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ドキュメンタリー映画。「行き止まりの世界に生まれて」

去年、1年間の中で私が観た映画の中でも
とても印象深く残った作品の
「行き止まりの世界に生まれて」。
ビン・リュー監督の初監督作品です。
少年たちの成長の記録12年間分は
93分間でした。

93分間。
手振れで揺れ動くカメラの中には
少年たちや、大人たちの様々な表情が映し出されていました。

今回は、この映画とここから私が考える
映画10選のお話を書かせていただきます。

「全米で最も惨めな国」
イリノイ州ロックフォードで必死にもがく若者をドキュメンタリーで描いたこの作品。
スケートボードに熱中する少年たちには
どうしようもなく大きく、残酷な現実がいつでもすぐ隣にあり作品を観終わったあと、スケートボードをやっていたあの時の3人の顔が忘れられませんでした。

そしてこの映画が映し出す
「国の情景とカルチャー」に
今回、焦点を当てて考えました。

作品を観るにあたり、その国の街並みや家、景色、文化が色濃く映っているほど
映画の中の現実がよく伝わり、その中にいる
人々はとても自然でより生きているように感じます。

「行き止まりの世界に生まれて」の中では
ロックフォードの街で貧しく暴力的な家庭の情景や、スケートボードというカルチャー。そしてビン監督のアジア系アメリカ人がほとんどいない国で育ったという疎外感と実際にアメリカでアジア人男性として育つという事が映像に映し出されています。

情景がよく伝わると感じる作品として 
キム・ボラ監督 「はちどり」や、
ソフィア・コッポラ監督
「ロスト・イン・トランスレーション」
レオス・カラックス監督
「ポンヌフの恋人」

その国の街や色、情景が映し出されていて映画の匂いをとても感じます。

その国に生まれ、何をして生きているか。
映画に出てくる人々はどんな景色を見ているのかを映し出すことはとても重要だと思います。そしてそこには何かしらのカルチャーがあります。

行き止まりの世界に生まれては
スケートボードというカルチャーでした。
「選ばれた家族の様な感覚」とビン監督のインタビューで書いていたことが印象的で
熱中したものが同じでも性差別的や仲間意識の文化が強いこと、同じ街出身だからということでの仲間外れなど、しかしその中でもし仲間になれたら本当に強いものになりお互いのためなら何でもする。

「情景とカルチャー」

日本映画
福永壮志監督 「アイヌモシリ」
インド映画
ゾーヤ・アクタル監督 「ガリーボーイ」
中国映画
フォン・シャオガン監督「芳華 Youth」
はそれぞれの国のカルチャーと情景がわかりやすく鮮明に描かれている作品に感じます。

また、戦争映画になりますが、スティーヴン・スピルバーグの「太陽の帝国」などは
日中戦争時のイギリス人少年の目から映る日本と戦争時の飢えと病気、景色、それぞれの文化が強く描かれています。原作者のJ・Gバラードの実体験を元に書いたというこの作品。
他にも
ヴィットリオ・デ・シーカ監督
「自転車泥棒」
寺山修司監督
「書を捨てよ町を出よう」
ジョー・タルボット監督
「ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ」など。
色濃く映画というものを通してその人々の国の文化やそこでの生活が映し出されていてどこか通ずるものを感じます。
自転車泥棒などは第二次世界大戦後のイタリア撮影にてブルーノリッチ役を現地で見つけた子供で撮影し、だからこそそこに住んでいる匂いがより伝わりました。

「最後に行き止まりの世界に生まれてを通して」

特別感動する話を作らなくても、
日常をかき集めるだけでこんなにも特別な
映像になりそれをきちんと見ていられているかが自分の中では大切な事に思います。

生活している場所も
受けてきた教育も文化も違う人々が未来に
見出す光がこんなにも美しいのかと思い
私は日本で生まれ育ちましたが、自分が生まれ育った場所で自分が見てきた景色と触れた文化に視野を向けることの重要性を感じました。

公開された時に何気なくとったこの映画のパンフレットは今でも私の部屋の壁に貼り続けていて、観てきたドキュメンタリー映画の中でも特別な作品の一つです。


小林莉沙

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