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小説 「つくね小隊、応答せよ、」

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第二次世界大戦末期。 東南アジアの、とある島。 米軍の猛攻により、日本軍は転戦(撤退)し続け、日本兵たちは、ちりじりに離散した。 そんな中出会った別々の部隊の若い日本兵の3人、…
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#連載

「つくね小隊、応答せよ、」(六)

光前寺は、信州駒ヶ根の山の麓の寺です。苔むす石垣と林の中の石畳。その長い道の先に、本堂が…

「つくね小隊、応答せよ、」(七)

夏の真夜中。 密林。 這って進む渡邉の耳には、誰かが小声で言い争って、そしてそれを誰かが…

「つくね小隊、応答せよ、」(八)

「久や、久、これ、久蔵、こっちよ」 「え、ここ人んちじゃないの?」 「うん、人様のお店じ…

「つくね小隊、応答せよ、」(九)

天保といやあ、まあ今からだいたい100年くらい前だな。ばあさんが話してくれた話っていうの…

「つくね小隊、応答せよ、」(十)

「道雄、おい、道雄、大丈夫か?」 渡邉道雄はゆっくりと目を開ける。 目の前には、心配そう…

おめぇの胸ん中にも、灯りになるような思い出があんだろうが

大正2年。 正月の、大雪の夜。 酒に酔った父が息子の義照を蹴りながら言う。 正月から葬式…

「つくね小隊、応答せよ」(十一)

三人は、密林を早足で進む。 長い歩兵銃に銃剣を装着し、繁る枝葉を薙ぎ払う。 「敵さんは、空から偵察、日本人がいたら船に位置知らせて、艦砲射撃で森ごと壊す。しばらくしたら戦果確認でまた偵察機が来るだろう。見つかればまた同じ目だ。とにかくここから離れるぞ」 艦砲射撃を受けた岩場で、渡邉が言い放つ。 渡邉のその一言には説得力があった。 清水も仲村も、なにも言わずに頷く。 ふたりとも、渡邉にぶん投げてもらわなければ、自分の何百倍の大きさの漬け物石に潰されていた運命だったか

「つくね小隊、応答せよ、」(十伍)

どうやら狒狒たちには、なにか策があるようです。 それぞれが石畳を振りかぶり、本殿の早太郎…

「つくね小隊、応答せよ、」(十六)

早太郎は、かろうじて狒狒の倒す木々を避けています。 怪我をした後ろ足を痛そうに引きずり、…

「つくね小隊、応答せよ、」(35)

刀は、作右衛門と同時に、作右衛門の動きを封じていた熊鷹も貫いています。小鷹は恐る恐る、刀…