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「絶対にPMになりたい未経験者 VS 絶対にPM経験者が欲しい採用企業」の溝を埋めたい

皆さんこんにちは。クライス&カンパニーの松永です。
すっかりリモートワークに慣れてしまっているのですが、先日、久しぶりの出勤がありまして。
朝、中央線に揺られながら何の気なしにつぶやいたtweetがこちらです。

私ごときの弱小アカウントに400ものいいね、50ものRTが!
やったぜ!過去最高の反響に、私は喜びに震えました。

我々はPMのプロではないですが、PM転職のプロです。この立場だからこそ、書けるものがあるはず!
気合いが入りすぎて長くなってしまいましたが…優しい目でお付き合い下さい。

PM転職市場の現状

まず、私の目から見たPM転職市場の現状をお伝えしたいと思います。
先述のつぶやきの通りで、「PMになりたい未経験者」が市場に溢れ、一方で「経験者が欲しい企業」ばかりになっているというのが概要です。

もう少し詳しくお話しますと、弊社には候補者と企業から多くのご相談が寄せられています。それぞれの現状をお伝えします。

候補者側の現状

候補者は昨今の転職サイトからのスカウトや求人一覧を見て、PMという仕事があることを知ります。中身を見ると、すごく業務範囲は広そうではあるものの、自分の経験が活かせるところもありそうです。
いや、経験が活かせるだけでなく、まだ経験していない業務もスコープに入っており、今のままではできない成長も出来そう。
しかも「プロダクトマネージャー」で転職サイトを検索すると、膨大な量の募集が出て来るし、今後の需要もありそう。
これは良い転職になるのではないか。そんな風に思って我々に相談に来てくださいます。

企業側の現状

一方、多くの企業で、事業におけるPMの仕事の重要性がますます増しています。プロダクト組織のミッションやかかる期待がますます大きなものとなり、チームに足りないものや欠けているパーツが見え始めています。
そんな時は組織・チームの課題として、「こんな人がいてほしい」という理想像が明確になりますが、なかなか転職市場にその要件を満たしている人がいません。
どうしたらそういう素敵PMに会えるのか、どうしたらうちに来てくれるのか。そういった切実な相談が弊社に寄せられます。

どうでしょう。ざっとお話しただけでも、全然違う方向を向いているのが分かりますよね…

※ちなみに、上記に当てはまらない「PM経験のある候補者」と「未経験から育てる前提で採用している企業」はほぼ苦労なく、良い出会いがいくつも生まれています。

この大きな溝を埋めるためには、どうすればい良いのか。エージェントの立場で感じていることや、解決策を考えてみました。

溝の埋め方:候補者編

PMになりたい皆さんに、いくつかお伝えしたいことがあります。
まとめると、「PMになるのは簡単ではないので、めっちゃ努力してほしい!」です。

PMになりたい方の中には、PMという非常に奥深い仕事への理解が浅いまま、「憧れ」の気持ち先行でPMになりたいと思っている方、実は結構いらっしゃいます。PM向けの転職の準備をせず、軽い気持ちで受けて玉砕してしまう。そんな勿体ないケースも散見されます。

もっともっとPMについて調べて、勉強して、よく考えてからPMを目指すことが、未経験からのPM転職成功への近道になると思います。

最近はわざわざ中途採用でPM未経験者を採用するのではなく、「プロダクトに知識があり、かつ社内メンバーとの関係も出来ている他部署の社員を異動でPMにする」という企業も増えています。
これは合理的ですし、企業にとってリスクの少ない、良い方法です。

企業側には社内メンバーの異動という方法があるにもかかわらず、リスクを取って中途採用で未経験から採用する、その判断を勝ち取らなければならないのです。当然のように、努力が必要になってきてしまうのです。

その1:PMについて、しっかり勉強するだけでも有利に!

PMは恐らく未経験の皆さんが思っているような、キラキラした仕事ばかりではないんじゃないかな、と思っています。(PMの皆さん、すみません笑)

「プロダクトの戦略立案」「プロダクトビジョンの策定」とJDには必ず書いてありますが、それは実は業務のほんの一部だと聞きます。
日々発生する細かな課題の優先順位付けや開発のプロジェクトマネジメントで、リソースをかなり持っていかれると思った方が良いかもしれません。

”たくさんの利害関係者をまとめながら、責任者としてプロダクトを成功に導く仕事”。PMの皆さんのお話を聞いてみると、確かに仕事の醍醐味はそこにあると思います。
ただ、利害関係者はそれぞれに思惑があり、当然ながらそれぞれにとって正しいことを主張します。社内でみんなから尊敬されているスーパーエンジニアがPMの方針に疑問を抱え、なかなか協力を得られないことがあるかもしれません。社外のパートナー企業に頼っている部分がある場合は、手の届かないところで思わぬトラブルが起きることもあるかもしれません。
それでもプロダクトの成功の責任はPMにあるとされてしまうのです。うまく行ったらチームメンバーのおかげ、失敗すればPMの責任、と言われたりもします。

冗談交じりに「ドMじゃないとできないよね、PMは」と笑って話す現役PMも沢山います。

「本当にPMがやりたいですか?それはなぜですか?」
こんな質問が面接でも飛んでくるかもしれません。ただ、企業側としてはそのくらいの覚悟を持ってきてほしいということなのだと思います。

最低限、この問いには答えられる志望動機はある状態で「PMになりたい」と言い切れるかどうか。この状態になるだけでも、他の未経験候補者よりも一歩リードできるかもしれません。

本当にPMについて学ぶのであれば、教材となる記事や本、講座などは沢山あります。幾つか例を載せておきますね。以下はほんの一部です!

その2.社内異動、社内転職を視野に入れましょう

PMへの理解が高まったら、自社内でプロダクトマネージャーへのキャリアパスを模索するのがまず第一歩としては有効です。
未経験者から、自社で経験者になっていくという形での溝の埋め方です。

自社の事業やプロダクトへの理解があり、かつ、PMとして関わる他部署の関係者とも顔見知り以上の関係からスタートできます。未経験PMとしてこんなアドバンテージはありません。

社内にプロダクトマネージャーという仕事がないという場合もありますよね。その場合、例えばサービス企画のような、業務の持つ要素がPMに近い職種はないでしょうか。
「HowだけでなくWhy/Whatから関われる」「ユーザーへの価値提供を中心に考える」「他部署かつ多職種とのかかわりの中で物事を前に進めて行く」
この辺りの要素がある仕事が社内にあれば、手を挙げてみるのはきっと前進になります。

その3.受ける会社についてもっと研究しましょう

社内異動がどうしても難しそうな場合は、転職でPMを目指していくことになるでしょう。
でも「何となく、良さそうな会社だから受ける」。これは本当に、絶対やめましょう。PMの経験がないのだから、企業には素養をビシビシ感じてもらわなければなりません。もっと言えば、「あれ、この人未経験だけど入社してくれたら結構良いかも!」と思ってもらえなければ受からないのです。

では、どうすれば良いのか。ポイントは3つです。
1:ユーザーになって使い倒す。
ユーザーになりにくいものであれば、会社説明資料を読んだりプロダクトの資料の取り寄せをしたりとできるだけの情報収集をしていきましょう。(準備完了度30%)

2:もし自分がこの会社のPMだったら何をするか、を考え抜く。
PMはプロダクトに対して課題を見つけるのも大きな仕事です。中の人ではないけれど、限られた情報から仮説を立てる、これもPMの大事な素養です。仮説を立てたら、ユーザーに対してより価値発揮するためにはどうすれば良いかを考え抜きます。(準備完了度70%)

3:考えたことを書類にまとめてみる。
みんなが「それ、いいね!」「早速やってみたい!」そう思える、考え抜いた仮説やアイデアを書類に落とし込んで、チームの共感を得る。これをPMはかなり頻度高くやっています。大変ですがシミュレーションを兼ねて、やってみましょう。(準備完了度100%)

未経験からの転職を目指すにあたっては、ここまでやっても、準備が整っただけです。PMになれるかどうかはこの後の選考次第となってしまいます。
…心折れそうですよね。

大変だけど、成果が必ず出るとは限らないけど、しっかり準備をした分だけ報われる可能性も上がります。本気度高くPMを目指す方であれば、未経験でも我々がしっかりサポートします!

覚悟をもって、未経験からプロダクトマネージャーになりたい皆さんは是非こちらからご登録をお願いします!

溝の埋め方:企業編

企業側の採用課題を解決するには、以下3つの方法がありそうです。
1.即戦力で動ける方を何とか採用する
2.他部署の有望なメンバーを社内ヘッドハントする
3.経験が浅くてもキャッチアップできそうな方を採用する

企業側の皆さんが知りたいのは1.だと分かっています。2.もとても有効です。でも、それだと今回のテーマ、「溝を埋める」ことにならないと思うのです。
1.についてはクライスに打ち合わせの依頼をいただければガッチリご相談に乗ります。2.もきっと積極的に検討されることでしょう。
ここでは3.についてお話させてください。

この溝を埋められるかどうかは採用する側にかかっている

今は候補者が企業を選ぶ時代、などと言われています。
しかしPMのように新しい職種の場合、この職種が増えていくかどうかは企業側がどれだけ寛容に裾野を広げていけるかにかかっているのが実情です。

このままだと、日本にはなかなかPMが増えていきません。プロダクト人材が不足したまま、「良い人が来ないなあ」と言いながら、素敵な会社の成長が鈍化する。あまりにも勿体ないと思うのです。

もちろん、闇雲に未経験者を検討して欲しいなどとは申しません。
「今はPMではないけど出来そうな人」は世の中にたくさんいて、その方々を丁寧に見極めることでうまくいくこともあるんじゃないかと思うのです。
可能性として見ても良いのでは、と思われるポイントを挙げます。

可能性を見るべきポイントその1:自社プロダクトを愛してくれそうか

これは最初に気にすべき点ですし、もしかすると最後、内定を出すかどうかの決め手にもなる点かもしれません。
プロダクトを愛していないPMが、まして未経験から活躍するイメージは全く持てませんよね。書類上でも面接でも、これが感じられない候補者を無理に検討する必要はないと思います。
逆にこれを書類選考段階からビシビシに感じさせてくれる候補者がいたら、是非次のポイントをチェックしてみてください。

可能性を見るべきポイントその2:経験を因数分解したときに、PMに近い仕事をしているか

例えば
 ・サービス企画として市場調査、ユーザーへのヒアリングを行っていた。
 ・スクラム開発のエンジニア経験がある
 ・人間中心設計を学び、UXデザイナーとして働いている
 ・自分の職種の担当範囲を乗り越えて、隣の部署の仕事まで染み出しながらプロジェクトを前に進めている
などなど。これらの要素が一つあれば検討の余地はあると思いますし、複数あれば是非、面接で話を聞いてみるべきでしょう。

では、実際に未経験者採用をしている企業がどのように採用を成功させているのか。社名は伏せながらになりますが、いくつか例を紹介します。

未経験者採用をしている企業の事例その1:
待っていてもPMは採用できない、と割り切って育成

実は最近、一番増えているのがこのパターンです。
少しずつPM組織が出来てきた。任せられる一人前のPMが何名かいる。でも、プロダクトを数段レベルアップさせるためにはもう少しPMが欲しい。
そんなフェーズにある中で、未経験者を採用する企業/しない企業が思い切り分かれています。育成するか、即戦力の強いメンバーを加えるか。
割り切って育成をしている企業はどんなことをしているかというと、これは様々です。

ある企業ではCPOクラスが事業立ち上げのスペシャリストでもあり、贅沢にもCPOと一緒に事業の立ち上げを行うところからスタートします。そして数か月伴走し、ある程度育ったところでCPOはまた新しい事業の立ち上げ、もしくは既存の立て直しに着手するのです。またそのタイミングで入社者がいれば伴走していきます。この会社ではPM同士の「今週の学びを共有するMTG」が毎週行われており、そこでもキャッチアップする仕組みが出来ています。

またある企業ではPM未経験者に「虎の巻」と名付けられた参考図書100冊ほどが提示され、通常業務とあわせて期間内にそれをすべて読むという課題が課せられます。高速でインプットし、すぐに業務でアウトプットするというサイクルを強制的に作ることで、立ち上がりのスピードを上げ、PMの足腰ともいえる学び続ける力を養っています。

未経験者採用をしている企業の事例その2:
切り出せる業務を任せるところから始めている

言うまでもないことですが、プロダクトマネージャーの仕事は多岐にわたります。その中で、本当に自社の一人前のPMにしかできない仕事はどのくらいでしょうか。また、PMは本来時間をかけたい業務にリソースを割けているでしょうか。
一例を挙げると、BtoBのバーティカルSaaSでエンタープライズ企業への導入が決まった後、導入にあたってのプロジェクトマネジメントのフェーズはかなりリソースが割かれます。この辺りをITコンサルやSIerで大規模なプロジェクトマネジメントを経験してきたPjMに少し任せる。そんな方法で「プロダクトマネージャー候補」を採用している企業があります。
在籍しているPMのリソースは適切に割けているか、という問いからスタートし、切り出したい業務があった場合は、未経験者にチャンスを与えるチャンス、かもしれません。

未経験者採用をしている企業の事例その3:
その会社で活躍する人の”素養”を言語化している

書類で「PM経験があるかどうか」だけで判断せずに、できるだけ面接で判断しようとしている会社についてもお伝えします。
前提として、応募者全てに会うリソースはどうしても捻出できないので、まずは書類選考の段階で、候補者の経験やその方の経歴から見える得意そうなこと、この辺りは見て判断しています。”可能性として見るべきポイントその2”でお伝えした内容ですね。

面接の段階でこういった企業はどんなことを、どんな観点で見ているのか。経験以上に見ているのは、その候補者が自社で活躍している人に近い”素養”を持っているかです。外資系企業でこの採用をしている企業もあります。
例えば、「当事者意識は高いか」「巻き込み力があるか」「コミットメントが強いか」「常に顧客志向か」「深く、しつこく考え抜けるか」などなど。

面接では、過去の経験を聞きながらその時々の判断の軸を聞いていきます。もちろん業務上での話がメインですが、時にはなぜその大学を選んだの?というところから候補者の人物面を掘り下げていくこともあります。
例えば、「最も成功した仕事とその要因は?」という質問から始まり、それを深く深く掘り下げていきます。
「成功に至るまでに、判断に迷ったことは?」「なぜその判断をしたのか?何を根拠に決定したのか?」「他に考えた選択肢はなかったか?」など。
そこで出てくるエピソードから、自社の求めているコンピテンシーを持つ人材か、活躍している在籍社員に似た素養があるか、を判断しています。
もちろん、”自社で活躍する人材とは”を言語化する必要があり、それは難しい作業だとは思うのですが、試してみる価値はありそうです。

いかがでしょうか。これらの事例を通して、少しでも「自社でもできるかも…」という気持ちが沸き起こってきてくださればとても嬉しいです。

「未経験でも、良い人だったらPM採用検討するよ!一緒にプロダクト人材を増やしていこう!」と言っていただける企業の方は以下から是非お打ち合わせのお申し込みを!


最後に

長文にお付き合いをいただき、ありがとうございました。

最後に、書くかどうか迷ったことがあります。でもとても大事なことだと思うので、書きます。
この市場におけるエージェントの在り方について。

とにかく候補者の希望通りの提案をして、沢山書類選考に送る。これ、今のPMの市場では最も忌避すべきことだと思っています。

「クオリティの低いアセスメントや推薦精度で大量に未経験者を紹介する」これは企業も候補者も疲弊し、閉鎖的になっていくだけです
正直、こういった質の悪い紹介がPMの転職市場の広がりを、ひいては日本のプロダクト人材の健全な増加を妨げている部分があると思っています。

私の仕事は質が高いです、と言いたいのではもちろんありません。
正直、かなり自戒も込めて書いています。

弊社の以下のnoteは、PM採用をしている企業の方向けに書いた内容ですが、同業のエージェントの皆さんにも是非読んで欲しいです。
弊社がどんな観点で企業と打ち合わせをしているのか、何を確認し、どう解像度を挙げているのか、比較的わかりやすくまとめたつもりです。
PMの紹介の際、少しでも参考になれば嬉しいです。

この職種と市場を、大事にして欲しいです!一緒に良い仕事しましょう。

色々書きましたが、つまりは
「本気度が高く、勉強もしており、自分の経験をどう活かし、足りない部分をキャッチップする意欲もある、めっちゃ頑張る候補者」
「意欲と可能性のありそうな候補者に対して丁寧に可能性を探り、任せられるところを切り出すなどしながら未経験者にチャンスを与えてみようかなと思って下さる企業」
「PMへの理解を深め、今のこの市場だからこそ丁寧なマッチングと紹介をする人材紹介会社」
この3者が本気で取り組めばきっと溝は埋まっていく
と信じています。
※書いてみると当たり前ですね…

夜テンション上がりまくって書いた内容を朝見て恥ずかしくなって慌てて消して、の繰り返し。でも、時間をかけて書いた分、伝えたいことはしっかり込められたような気がします。
ではでは、ありがとうございました。

クライス&カンパニー 松永拓也

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