米国政府でAIを推進するためにトップが担う役割とは
※このインタビューは2024年2月5日に収録されました
政府組織でもAIを利用した新しい取り組みが広がりつつあります。
今回は米国政府で広く要職に就き、AI関連の取り組みの推進にも尽力されたパメラさんに、米国政府のAI推進についての取り組みとガバナンスの重要性についてお伺いしました。
Kohei: 皆さんこんにちは。本日は米国からパメラさんにお越し頂いております。パメラさんは人工知能やデータの分野で活躍されています。本日は彼女のこれまでの取り組みについてもお伺いしていきたいと思います。
パメラさん。本日はお越し頂きありがとうございます。
Pamela: ご招待頂きありがとうございます。
Kohei: まずは彼女の経歴を紹介させて頂きます。
パメラ K アイソムさんはIsAdvice & Consulting LLCの代表を務め、組織の代表、起業家、政府のシニアアドバイザーとしてFed100を受賞されています。彼女はこれまでに公共分野から民間のビジネスまで広くアドバイスを行ってきました。
アドバイス領域としては主にクラウドや人工知能、データ関連技術を中心に、AIやデータ、クラウド分野の専門家として新しい領域にも取り組んでいます。
パメラさんはこれまでに米国エネルギー省でシニアレベルの役職や人工知能及びテクノロジー室でディレクターを務められました。ディレクター以前には、CIOの下で副代表を務め、米国特許商標庁での経験も含めると2015年1月から2022年9月までの7年間米国政府で活躍されました。
企業戦略の中でリスクマネジメントや戦略的イノベーション、データガバナンスの運用にデータ最高責任者として関わり、空間データや責任あるAIにも取り組まれています。米国商務省、米国特許商標庁では特許商標の調査やアプリケーション開発、エンジニアリングやシステム統合に関わってこられました。
2024年1月30日に “The 2024 Virginia Black Business Leaders Awards” の一人として表彰されています。
以上が経歴のご紹介になります。パメラさん。改めてお越し頂きありがとうございます。
Pamela: ありがとうございます。
Kohei: ありがとうございます。では早速本日のアジェンダに移っていきたいと思います。私はパメラさんがこれまでに取り組まれてきた活動に非常に感銘を受けています。まずはこれまでのキャリアを選択するにあたり、なぜ安全でより良い環境を作りたいという思いを軸に選択されたのか聞いてみたいと思います。パメラさんはなぜ今のキャリアを歩もうと思ったのですか?
民間から米国政府までのキャリアを歩まれた理由
Pamela: とても良い質問ですね。まずは今回のインタビューにお呼び頂き心より感謝申し上げます。私が現在取り組んでいるお仕事についてもお話しできればと思います。
そもそも論から話をしたいと思います。私が何かに取り組む際には、持続可能性やイノベーションを見据えて、創造性やクリエイティビティを基準に考えるようにしています。
安全性や信頼が無いイノベーションの誕生によって、道を踏み外してしまうことが無いようにしなければなりません。私はこれまでにどこかへ所属しながら活動してきたのですが、組織に所属するだけでなく、新しく会社を設立し自らイノベーションを生み出すために取り組むことを決めました。
イノベーションによって生まれる害悪に対して、どういったソリューションが提供できるのかを考え導いていくことが私の役割です。現在はAIとデータ領域を中心に、安全なAIソリューションの開発に注力しています。
私は元々イノベーションに関わることが好きで、今の世界で働くことを決めました。ビジネスやコミュニティ、公明正大をキーワードに活動しています。
私が目指しているゴールとしてAIと新領域のテクノロジーを組み合わせたソリューションを設計したいと考えています。持続可能なソリューションの提供に向けて、公正な機会を提供しつつ、より安全な社会を作っていきたいと思っています。こういった取り組みを通して、社会全体により良い雰囲気を広げていきたいです。
ここまで私が注力していることについてお話ししてきましたが、この話は一人で7人の子供と私を育ててくれた母の考え方に影響を受けています。彼女はとてもポジティブな人でした。母の影響から、公正であることや異なるタイプの競争についても取り組むことができたのです。
子供時代の経験を通して、今の生活で大切なことを学びました。私はこれまでの学びをビジネスの世界にも生かしていきたいと考えて活動しています。私が安全な社会を目指す理由には子供の頃に感じた経験というものが深く影響しているのです。
常に世の中は変わっていくので、イノベーションを生み出し続けていくためにも安全でより良い社会を目指していくことこそが最良だと思います。安全な環境を通して、より良い社会を皆さんと作っていきたいと思います。
Kohei: 素晴らしい考え方ですね。パメラさんが出演されているこれまでのインタビューで親御さんの影響を強く受けているという話を幾度かされていたと思います。そういった経験から今の安全でより良いネット社会を作っていく考え方に繋がっているのだと理解しました。
ここからはパメラさんのキャリアの話に戻りましょう。パメラさんは米国エネルギー省で重要な役割を担われていたと思います。パメラさんの今までのキャリアについてお伺いしたいのですが、米国エネルギー省ではどういった役割を担われていたのでしょうか?
米国政府でAIを推進するためのトップが担う役割とは
Pamela: わかりました。米国エネルギー省ではAI部門のトップを務めていました。当時は人工知能とテクノロジーオフィスでエグゼクティブディレクターとして働いていました。主にAI倫理やガバナンスチームを率いていくことが私の役割でした。
加えて、省庁でのAIに関連した活動をAIの観点からポートフォリオ化して整理し、現在の取り組みと今後の計画についての取りまとめを行っていました。立場上省庁内でどういったモデルを採用するかについても携わっていました。
(動画:Insights from Pamela Isom, Director, Artificial Intelligence and Technology Office)
新しくAIモデルを採用するにあたって各モデルについて理解する必要があったので、安全性の観点からどういったモデルを戦略的に採用すべきかについての検討を中心に仕事を進めていました。
AIモデルについて検討する際には何を変更すべきか、もしくはさらに何を追加すべきかを検討する必要があります。さらには世界展開を含めて考えることを求められるケースもあったので、AIポートフォリオ内でのギャップ分析も行い、意思決定に繋げる役割を担っていました。
全体最適を検討する場合には、サプライチェーンを俯瞰して考える必要があり、そのサプライチェーン上でどのように最適化すべきかを検討することが必要です。
サプライチェーン全体を最適化するために導入が必要なシステムについては追加でリスクが発生するのかを未然に理解し、リスクが高まる可能性がある場合には全体のガバナンスプログラムの強化を行う必要が出てきます。
そのため、私たちのチームではAIACと呼ばれるAIに関する発展した会議体を設計し、A分野のトップとして運用を円滑に進めるための調整を行なっていました。
私自身も部門長という立場ではありましたが、私が担っているミッションを実現するためには各部門のトップがAIについての理解を深めていく必要があります。
そこで会議体を自部門だけに留めるのではなく、複数の部門を横断した会議体として設計するようにしました。そして、各部門からリーダーを選出して会議体に参加してもらえるように働きかけるようにしました。
会議の中で意思決定を行う際には、各参加者が連携して部門を超えたステークホルダー間で議論を進めていきます。
会議体の設計だけに限らず、国の研究所で働くことも私の役割の一つでした。研究所での仕事はとても楽しかったです。研究所内ではクリーンエネルギーの材料についての研究をAIを用いて実施したり、電気や水素自動車に材料を応用するような取り組みを行っていました。
米国政府での経験は非常に有意義な時間で、いくつか興味深い活動にも参加することができました。AIのトップとして活動するまではチーフデータオフィサーという役割と共に、情報部門の副代表を務めていました。
この頃から本格的に国でのデータ活用に関わるようになったのです。私の役割はイノベーション推進責任者だったので、当時はイノベーションコミュニティセンターで活動していました。現在は名前が変わってAIイノベーションハブと呼ばれていると思います(実際のところは分かりませんが)。
政府機関がAI利用を推進する際に検討すべき安全性の課題
ただ、イノベーションコミュニティセンターがAIを見据えながら動き始めていることは確かですね。私が関わっていた時期には企業向けの参照モデルの開発に注力していました。それ以外に、AIでどのようにデータを利用できるかについても検討していました。
それぞれの部門間でのデータ利用状況について把握することも私の仕事でした。データを組み合わせたり、データがAIに適合しているかどうか検証したりをプライバシーが保護される環境下で運用できているかを検証し、サイバーセキュリティで利用されるデータについては安全な環境下での運用に繋がっているかも理解する必要がありました。
データの安全性についての理解が非常に重要な活動の一つだったので、データを活用しつつも、市民を守ることを軸に全体の設計を進めていました。そういった活動をしつつ、国家核安全保障局で原子力について関わる機会を頂いたこともあったのですが、安全保障局ではこれまでと全く違ったことを経験することができました。
ここまで話をしてきたことは私がこれまでのキャリアで培ってきた経験ですね。様々な分野でリーダー経験をさせて頂いて、最終的にはチーフAIオフィサーとしてお仕事をさせて頂いていました。
Kohei: パメラさんは米国政府の中で非常に重要な役割を担われてきたんですね。エネルギー省に赴任する前には、米国特許商標庁でお仕事されてこられたと思うのですが、こちらではどういったお仕事をされていたのかお伺いしてもよろしいでしょうか?
〈最後までご覧いただき、ありがとうございました。続きの中編前半は、次回お届けします。〉
Interviewer, Translation and Edit 栗原宏平
Headline Image template author 山下夏姫
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