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心のアンチスティグマキャンペーン・それから拡張していくもの

心のバリアフリー宣言(厚生労働省)


アンチスティグマとは

 まず、スティグマについて説明するとここでは社会的に負のイメージを着させられる現象をいう。主に偏見や差別、いじめ、レッテル貼り、ネガキャンなどによってもたらされることが多い。
 正確には社会的スティグマと「社会的」がつくが、「社会的」という言葉を省略して単にスティグマという説明がなされることが多い。
 アンチスティグマというのだから、スティグマに反対する運動ということになる。

病気・障害:多くは心の問題に関するアンチスティグマ

 病気や障害に関するアンチスティグマは、多くは精神疾患に対するものが挙げられるしその情報を目にすると思う。

 私は、重度広汎性発達障害を診断され、それに付随する心の問題を抱えているため、その当事者と医療従事者とでネットワークとコネクトをとってアンチスティグマキャンペーンに参加している。
 心の不調やそれに関わる問題はOECDでは下の欧文サイトにあたるSee Meキャンペーンを取り上げていた。
 心の問題は誰もが身近に抱えているものであるという情報発信で、健康ニーズの共有と心の問題の解決策啓発を行なったりしている。

(See Meキャンペーン:イギリス英語)

日本での問題提起:マスコミ報道による当事者いじめ

 2001年、心の問題に悩む人たちに衝撃的な出来事がおこった。附属池田小事件という凶悪事件の報道の仕方により、かつてあった精神障害者当事者で作る団体(全家連)の調査報告から、このような事実が伝えられた。(一部引用)

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つまり、スティグマ報道により自分から社会と交わる自信を失わせただけでなく、報道で自殺に追い込まれた:人を殺してしまったことに相当するとも言える状態や、社会的隔離を余儀なくされたりしたという事実が明るみになったということである。
 当事件の被害者遺族や、被害者の学校関係者の中にはこの事件により心的外傷後ストレス障害という精神的不安症状が断続的に起こる症状に悩まされた人たちもいたのだが、それにもかかわらずの出来事である。

 他にも、2003年の長崎男児誘拐殺人事件にはアスペルガー症候群(広汎性発達障害〜自閉スペクトラム症の一形態)であることが犯罪を犯すことと直接関係あるかのような報道をしたことにより、一般社団法人日本自閉症協会が差別とネガティヴなイメージを助長させたとして抗議の意を示したという一連の流れもあった。自分自身も「アスペルガー型」と診断を受けているため非常に身近な問題であり、まだ「発達障害の疑い」状態であった当時も、少年犯罪でも殺人を犯したその罪を許せずとも、「アスペルガー」が同じ立場でないかと感じていて心の不調をきたしたり親子同伴で児童相談所への相談とカウンセリングを受けにいかなければいけない期間があったなど生活への影響はありました。

 こんなネガティヴキャンペーンを報道側がする事をやめて、社会と心の問題との関わりを深めるという共生思考のスコットランドのSee Meキャンペーンは成果と実績として精神障害に対する恐怖や偏見をなくしていくことに成功したことを報告している。そして、厚生労働省が心の問題を身近に知ってもらう働きかけも行うようになった。

参考・読破図書


人種や文化・趣味/属性に関するアンチスティグマ

 アンチスティグマは、病気や障害に対してのものからさらに拡張することができる。これは、いじめ防止や社会参加での誹謗中傷防止にも一役担っている運動でもある。

 スティグマをおす集団は、やはりメディアやマスコミであることが多い。特に重大事件など社会的に関心をひきがちな事件の報道を利用することが多い。そのスティグマはヘイトスピーチと同じ構造でもあったりする。

 一例として、加害者が「(人種)の〜」「(趣味、嗜好)好きのー」「(文化や性自認・表現など)に属している〜」「職業が〇〇の〜」と加害者の人格や趣味などを強調した報道がある。この手法は特定の属性を危険視させるというスティグマを押す行為であり、なおかついじめ・差別助長につながるので、人権侵害案件になりうるといっていい。NHKのように以前その過ちがあったときにスティグマをおした罪を認めちゃんと謝罪の意を伝え、和解することもあり、これが一番の対応であると思う。たとえば、黒人差別を取り扱った問題で過去の事件の事例と、解説する「ノンフィクションをもとにしたアニメーション」で人種を強調したがためにネイティヴアメリカンから非難の声が上がったのを受けて謝罪の意を示している。

 非難の声をあげてくれたネイティヴアメリカンの人たちのその「非難の声」こそアンチスティグマ活動の一種とも言える。

 最近(2021年9月)では、バーチャルリアリティやアニメにスティグマをおすAERA. dot記事の一件もあり、のちにタイトルを差し替える形と謝罪文の掲載を載せた一連の流れもあった。その流れの中ではNPO法人バーチャルライツによる緊急声明という形でアンチスティグマキャンペーンを行い、それが人格否定や差別煽動の解消に一役を担ったということになる。

 このような前例はたくさんあるが、特定の文化や趣味・属性によるスティグマ推しはアニメやサブカル愛好家の被害を多く見てきたように感じる。

 しかも、バーチャルリアリティに関しては心の問題を解決する手段で特に「解離性同一性障害」という人格が複数あるような感覚とそれに伴う心の障害の当事者、対人恐怖症や社会不安症などの人前に立つことにより心の障害を伴ってくる当事者の症状緩和や解決の選択肢としても注目されているものであるので、精神障害に対するアンチスティグマとも繋がっている。

 このように、社会人として健康で生きやすい生活を送る目的や社会との包容のためによるアンチスティグマの重要性は本当に知られていくべきである。

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