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消費者と従業員へのプライバシーに対するAppleの考え方

※このインタビューは2022年11月8日に収録されました

従業員のプライバシーに関する問題がより深刻になってきています。

今回は人権派弁護士としても活動されているアシュリーさんにAppleのケースを例に、従業員のプライバシーの重要性についてお話をお伺いしていきたいと思います。

前回の記事より

アシュリーさんは現在素晴らしい取り組みに関わっていると思います。一つがGreat Fireと呼ばれるプロジェクトで、もう一つがApple Censorshipです。ここからはプロジェクトについてのお話とプライバシーとの関連性についてお伺いしてもよろしいでしょうか?

中国に関連した二つのプロジェクト

Ashley:わかりました。GreatFireというプロジェクトには今年に入ってから数ヶ月関わっています。GreatFireは中国国内のファイアーウォールを避けてサービスにアクセスするための取り組みで、AppleCensorshipのようなプロジェクトに加えて新たに始まった取り組みです。

(動画:GreatFire.org English Version)

AppleCensorshipはGreatFireが中国政府による指摘によってAppleストアからアプリが削除されたのちに開発されました。Appleがマーケティング活動で表現の自由や人権について訴えているにも関わらず、Appleがアプリを削除したことに対しては活動家の中で驚きでした。

AppleCensorshipはAppleが展開するアプリストアの監視役として、Appleが差し止したサービスを監視する機能を備えていて、開発者自らで何かを行ったか否かを追跡し、事実をもとにして差し戻し等も行っています。

よく話題に上るアプリの種類としてはVPNアプリが挙げられます。VPNの利用者は一定レベルのプライバシーが保証され、オンライン上での監視活動を妨げるようにしています。もちろん、政府による監視活動についてはVPNアプリが見つかり次第ストアから削除されることになります。

私たちがAppleCensorshipで注力しているのは、この分野です。この活動を通じて大手テクノロジー企業による個人のプライバシーに対する影響力が他国でも広がっていることに気付かされました。TwitterやFacebookについてよく語られるコンテンツモデリングですが、Appleに関しても同様の問題が起きているのです。

Appleの場合はSNSではないため、アプリストア上で問題が発生しています。実際には、こういったことが度々発生しているのです。Appleはストアに登録されたアプリを検閲し、差し止めを行っています。

インターネット上に投稿されたコンテンツそのものに対して直接検閲を行っているわけではないですが、誰かが新しくインターネットにアクセスするために利用するVPNアプリを差し止めるようなことは、私たちがどのアプリを利用しているかプライバシーに配慮せず行われていますAppleが差し止めを行っていることは、事前にコミュニケーションもないため問題になっています。

Kohei:なるほど。Appleはプライバシーについて先進的に取り組んでいると聞いていますが、アシュリーさんの調査でプライバシー保護に関する問題が起きていることを初めて知りました。Appleが消費者に対して実施していることと、従業員に対して実施していることは何か関係があるのでしょうか?

消費者と従業員へのプライバシーに対するAppleの考え方

Ashley:そうですね。私のiPhoneにはシークレットビデオがいつも起動していて、私が家にいる時や働いている時に限らず、外でランニングをしている時や、友人やクラスで電話をしている時にでさえデータを取得しています。 私の周りの生体情報や子供の情報についても同様です。動画をオンにしている際には顔の情報も取得しています。

どれだけの人のデータが取得されているのかを考えると恐くなりませんか?データを提供している人たちは自分のデータが勝手に渡っていることがわからないことが問題になります。そして、Appleは自分たちが行っていることを重要機密とし、この件について話をしている従業員を解雇することになったのです。

私たちの行動を電話を通して追跡している人たちに対して、警告することができないことを非常に懸念しています。Appleは研究開発チームに対して、仕事と個人利用の電話を携帯するように要求し、電話の質を検証するためにデバイス追跡を行っているのです。

彼らは行動を監視し、デバイスを利用していない場合にはメールで通知することでデバイスを利用するように仕向けています。私たちはスパイウェアを携帯し、私たちのために使用するのではなく、私たちの情報を追跡したい人たちのために利用されています。

そして、私たち従業員のプライバシーポリシーにはプライバシーが保護されるとは明記されておらず、個人のデバイスや必要であればその友人のデバイスを通して追跡活動が行われているのです。

従業員以外のiPhoneについては、消費者向けのプライバシーポリシーによって保護されていると思いますが、Appleで働く人たちの友人がiPhoneを通じて連絡をとっている場合にはプライバシーが保証されるとは限りません。

図:各国で行われている従業員のプライバシー管理

この事実は公表されていないのです。 私はこういった申立てを政府に対して行っています。私の友人はロンドンやパリ、アイルランドのコークにも住んでいるからです。

英国は離脱して独自の制度を準備していますが、友人達の個人データは欧州のデータ保護法のもとで保護されることになります。私は実際に対処するための方法を詳しくは存じ上げていませんが、他にもプライバシーを保護する制度があります。私自身も追跡活動について非常に懸念していますが、私以外にも懸念している人たちがいるはずです。

Appleの内部規約については、公で議論するために公表しようと考えています。Appleは消費者のプライバシーポリシーについて、尊重していないのです。さらに問題があれば、Appleの従業員や、まだ事実を知らされていない人たちとも話をしていきたいと思います。

私たちは大手テクノロジー企業で働いている人たちのプライバシーが保護されているか否かについて懸念しています。私が今日お話しした追跡に関する内容については、マーケティングとしてプライバシーの重要性について考えているか否かに関係なく、実際に起きていることなのです。私たちは社内で起きていることに対してより多くの疑問を投げかけることが必要ですね。

Kohei:ありがとうございます。私たちはより寛容で安全な場所をテクノロジー企業の中で準備する必要がありますね。デジタル化に伴って多くの企業ではデジタル環境を整え始めていると思いますが、デジタル化と合わせて消費者と同様にプライバシー保護が必要になります。

未来に向けて考える際に、現在課題を抱えている企業とどのように向き合い改善していくことが良いのでしょうか?未来に向けて何か良いアイデアはあるのでしょうか?

Ashley:米国内での従業員に対する対応は他国と比べてまだまだ対策が進んでいないと思います。特にプライバシーと追跡に関する問題は深刻です。大手のテクノロジー企業では従業員に対するプライバシー意識がとても低く、ポリシーの中でも明確に定められていません。会社に就職する際には、ただ雇用契約書にサインするだけだからです。このような慣習に対して、向き合っていくことが必要です。

私がAppleに対して主張していることにぜひ注目してほしいと思います。Appleの主張は私を解雇したことに対して、法的な救済を行うことを難しくしてきています。

今回の問題については様々な視点から議論を続けていくことになります。裁判所や政府機関とも何年も話し合いが必要です。これからはより分析を進めていって、議論を進めていきつつ私が経験してきたことに対して主張していきたいと思います。

未来に向けてのメッセージ

Kohei:ありがとうございます。最後にアシュリーさんから視聴者の方へメッセージを頂いてもよろしいでしょうか?消費者のプライバシーだけでなく、従業員のプライバシーも重要なテーマであると思います。

本日ご紹介いただいた課題に対して、未来に向かって進んでいくためにはとても重要な話になると思います。ぜひメッセージを頂けると嬉しいです。

Ashley:今回の件について何か解決策が見つかることが素晴らしいと思います。私は米国内で立ち止まってこのテーマについて考えてみる必要があると思います。このテーマというのは、”大手企業で契約に同意のもと働いている従業員の人たちにはプライバシーの権利がない” ことに対する懸念です。

現在は当たり前の考え方になっていますが、この考え方は懸念されるテーマです。特に大手テクノロジー企業では当たり前に起きています。私たちが受けてきたことを変えていくためには、内部で起きている実態を告発していく人が必要です。勿論告発者になるだけではないですが。

そして政府に対して働きかけを行い、問題への介入を行ってもらうことも必要です。プライバシーが守られることがなく、常に追跡されている状態は監視されていることになります。日常が監視されてしまっているのです。

同僚に “自分たちのプライバシーに対する権利” について話をすることも難しいのです。それとも政府に対して所属企業が違法行為を行なっていることを説明し、助けてもらうことができるでしょうか?

企業が主張するには24時間四六時中監視しているのではないと考えているからです。世界中でより多くの消費者が自分たちが監視されることに対しては懸念を示し始めていることから、こういった行為に対して解決策を考えねばなりません。

でも、このような企業が私たちに行なっていることに対しては批判的になることが必要です。基本的なプライバシーの権利から始めていくことが大切なのです。何度も言いますが、最も先進的なカリフォルニアでさえ欧州のGDPRからは遅れているので、米国全体ではまだまだこういった議論が進んでいません。

米国全体で従業員のプライバシーについてより良い環境づくりのために考えていくことが必要です。もし従業員が非倫理的な監視に対して反論することで解雇されることになれば、その企業はマーケティングのために偽善を振る舞っているのではないでしょうか。

企業が実際に行なっていることと、発信していることに乖離があることにどういった背景があるのか教えて欲しいと思います。

私たちは今までの活動を原点に帰り、批判的な議論を行うことが大切です。米国では連邦法レベルで政策についての議論が進みつつあるので、これまでの遅れを取り戻していくためにも新たな議論を進めていく必要があると思います。

Kohei:素晴らしいメッセージをありがとうございます。対話を通して、会社組織のあり方について考えて改善していくことはとても大切だと思います。より良い未来を作っていくために、何ができるのか話し合っていきたいですね。特定の誰かが得をするのではなく、お互いに恩恵を受けることができる環境が必要だと思います。アシュリーさん、本日はお時間をいただきありがとうございました。

Ashley:本日はインタビューの機会をいただきありがとうございました。インタビューを通して、幅広く皆さんに知っていただけることを願っています。

Kohei:ありがとうございます。

Interviewer, Translation and Edit 栗原宏平
Headline Image template author  山下夏姫

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