると、音を並べることに精一杯で、肝心の「アンサンブル」が二の次になっていたから、でした。
コミュニケーションをとろうとしても、相手にキャッチしてもらえなかったり、発信してくれているのに、それに応え切れなかったり……
普段のオーケストラでも、もう少しこうやりたい!を伝えきれない、察知できない、もどかしさが募っています。

そんなときに聴きに行ったのが、プロオケのような某アマオケ。
歴史は長いけど、わたしと同年代の、比較的若い奏者も一定数いるような団体です。
「音楽を作る」とはどんなことかを知っている、奏者ひとりひとりが自分の立場での「意思」を持っている、そんな風に感じたのです。

この差は何だろう?単なる演奏技術だけでこれほど差はつかないはず。じゃあ「音楽を作る」ってなんだ?
長くなったけど、これが始まりです。

「技術的にうまい」と「音楽的にうまい」の差

ここからようやく本題です。
なお、わたしは技術的には並、ハイトーンは並以下だと思っています。自分のことは差し置いてますがご容赦を。

音色がめちゃくちゃ綺麗、狙った音はハイトーンであろうときちんと当てる、どんな高速フレーズでも確実に演奏しきる……
これは(トランぺッターである)わたしの考える「技術的に秀でている」奏者の一例です。知り合いにもちらほらいて、その指回しの良さの10%でいいから分けてほしい、とか、どんな練習すればタンギング速くなるの、とかついつい羨望のまなざしを向けてしまいます。

ですが。テクニックと音楽性は全く別だと考えています。
「よい音楽」は必ずしもテクニックが求められるわけではないはずです。
極端にいうと、「くまんばちの飛行」は高速パッセージが続く曲で、テクニックがなければ成立しませんが、「カエルの歌」の輪唱を感動的な曲にしようとしたとき、必ずしも超絶技巧が必要というわけではない、ということです。(わかりやすいようでわかりづらい)

「音楽性」があるとはどんなことを指すのでしょうか。

1. 求められる音色を考えられる

ブラームスの交響曲と、チャイコフスキーの交響曲を同じように演奏すると鉄拳が飛んでくるだろうということは想像するに易いでしょう。
メロディかハーモニーか、だけでなく曲の中でどんな役割を持つ音なのか、を考えると音色は曲単位でなく、さらに小さいフレーズ毎で使い分ける必要があります。

2. どんな役割の音か考えられる

音色の項でもあげましたが、おおざっぱに分けてもメロディ/伴奏/メロディ以外の効果音の3つに分けることができます。これらがどのようなバランスで聞こえるべきかを考える必要があります。

3. 周りとの違いを察知し、修正できる

オーケストラやアンサンブルは当然1人で演奏するわけではありません。
となると、テンポや音程はほかの人に合わせるか、自分に合わせてもらうよう仕向けるようにする必要があります。
いずれの場合でも、主導権を持つ奏者を見つけ、「差」を修正しなければなりません。

続いて、「音楽性」を高めていくには、何を意識すべきでしょうか。

1. 楽譜に書いてあることを確実に読み込む

特にクラシック音楽において、楽譜は最も重要なツールです。
音符・休符はもちろん正確に演奏できるようになるべきですが、強弱や表現記号の違いを明確に認識する必要があります。
楽譜の記載に用いられる言語はイタリア語、フランス語、ドイツ語が主とされていて、頻繁に出てくる用語は自然と覚えるようになりますが、日本語でもそうであるように、複数の意味・表現を持つ単語もあります。新しい曲を取り上げる度に一通り調べてみるのが理想的です。(と言いつつできる時とできない時がありますよね!)

2. 曲全体の流れを理解する

誤解されたくないので先に言います。
音源をたくさん聴いて耳コピしろ、ということではありません。
音源は、楽譜を特定の解釈で表現したに過ぎないため、自分で楽譜を読み込むというステップは欠かせません。
ここでの「流れ」は、曲想の変化やメロディ/伴奏の役割の移り変わりなど、いわばその曲の「起承転結」です。
起から承、承から転へ、移り変わるときの「溜め」や加速は作る人々によって変わりますが、ここで変わる!と知っているのと知らないのとでは心構えが大きく変わります。

3. 自分の役割を理解する

流れを理解したら、自分の音はその中でどうすべきか?を考えます。
メロディであれば簡単ですが、そうでないことも多々あります。メロディの対旋律、合いの手なども演奏次第で曲のイメージが変わりますし、伴奏でも表打ちと裏打ちでは重心の置き方が変わります。
流れを止めずに音楽を作るために、どんな役回りが与えられているのか、どんな音を出すべきか。抽象的な問いですが、重要なポイントです。

4. 役割の枠からはみ出ない範囲で、どう演奏したいか考える

役割を理解したら、その中でフレーズをどう作るか考えます。
楽譜に書いてあるクレッシェンド・デクレッシェンド、音の上昇下降、他のパートとのバランス……それらを気にしながら、自分がどう演奏すれば100%の役割を果たせるかを考えます。

5. 4を他の奏者に察知してもらうべくアピールする・他の奏者がアピールしていないか注意深く観察する

ここまでたくさん頭を使いましたが、あと少しです。そしてここは実際に合奏やパート練習で音を出してやるべきことです。
これまで考えてきた楽譜に書かれていることや「流れ」にも気を配りつつ、他の奏者にどう演奏したいかアピールしましょう。音量や楽器によるモーション、アイコンタクトなど、方法は様々です。
そしてもちろん、他の奏者も同様に「どう演奏したいか」を考えているはずです。周囲の音や動きにも注意を払い、他の人に合わせるべきと思うところは合わせていきましょう。

5のキャッチボールを演奏者全体で繰り返すことで、徐々にやりたいことはまとまり、奏者だけでは合わせられない箇所は指揮にサポートしてもらう、そんな風にできるのが究極の理想だと思います。

以上、普段演奏するにあたり考えていることをふまえて「音楽を作る」「アンサンブルする」ということはどんなステップを踏んでいるのかを明文化してみました。感覚というか、無意識にやっているところもあり、何考えてるんだ・・・?と思い返すのが難しい箇所もありましたが、少なくともわたしはざっくりとこんな感じでやっています。

このほかにも、スコアを読んだりなんだり、やり込むべきことはいくらでも出てくるはずですが、それをやっても最終的には「周りが何をしているのか観察する」は欠かせないことだと思います。
他の人もそうなのか自信がないですが、聞きたい人をじーっと見ていると、何となくその人の音が飛びぬけて聞こえてくることがあります。
楽譜ばかり見ているとそれはできないことなので、できる限り覚えて演奏したいところです。

最後に、繰り返しになりますが、これは、いちアマオケゆるトランぺッター個人の考えにすぎません。
わたしの挙げた方法は合わない人、これじゃ足りないと思う人もいるだろうし、もっと良いやり方があるかもしれないし、人それぞれだと思います。
それでも、だれかの「音楽する」ことを考えるきっかけになればうれしいです。

本音を言えば、合奏やアンサンブルもいいけど、へたっぴなのでやりたいことを実現すべく、ひたすら基礎練習だけをやりたいですね!

おわり。

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