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あまりに壮大すぎる宇宙と、あまりにちっぽけすぎる私の話

先日、最悪なことに休日出勤になってしまった日があった。

「くそったれ!月から金まで働いて、まだ働くんか!」「すみませんね〜って、そんなんで済まされると思ってんのか!?」

そんな心の叫びを押し殺し、お客さんの前では笑顔120%でいつも以上に元気に振る舞いつづけた。

はあ、私はなんて偉いんだろう。そんなにお利口な私には、ぜひともご褒美をあげなければ。

ということで、仕事終わりのぐったりした足で、21時の池袋を街を、ぶらぶらしていた。

池袋でお買い物といえば、私にとってはジュンク堂、一択だ。

フロアごとにぐるぐるまわり、エスカレーターでひとつ上の階に行き、ぐるぐるまわり、ひとつ上の階に行く。

ああもう、足が痛い!さっさと決めろよ優柔不断め!そして早く帰りたい!

と、自分に悪態をつきながら本屋をまわること小1時間。

ついに出会ってしまったのだ。


「東大宇宙博士が教える やわらか宇宙講座」

会話形式で、「難しい話はNG!」な私にもやさしい本だったので、本当におすすめ



なんだ、この、見るからにワクワクが止まらなさそうな本は。装丁も私の好みにドンピシャで、ちょっとシュールなタッチのイラストがたまらなくかわいい。そもそも東大宇宙博士って、めちゃめちゃかっこいいな。私もその肩書き、欲しいな〜!

いかん。これは運命の出会いだ。

そう確信した私は、「何があってもこの本を私は買います」という表情でその本を両腕でホールドしつつ、エスカレーターを何個も何個も降りて、1階のレジに向かったのであった。

ホクホクしながら家に帰り、そそくさとお風呂に入り、おぼつかない足取りでパジャマに着替える。

「ひゃ〜!読む?もう読む?」

こんなにボルテージが上がっている時に読まないで、いつ読むんだ!

早速ページをめくり始めた私は、ものの数分ですっかり宇宙の魅力に取り憑かれてしまった。

中でも私が衝撃を受けたエピソードを、一つだけご紹介したい。

それは、"地球の住所"についてだった。

地球が位置する太陽系は、天の川銀河の中にある。そして天の川銀河は、局所銀河群の中にある。その局所銀河群は、局所超銀河群の中にあって、局所超銀河群は、ラニアケア超銀河団の中にあるそうだ。

「もう、なになに?ラニアケア超銀河団ってなに?宇宙、壮大すぎる。そして銀河ってめちゃくちゃ多いな!」

感動の嵐である。ドキドキとワクワクが止まらないし、あまりに壮大すぎて意味がわからないぞ。私は深夜にケタケタと奇妙な笑い声を立てながら、ふと我にかえった。

「こんなに宇宙が壮大なら、地球の存在なんて、宇宙からすればものすご〜〜〜くちっぽけなんじゃない?」

「そんな地球に住む人間なんて、宇宙からしてみれば『ふーん、いたんですか』くらいのものなんじゃない?」と。


だけど、そんな「たかが人間」は、138億年の宇宙の歴史を解明できたりもする。

例えば、優秀な数学者が地道な計算を続けて、宇宙の法則を紐解く。大勢の人が何年もかけてロケットを作る。宇宙飛行士が命をかけて宇宙に向かう。

そういう地球上にいるたくさんの「たかが人間」がこれまで積み重ねてきたものによって、得体の知れない宇宙の正体に、少しずつ、少しずつ、近づいている。

(すっかり宇宙にどハマりしてしまい、NHKの宇宙関連の特番も見たのだが、ビッグバン直後の宇宙で起きたこともすでに解明されているそう)

つまり、宇宙の規模からすると大変どうでもいいであろう私たちの存在は、実はとてつもない可能性をも秘めている。

「人間って、すごいんだなあ」

そんなに素晴らしい可能性を秘めた私は、今日もおいしいものを食べて、ちょっと運動をして、知人としゃべったり一人を満喫したりして、シャワーでぴかぴかの状態になって、お布団で寝る。

そうして地味な毎日を重ねていたら、100年なんてきっとあっという間だ。宇宙の138億年に比べたら、本当に一瞬のことなんだから、楽しまないともったいない。

「お金がない」とか「勇気が出ない」とか「うまくやれる自信がない」とか、うだうだ言って足踏みばかりしていないで、会いたい人に会って、やりたいことをやらなきゃいけない。

あまりに壮大すぎる宇宙は、ある銀河のある星に住む、たった一人の私の生き方をほんの少しだけ変えてくれた。

この小さな変化が、数年後・数十年後の大きな何かにつながることを期待して、ずっとこの本を大切に本棚に飾っておく。

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