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プライバシー保護技術を実装するための新しい活動

※このインタビューは2024年5月6日に収録されました

プライバシーを保護するために技術的な新しい取り組みが進んできています。

今回は広くデジタルマーケティング分野で活躍し、現在はプライバシー保護ソリューションのスタートアップで活動するヴィヴィアンさんに、プライバシー保護に関するビジネストレンドについてお伺いしました。

Kohei: 本日もPrivacy Talkにお越し頂きありがとうございます。本日はオーストラリアからヴィヴィアンさんにお越しいただいています。ヴィヴィアンさんはデジタル分野で長らく活躍されてきました。本日はお越し頂きありがとうございます。

Vivian: ご招待いただきありがとうございます。 

Kohei: 本日のアジェンダに入る前に、ヴィヴィアンさんのプロフィールを紹介したいと思います。

ヴィヴィアンさんはデータサイエンスの専門家、起業家として複数の業界でデータ戦略やテクノロジー開発、ソリューション提供に関わってきました。アクセンチュア、電通イージス、AcxiomでAPACでのリーダー職を担ってきました。

ヴィヴィアンさんは世界中のパートナーネットワークを通して、広くデータやデジタル業界に精通しています。ヴィヴィアンさんはビジョンをソリューション開発にデザインしていく役割を担っています。

ヴィヴィアンさん。本日はお越し頂きありがとうございます。

Vivian: ありがとうございます。 

GDPRをきっかけとしたデータビジネスの転換点

Kohei: では早速アジェンダに入っていきましょう。先ずは、ヴィヴィアンさんがこれまでに関わってきた業界やキャリアについてお伺いしたいと思います。ヴィヴィアンさんはなぜデータやデジタル業界で働き始めようと思ったのでしょうか?

Vivian: ありがとうございます。とても大切な質問ですね。私が初めて働き始めたのは金融サービスをクライアントにする仕事です。GEキャピタルやディスカバリーフィナンシャルサービス、OCBC等が対象のお客様です。このような業界におけるデータを活用したCRMやリスクマネジメントについてのサービスを提供していました。

金融サービス業界を対象に関わった後に、アクセンチュアに転職することになりました。アクセンチュアではこれまでと異なる業界に広く関わることになりました。ここまでの経験を通して、デジタルエコシステム内でマネタイズをするためにはデータの取得と利用が重要であるとがわかりました。

そして、2018年にはGDPRが施行されることになります。データ保護法が施行されたことは、私たちのデータ業界に大きな影響を与えることになりました。当時、大手データ企業のAcxiom(当時はLiveRamp)に勤めていましたが、新しい変化を見据えて退職することを決意しました。

今後消費者のデータをマネタイズするビジネスは、管理できないほどの個人情報を扱うことになることがわかったからです。そういった事実を踏まえて、新しい本質的なアプローチが必要になるだろうと考えました。

もっと消費者が主体となって、データを主体的に管理するようなことが必要になると思ったのです。現在は消費者がデータを管理するという視点が足りていません。

これまではデータを活用する側の業界にいたので、データを利用することによって生まれる新しい価値は十分に理解しています。データを活用することで、私たちの生活が良くなることもあるでしょう。

ただ、これまでの経験を通してAPAC圏内では消費者からの信頼なくデータを共有することは良い効果を生まないこともわかっていました。プライバシーを無視することなく、消費者の権利を尊重し、透明性を高めた上でデータへのアクセス範囲を高めていくソリューションが必要であると考えて今に至ります。

Kohei: そういった経緯があったんですね。素晴らしいです。ヴィヴィアンさんはアクセンチュアや電通等のグローバルに関連した企業で働かれていたと思います。これまで関わっていた業界に対して、データ保護に関する規制の動きはどのような制限をもたらし、産業全体が変化していくことになったのでしょうか?

Vivian: メディアや広告業界についてですよね?

Kohei: はい。メディアや広告業界について教えて欲しいです。

デジタル広告やメディア業界が注目するプライバシー保護の取り組み

Vivian: メディアや広告業界というととてつもなく広い範囲に及びますが、GDPRが施行されて最も大きな影響を受けることになったのは、まさにメディアや広告業界であると思います。私たちがいた業界では、データを管理して消費者にサービスを届けていたからです。

既にサードパーティクッキーを始めとしたこれまでのアプリケーションについては、疑問の声も高まっています。私たちの業界では、個人データを扱うことが当たり前になっているので、エコシステム全体でのデータ共有も進んでいます。

パーソナライゼーションと業界では呼ぶことが多いのですが、オンライン、オフラインに限らず消費者の行動を追跡するような仕組みを提供しています。私たちの行動は日々広告のために追跡されているのです。

(動画:How to Achieve Personalization at Scale with Machine Learning)

こういった業界にとってプライバシー法は非常に大きなインパクトをもたらすことになりました。業界に所属する各企業はデータの取得や保管、利用について再考することが求められるようになりましたし、GDPRでは新たに二つの重要な対策が求められるようになりました。

一つ目が、個人データとは一体何かということです。もし対象の情報が個人データであると定義されれば、個人データ提供者の権利が保護される必要があります。これは消費者と詳細な合意を取り付ける必要があり、データ取得や共有においても対策の変更が必要になります。

個人データ提供者の権利といえば、データの削除権である「忘れられる権利」が有名です。個人データを預かっている企業は、これまで以上に管理に対する責任が求められるようになります。そして、ビジネスにおいて具体的な個人データ提供者への対応が必要になるのです。

先程説明したクッキーというアプリケーションの廃止に向けた動きも、業界がこれまでに進めていた流れを大きく変える要素になっています。どの企業も自らが保有するファーストパーティデータへと移行することが必要であり、それが最も有益な対策ではないかと考えています。

ただ、ファーストパーティデータへ移行するということは、各組織が直接消費者から個人データを預かる必要が出てきます。こういった変化に対して、各種のビジネスではセキュリティやデータ保護への懸念が高まってきているのです。どのように個人データを管理し、運用していけば良いのかという問いですね。

こういった課題は私たちの業界が日々議論をしているテーマです。私たちがプライバシー保護技術に注目しているのも業界の課題を解決したいことが動機になっていて、現在はデータクリーンルームのような技術開発に取り組んでいます。テクノロジーを駆使することによって、複数の観点から業界に影響を与えていきたいと考えています。

(動画:How Data Collaboration Can Take Your Clean Room to the Next Level)

Kohei: これまでの経緯についてお話し頂きありがとうございます。ヴィヴィアンさんから教えて頂いた業界の動きについては、今後10年で業界だけでなく社会全体に大きな変化をもたらすようなきっかけになるだろうと思います。おっしゃるようにプライバシー保護技術は、重要なイノベーションの一つになりそうですね。

ヴィヴィアンさんの会社はメディアや広告業界で先んじた取り組みを推進されていると思います。ここからはスタートアップ立ち上げまでのお話しと提供サービスについてお伺いしてもよろしいでしょうか?

プライバシー保護技術を実装するための新しい活動

Vivian: ありがとうございます。そうですね。私が所属しているスタートアップはKarlsgareという名前です。初期はブロックチェーン技術の開発に関わっていました。データ共有の問題を解決し、消費者自らが管理者となるような設計を検討していたのです。

まずは消費者がバリューチェーン全体の中心となるような設計を考えていました。消費者がデータの所有者となるモデルです。ただ、考え方は正しいとしても、サービスとしてはあまり軌道に乗りませんでした。

そういった学びを通して、データ管理者側から効果的にアプローチできないかと考え今のモデルに行きつきました。企業や組織がデータ管理者として機能し、消費者からデータをお預かりしてサービスや商品を届ける役割を担うことになると思います。

こういった企業や組織が責任を持ってデータを利用し、信頼できるものになれば、消費者にとっても便益があると考えたからです。これは消費者にとっても、企業にとっても有益なソリューションになります。

私がブロックチェーンでやろうとしたことが上手く軌道に乗らないタイミングで、元々Acxiomの同僚であったKarlsgareの創業者Brian Mullinreached氏に声をかけてもらい、新しい分野に取り組むことにしました。非常に可能性を感じましたし、2020年にKarlsgareを立ち上げた際には、ビジョンに共感することが多かったです。

そして、その年に大きなクライアントと契約を締結することもできました。メキシコの通信企業で越境のデータプロジェクトに関わるものです。現在は、幅広くクライアントを獲得し、マイクロソフトやMotley Fool Venturesからも資金調達を実施しています。 

Karlsgareでは現代のデータガバナンスの仕組みに対して、プライバシー保護を推進するようなソリューションを提供し、データ管理者がデータを安全かつ、プライバシーを保護した形でのデータアクセスやデータ共有を外部と実施できるようなサービスの提供を進めています。

Kohei: 現在のプライバシー保護の潮流の中で、非常に重要な挑戦をされていますね。次の質問は、業界の変化についてお伺いしたいと思います。一つ前の質問で、データ保護規制によって業界全体が大きく変化してきたとお話を頂きました。

現在も継続的に変化し、今後はより大きな影響も出てくるかと思います。

次にお伺いしたいのは、業界全体でプライバシーに対する考え方はどのように変わってきたのでしょうか?データ保護規制というのは変化要素の一つかと思いますが、他にも重要な要素があれば教えてください。

〈最後までご覧いただき、ありがとうございました。続きの中編は、次回お届けします。〉

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Interviewer, Translation and Edit 栗原宏平
Headline Image template author  山下夏姫

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