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Appleで直面したプライバシー不安とその理由

※このインタビューは2022年11月8日に収録されました

従業員のプライバシーに関する問題がより深刻になってきています。

今回は人権派弁護士としても活動されているアシュリーさんにAppleのケースを例に、従業員のプライバシーの重要性についてお話をお伺いしていきたいと思います。

Kohei:皆さんこんにちは。Privacy Talkへお越しいただきありがとうございます。本日はアシュリーさんにインタビューにお越し頂き、個人の権利についてのお話をしていきたいと思います。アシュリーさん、インタビューにお越し頂きありがとうございます。

Ashley:ご招待頂きありがとうございます。

Kohei:ありがとうございます。初めにアシュリーさんのプロフィールを紹介したいと思います。アシュリーさんは人権派弁護士として活動され、国際法や公共医療、プライバシーや人権問題等に取り組んでいます。

彼女は独自の調査を実施し、取りまとめた調査結果を人権NGO団体や活動団体に紹介しています。アシュリーさんはこれまでに学術的な法の分析、公共医療、所有権に関してアワードを受賞しています。テクノロジーの社会的な責任、AI倫理や従業員の市民権利等に関するプロジェクトを率いてきました。

アシュリーさんは法務博士と公共国際法を修了し、ナイキを経てAppleで7年近く働いていました。これまでにリスクが高い大規模なプロジェクトに10数年携わり、国を越えたグローバルなプロジェクトやプログラム、政策等に携わっています。

改めて、本日はお時間をいただきありがとうございます。

Ashley:ご招待いただきありがとうございます。

Kohei:ありがとうございます。早速本日のアジェンダに移っていきたいと思います。アシュリーさんはAppleでの経験を始めとして、これまでに素晴らしい経験をされてきていると思います。アシュリーさんがAppleで取り組まれていたことをお伺いしてもよろしいでしょうか?

Appleで取り組んでいたこと

Ashley:私がAppleに入社したのは2015年2月になります。Appleに入社する前には、数年間Nikeで仕事をしていました。Appleではソフトウェアのリリースに関わり、AppleのiOS関連の仕事をしていました。私の仕事は企画から新ブランドリリースまで全てに関わる役割を担っていて、その後に初期不良の調査を行う ”Early Field Failure Analysis” というチームに移ることになります。

私は新しいチームで、新たにiPhoneやMacを出荷する際にお客様からの問い合わせに対して、問題を把握して修正対応とコミュニケーションを行う仕事の責任を担っていましたAppleを退社する前の数年間は ”Product Integrity” という取り組みに参加していました。

当時は役員のもとで私がスタッフの責任者として大規模なプロジェクト運営に当たっていました。プロジェクトに関わったのちに、Appleの法務ソフトウェアプロダクトを率いることになり、AppleのAI倫理ポリシーの設計やテクノロジーの社会責任ポリシーにも関わることになり、とても面白い仕事に関わることができました。

他にも社内全体で従業員向けの市民エンゲージメントプロジェクトに関わり、投票と民主主義について取り組みました。Apple全体の複雑な企業内ポリシーの設計にも関わりましたが、それも素晴らしい経験でした。現在も設計したポリシーが使われているみたいです。

Kohei:ありがとうございます。ここまでアシュリーさんのAppleでの経験をお伺いし、とても素晴らしいキャリアを歩まれてきているのだと感じました。一方でAppleでの経験の中で、アシュリーさんが不安になることがあったともお伺いしています。昨年(一昨年)に起きたAppleでの経験について教えてもらえますか?

Appleで直面したプライバシー不安とその理由

Ashley:はい。最終的には私がAppleで経験した非常に辛い経験を、私自身が感じた懸念点とともにメディアやソーシャルメディア等を通して公表し、政府に対しても申立てを行うことになりました。

私がAppleで経験した懸念とは、私がAppleに問い合わせた内容に対しての回答が私を不安にさせたことです。私はAppleが従業員の活動を監視し、従業員のプライバシー侵害を起こしていたことや、従業員の生体情報を活用していたことを公表しないように圧力をかけていたことを外部に公開しました。

この件については事前にAppleと数ヶ月掛け合いましたが建設的な回答が得られなかったので、内部の問題を通報して今に至ります。

Kohei:とても重要な情報な内容ですね。Appleとはこれまでにも論争になっていたと思いますが、Appleから今回の件についてどのような返答があったのでしょうか?

Ashley:そうですね。Appleは従業員からの問い合わせに対して、情報開示のポリシーに従いあまり寛容な回答を行なってくれていません。Appleは世界的にも内部秘密を重要視する会社で、その秘密保持については時々記事でも紹介されることがあります。

Apple社内では内部事情について外の人たちに話をすることがあまり好まれません。Appleが私を解雇したことで、私は孤立してしまったことになります。

私は解雇されたのちに、州や連邦政府に内部で起きたことを通報しました。解雇された当時には、懸念されたことを毎日プレスを通じて発信していましたが、内部事情を外に公開することはAppleにとってはあまり好ましいことではなかったと思います。

Appleからの解雇理由と従業員の権利

私がAppleに解雇された理由については、Appleから明確に知らされていません。一般的な回答しか返って来ていないので、解雇理由は曖昧な状況です。

解雇されてから1週間後に、Appleの法律事務所から解雇理由のようなものを記載したメールが送られて来たのですが、3月までは公式な理由の説明がありませんでした。

図: 従業員のプライバシー侵害と解雇

Appleは私が従業員に対して生体情報を実験的に利用していた秘密を公開したことが解雇理由であると主張していました。この実験では、各従業員のスマホにアプリをインストールし、ベッドルームや浴室等でも秘密の動画を撮影し、生体情報を活用していたものです。

この一件も含め、私は市場環境がプライバシーの権利を保護することに対して強く要求し始めていると感じているので、このような監視プログラムを実施することは従業員の権利を不当に扱っているので、長期的に外部の目が入ることで私の主張を正当化することになるだろうと考えています。

私がこれまでに紹介したような告発を行ったことは否定しませんが、政府が求めていることに反し民間企業が従業員の情報を許可なく使用することに対して、公表されているケースを正当化しないということには反対の立場です。

私が企業に解雇されたことによって、裁判所では新たな議論が生まれるきっかけになりました。解雇された当初から、私は今回のケースがプライバシーの権利を主張するために必要だと考えていました。企業が従業員に対して敬意を表さない行動を取ることが問題であると具体的なケースで示したかったのです。

Kohei: 背景について理解しました。とても深刻な問題に直面していますね。現在は弁護士として活動されていると伺っていますが、弁護士になろうと思った理由と、弁護士として現在どういった活動をされているか教えていただけませんか?

Ashley:私が法科大学院に通い始めたのは2018年からです。これまでの十数年間は専門家として大手テクノロジー企業でお仕事をしてきました。今では、企業の現場から離れてこの国のコミュニティや困っている人たちの支援を行う立場でお仕事をしていきたいと考えています。

2018年に夜間と週末の授業に通い始めることにしました。法科大学院では4年間過ごし、今年(昨年)の6月に卒業することになりました。これまでフルタイムで仕事をしながら勉強を続けていたので、やっと卒業できたことはとても嬉しかったですね。現在はニューヨークの司法試験に向けて準備を進めています。

Kohei:素晴らしい結果ですね。弁護士になることは簡単なことではないので、素晴らしい活動の結果だとおもいます。ここからアシュリーさんがご経験されたことについて深掘りつつ聞いていきたいとおもいます。

アシュリーさんのご経験は従業員とプライバシーのテーマでとても重要な内容です。アシュリーさんはこれまでのご経験から米国でのプライバシー権についてどのようなことを学びましたか?教えて頂けると嬉しいです。

〈最後までご覧いただき、ありがとうございました。続きの中編は、次回お届けします。〉

Interviewer, Translation and Edit 栗原宏平
Headline Image template author  山下夏姫

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