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農業の機械化による農村社会の変化

八ヶ岳の農村社会ってこんな感じ



さて、今回は「農業の機械化による農村社会の変化」をテーマに話させていただこうと思います。

僕ら八ヶ岳ピースファームは、山梨県の北西エリアで農業をやっています。
あまり想像できていないかと思うんですけど、標高が800〜1000mくらいのところに住んでいます。関東の人なら高尾山とか聞いたことあると思うんですが、あの山の山頂が標高600mくらいなんですね。スカイツリーとかもそのくらいの高さです。

そんな、山よりも高いところで毎日暮らしているんです。
この土地は高山トレーニングしている人もいるので、空気が薄かったり、気圧も違います。
標高1000mくらいの気圧って、お母さんのお腹の中にいるときの圧力と同じになるそうですので、八ヶ岳にきて、心地よいと感じる人が多いのはそのせいかもしれません。

八ヶ岳にきたことない人は、ぜひ良いところなので1度は遊びに来ていただけたらと思います。その際は、僕がいるキブツ八ヶ岳というコミュニティが宿泊施設をやっているので、そこに泊まっていただけたら、楽しいと思います。

さて、そんなここは高山エリアの八ヶ岳ですが、先祖代々住んでいる人たちが、村、集落を形成しております。ずっと昔からこの土地に住んでいるんですね。そして大体、どこの集落も40件前後の家で形成されています。

僕は神奈川県で育ったので、こっちに移住した6年前にめちゃくちゃびっくりしたんですけど、田舎育ちの人には当たり前らしいですが、集落の人のほぼ苗字って一緒なんですね。

この地域だと、山田さん、浅川(あさかわ)さん、長田(おさだ)さんと言ったように、全員苗字同じなんです。
面白くないですか?都会に住んでいたらまずありえないじゃないですか?
このマンションの人全員佐藤です。みたいな。

だから小学校の出席番号とかもめっちゃ浅川めっちゃ前半多いみたいな感じだそうです。

もう1つ、面白い話があるんです。
僕の住んでいる集落は長田(おさだ)っていう苗字だけの集落なんです。

で、ちょっと想像して欲しいんですけど、自分が長田っていう苗字で集落全員が長田っていう場合、集落の人をどう呼びますか??

もちろん下の名前で呼ぶっていうことになると思うんです。

思うんですが、違うんです。

これ本当に面白いんですが、家の場所で呼ぶんです。

どういうことかというと、僕が住んでいる家って集落からほんのちょっとだけ離れていて、田んぼに囲まれて、その真ん中にあるんです。このタイプの家ってこの集落にはなくて、うちの固有の特徴なんです。

それが呼び方に採用されて、なんと「田中」って呼ばれるんです。

すごくないですか。長田なのに田中って呼ばれるんです。これ発音、音声で聞いている人はわかりますが、普通の田中のイントネーションが違います。田中さんじゃなくて、田中さん。

不思議な感覚ですねよ。

だから、田んぼの横にある家は横田さん、大きな木の下なら、木下さん。
みたいな感じで固有の名称で呼ばれる。それが昔から住んでいる集落だからこそある風習なんです。もちろん下の名前で呼ばれることもあると思いますけどね。

「結」(ゆい)という相互補助制度

それでですね、結構今ってテレワークとかが多くて、移住者が増えてきています。
なので、こういった集落に住む人も増えていると思います。そこで出てくるのがご近所さんづきあいです。これはなかなか難しくて、ひどいところは、本当にひどいって聞きます。いわゆる、いじめですよね。

悪口とか、家の前の畑荒らされるとか、ゴミ出させてくれないとか。
あるそうなんです。うちのところはもう移住者に慣れているので少ないと思いますが、移住者の少ない田舎に移住するとそういったことってあると思います。それは集落固有です。

それで、どうしてそんないじめが発生するのかっていう理由なんですけど、これって実は農業の機械化に関係があります。

田舎の集落って昔から先祖代々住んでいるっていうのはこれまで話してきた通りです。
つまり、今のおじいちゃんおばあちゃんが小さい頃からそこに住んでいるんです。
今のおじいちゃんたちって70〜90才が多い感じです。
なので生まれたのは1930〜40年代とかの人たちです。

なので、親とかは戦争に行って亡くしている方もかなりいらっしゃいます。
で、そういう時代をイメージしてもらって、集落、村を想像してみてください。当時、機械はないので、馬と牛で農作業を進めていました。もちろん車もないので、荷物を運んでもらったり、田んぼを耕したりしてます。

小さい子は小学校から帰ったら、玄関に置き手紙があって、どこどこの田んぼに来なさい、って書いてあったそうです。で、子供でもできるような手伝いをさせられていたそうです。そして村のみんなで農業をしていました。

自分の田んぼの田植えとかも、自分でやるんじゃなくて村のみんなでやります。
自分の田んぼ田植えが終わったら次はみんなでお隣さんちの田んぼに移って田植えします。これをずっと繰り返すんですね。そうやって村の田んぼを支えてきました。

余力がある村だと、隣の村のお手伝いにいきます。

これを「結」(ゆい)っていいます。

簡単にいうと、お互い助け合うってことです。
というか、それをしなかったらみんな共倒れしちゃう時代なんです。食うもんに困っていた時代ですから。戦争もしていましたし、納める分もありました。

そうやって集落単位で命を繋いできた。それが村社会なんですね。
なんかこうやって聞くと、最初に聞いてイメージしていた集落、村の形が暖かく見えてきますよね。

そして、戦争は終わり1960年頃になると、ついに農業は機械化が始まります。
これまで、馬や牛にやらせていた運搬、耕すのは機械でできるようになりました。
これって、めちゃくちゃ大発明で、村に変化をもたらしました。

その1番の変化とは間違いなく、労働力が少なくてすむようになったという点だと思います。
これは今の時代も一緒ですね。機械を導入することで、機械に働いてもらって、人間が動くことが減ります。

なので、これまでやっていた村のみんなで農作業する必要がなくなったんです。
そうなると、どうなると思いますか。

これは2つあります。

1つは、分業制ができるようになったということです。
どういうことかというと、機械がなかった時代は村のみんなで農作業をやる必要がありました。しかし、機械化した今、労働力は減ったので、手が余るようになったんです。そうしたら、別の仕事をし始めるようになりました。特に都会に出る人が多くなりました。
つまり、農作業やる人、出稼ぎに行く人、そういう感じに別れて行ったんですね。

で、もう少し細かくいうと、親父が農業やって、息子は出稼ぎに行くことが多いです。
そして、親父さんが農業できなくなったら、息子が村に帰ってきて農業を継ぐってって感じです。そんで、孫はまた街で働くという感じです。そんなループです。

つまり、先祖代々の農地は守っていくというのが、前提にあります。
ただ、最近では、孫が農業なんかやりたくないって言って流ので、その先祖代々の土地も手放して他の人にやってもらうことが多くなってきています。つまり、集落内の余力のある人にやってもらうってことですね。

それでも村の中でやってくれる人が減ってきているので、耕作放棄地になったらり、僕ら八ヶ岳ピースファームのような外部の人にお願いされるようになっています。

そして、機械化による村社会の変化の2つめは、村の中で喧嘩が増えたことです。

え?って感じじゃないですか。なんで機械化したら、喧嘩増えるの?って思いませんか。

実はこれ、機械化前の「結」で成り立つ助け合いの時代を考えて欲しいんですけど、当時、本当に生きていくのがギリギリでした。食べるものもない、なくはないけど、来年同じようにあるかはわからない。農作物は天候次第ですから。

そんな助け合いをしなきゃいけない時代に、自分1人だけ働かないなんてできません。
「働かざるもの、食うべからず」この本質はここにあります。
つまり、村のみんなと協力しないと生きていけないんです。やらないと、村八分にあって、追い出されちゃいます。

そんな感じだったんですが、この機械化によってもたらされたのは、

「助け合わなくても、生きていける」

ということになったんです。そうなると、全員が協力する必要性がなくなります。
村の意見よりも自分の意見を通す人が出てきました。そして、その結果、村に喧嘩がめちゃくちゃ増えたそうです。

農村社会の歴史は変化し続けている

2023年の今、集落の人のお話を聞くと「昔は喧嘩なんかなくて、み〜んな仲よかったんだけどなぁ」そんな話を聞きました。

そしてその延長というか、同じ構造で、その名残の流れのせいで、村の意見や風習に変な人、ここでいう変な人は移住者ですね、が入ってくると喧嘩、いじめにあうのはそんなところに理由があります。

というわけで、「農業の機械化による農村社会の変化」というテーマで話させていただきました。これから移住する人、すでにしている人は、集落の人に信頼してもらえることが1番大切だと思います。誰かの参考になったら嬉しいです。

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