「哀しみの女」と『エゴン・シーレ展』
東京都美術館で開催中の『エゴン・シーレ展』へ。
あらゆる画家の中で最も好きな画家は誰かと問われたら、 迷わず 「エゴン・シーレ」と。
そう答えるほどに敬愛してやまない画家、エゴン・シーレの展覧会がようやく始まりました。
そもそも、私がエゴン・シーレを知ったのは大学生の時。
本屋さんでたまたま手に取ったのが五木寛之さんの「哀しみの女」という小説でした。
この小説の表紙にはエゴン・シーレの「哀しみの女」の作品が描かれているのですが、
その表紙に描かれた大きな憂いのある瞳をした女性(エゴン・シーレの愛人であるヴァリー)が私に何かを訴えかけているようでドキドキして目が離せなくなってしまいました。
1枚の絵から心の声が聞こえてきたような感覚に陥った、そんな強烈な絵でした。
それがエゴン・シーレとの出会いです。
その表紙に強く惹かれ、小説を買って読んだのは言うまでもありませんが、そのあらすじを要約するとこういう内容です。
実際に「哀しみの女」のモデルとなったヴァリーは、もともとは「クリムト」のモデル(愛人)だった人。
クリムトは、そのヴァリーをエゴン・シーレに譲り渡したというのは有名な話です。
それからのヴァリーはシーレのどんな淫らなポーズの要求にも嫌がらず、シーレに献身的に尽くし、モデル兼愛人として4年間一緒に過ごしたそう。
が、悲しいことに、ある時から、シーレは向かいに住んでいたエディット(のちにシーレの妻となった女性)に心惹かれていき、ヴァリーへの気持ちが薄れていくのです。
そして、エディットに心を奪われたシーレに気づいたヴァリーは潔く身を引いたというのがリアルなお話(泣)
恋人が、他の女性に想いを寄せ、自分への興味が薄れていく。ヴァリーの気持ちを想像するだけで悲しくなります。
その、私がエゴン・シーを知るきっかけとなった「哀しみの女」の作品にようやく会うことができました。
哀しみをたたえながら、泣いてはいないけど、深い哀しみが絵から伝わってくる、なんともいえない強烈な絵。
20年以上前からずっとずっと会いたかった絵。なのでこの絵の前からはなかなか離れることができませんでしたが、ゆっくり観ることができてとても良かったです。
その他にもエゴン・シーレの魅力ある作品がたくさん。
エゴン・シーレと言えば、「性」と「死」をテーマに描かれた作品が多く、圧倒的な表現力と世界観が魅力の画家。
はっきりした「線」の強さも特徴的ですが、その色遣いも独特です。
自画像や肖像画に描かれている、青白く血管が浮き出るような人体に赤、青、緑などの様々な色のシミや斑点。
複雑に重ね塗りした色、そしてシーレの描くゴツゴツした印象的な「手」。
何もかもが強烈で心に残ります。
28歳という若さで亡くなってしまったシーレですが、もっと生きていたらどんなに魅力的な作品を残していたんだろうと想像すると、若くして亡くなってしまったことが残念でなりません。
ここまで、読んで頂いて本当にありがとうございました♡
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