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小説 「つくね小隊、応答せよ、」

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第二次世界大戦末期。 東南アジアの、とある島。 米軍の猛攻により、日本軍は転戦(撤退)し続け、日本兵たちは、ちりじりに離散した。 そんな中出会った別々の部隊の若い日本兵の3人、…
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#連載長編小説

「つくね小隊、応答せよ、」(九)

天保といやあ、まあ今からだいたい100年くらい前だな。ばあさんが話してくれた話っていうの…

「つくね小隊、応答せよ、」(十)

「道雄、おい、道雄、大丈夫か?」 渡邉道雄はゆっくりと目を開ける。 目の前には、心配そう…

おめぇの胸ん中にも、灯りになるような思い出があんだろうが

大正2年。 正月の、大雪の夜。 酒に酔った父が息子の義照を蹴りながら言う。 正月から葬式…

「つくね小隊、応答せよ」(十一)

三人は、密林を早足で進む。 長い歩兵銃に銃剣を装着し、繁る枝葉を薙ぎ払う。 「敵さんは、…

「つくね小隊、応答せよ」(十二)

「聴いてくれ!俺は、大日本帝国陸軍 上等兵 渡邉道雄だ!その銃は、三八だろ?貴様が敵兵な…

「つくね小隊、応答せよ、」(十参)

3人は秋月の敬礼した右手を見て、息をのんだ。 その右手は、血まみれだった。 よく見ると、…

「つくね小隊、応答せよ、」(十七)

「渡邉、頼みがある」 秋月が、渡邉を睨み付けるようにして言う。 「なんだ」 「…殺して…くれないか」 渡邉は、秋月の腹部をちらりと見て、秋月の顔をしばらく見て、応えた。 「…ああ、わかった」 秋月は、渡邉に、「自分を殺してくれ」と要請し、渡邉はそれを許諾した。 清水と仲村は、ただ黙って地面を見つめる。 秋月の腹部からの血液が、土の上を生き物のように進んでくる。 やがて、仲村の革靴の靴底に触れそうになり、仲村はさりげなく、横にずれた。人の血を踏むのは、ものすご

「つくね小隊、応答せよ、」(十八)

ジャングルの暗闇の中、渡邉、清水、仲村の三人が、話しています。 焼きもぐらと、砂飯の夕食…