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デジタルプライバシーを推進するために公開したドキュメントとは

※このインタビューは2023年4月20日に収録されました

学術団体でもプライバシーに関する新しい研究や取り組みが進んできています。

今回はブロックチェーンやセキュリティ分野の専門家として活躍し、IEEE デジタルプライバシーの共同チェアを務めるクリスさんに、学術団体で取り組むプライバシーに関する新しい取り組みについてお伺いしました。

前回の記事より

ドキュメントで発表されていた未来の構想を実現するために、テクノロジーの開発とプライバシーについてどのように考えれば良いのでしょうか?

デジタルプライバシーを推進するために公開したドキュメントとは

Chris: 私たちはIEEEという技術を中心に議論するグループなので、新しい活動を始めるにあたっていくつか技術に関連したドキュメントを公開しました。

ドキュメントで公開したいくつかの技術ソリューションは既に準備ができています。これまでに開発してきたソリューションに加えて、より良い解決策を検討し、社会に向けて展開できるようにしていきたいと考えています。

テクノロジーを活用して人間社会に貢献していくことがIEEEのモットーです。そして、私たちのグループではいくつかのトピックに注力して取り組みを推進していこうと考えています。一つがテクノロジーで、もう一つがプライバシーとテクノロジーについて新しい取り組みを進めていきたいと思っています。

現在はグループメンバーの中で、どのように新しい技術を応用していこうか議論を進めています。どういった場面で利用され、誰が推進し、どのように活用されるのか?そしてどのように統合されて、既存の取り組みにプライバシーがデザインされていくのかを考えることが必要だと思っています。

私たちの活動は、政策動向とも連携しながら車輪の再発明をするのではなく、政策の方向性と連携しながら取り組みを進めています。

図:政策の方向性を見据えながら活動を取りまとめる

現在は、政策がどのように設計されているのかを学びながらこれからの動きについて整理しているところです。そういった政策的な動向を観察しつつも、私たちはテクノロジーに関心があって集まっているグループなので、テクノロジーを軸にした動きを推進しています。

未来に向けたテクノロジーについては、ドキュメントの中でいくつか紹介していますが、今はテクノロジーを活用していく際のガバナンスについて関心を持って取り組んでいます。

ドキュメントを取りまとめる際には、特定のテクノロジーに偏らず、できる限り中立的な立場で様々なテクノロジーの可能性を検討し、内容を整理していきました。

各国で新しい政策に関する動きが進んでいる中で、各地域で理想とされている考え方を上手く取り入れながら、異なる考え方が上手く交わるような設計を心がけていました。

私たちの活動をより広く拡大するためには、これまで参加できていなかった人たちが2年目以降の取り組みに関与し、プライバシーに関連した活動へと広く反映されていくことが必要であると考えています。

将来的には、参加者と一緒に設計した内容を整理して標準化を推進するための取り組みに活かしていきたいと考えています。IEEEスタンダード協会では、標準化を推進する活動を支援しているので、私たちも彼らの活動と連携しながら進めていくよう既に話を持ちかけています。

私たちが立ち上げた標準化のワーキンググループでは、テクノロジー、プライバシー、標準、組織等の様々な観点からの分類を進めています。今後は一貫した基準を整備したいと考えています。初期の出版物としては、原典である分類を取りまとめて整理するところから始めていく形になるかと思います。

Kohei: 素晴らしいですね。現場で活用されるためには、様々な意見を集約して意見として取りまとめていくことが必要になると思います。IEEEデジタルプライバシーグループで2年目に取り組むことはどういったことを計画しているのでしょうか?関心を持っている方もいらっしゃると思うので、教えて頂けると嬉しいです。

これからのIEEEデジタルプライバシーグループが掲げていくもの

Chris: そうですね。ご質問にお答えさせていただくとすると、異なるワーキンググループでそれぞれの計画を立てて取り組みを進めています。それぞれのワーキンググループには関心を持って参加する人や、業界での動向を知りたいということで参加される方もいます。

先程ご紹介した3つの取り組みがスタートしていますが、各ワーキンググループに参加したいということであれば、各グループのリーダーと話をしてみて現在のスキルに合った取り組みを探してみて欲しいと思います。新しく参加される方については、歓迎しています。

グループ参加に興味がある場合は、フルタイムでプログラムマネージャーを務めているSin-Kuen Hawkin氏に連絡を取っていただければ、グループ内に繋いでいただきボランティアとして参加することができます。私は別にフルタイムの仕事と掛け持ちでIEEEに関わっています。私はIEEEの活動に社会へ新しい影響を与えることを目的に熱意を持って取り組んでいます。

私たちは素晴らしい技術を持っていて、新しいことに挑戦することを目的に活動しています。グループメンバーと協力して、新しいテクノロジーによって生み出される価値に向けて、参加者の専門性を持ち寄って取り組んでいます。異なる領域で活動しているメンバーが集まっているので、それぞれの専門性を連携させていくことが大切です。

異なる専門性を持ち寄って新しい変化を見据えた取り組みを推進しています。グループ内では、技術要素についてドキュメントにまとめたり、ドキュメント作成の計画を設計したりしています。

1年目は私たちが主催の小規模のイベントを実施したことに加えて、世界中で開催されているイベントにも参加しました。今年の末には新しい動きを記念して、カンファレンスの開催を企画しています。

これからイニシアティブが目指しているのは、新しいメンバーを迎えた活動を進めていくことも考えているので、気になる方はウェブサイトから情報を確認してみてください。 https://digitalprivacy.ieee.org/

現在グループに参加してくれている人たちは、それぞれ異なった専門性を持ち活動に貢献してくれています。私たちは参加者の考え方や専門性からアドバイスを頂きながら、今後の方向性について取りまとめていきます。既に様々な分野から素晴らしいメンバーに参加いただいています。

現在の活動をより活性化させていくためには、これまでの2年間中心となって活動していた米国や欧州だけでなく、日本やアジアの国々からもグループに参加してほしいと考えています。

Kohei: グループの活動を紹介いただきありがとうございます。多様な考え方や異なる経験をした人たちが一緒に議論し、標準化に向けて既存産業で活動している方々と連携して新しい取り組みを推進していくことは大切だと思います。

最後に視聴者の方に向けたメッセージをお願いしてもよろしいでしょうか?クリスさんは幅広いご経験をされ、IEEEでは新しい取り組みも推進されていると思います。ブロックチェーンのような新しい分野では、まだまだプライバシーとテクノロジーの連携について議論は進んでいないと思います。

新しいテクノロジーを推進していくために必要なこと

クリスさんの取り組みは新しいテクノロジーの普及を目指す上で非常に重要な活動だと思います。これまでのクリスさんの経験から視聴者の方へメッセージをお願い致します。

Chris: 今後ブロックチェーンとプライバシーは重要なテーマになっていくと思います。インタビューの冒頭でお話ししたように、信頼を流通させることがブロックチェーンの魅力だからです。データ流通の中で信頼を構築することができれば、より幅広くデータ活用を進めていくことができます。

公共空間か私的空間かどちらかでデータが流通する際に、信頼を確認し維持することが大切になります。そういった信頼できる環境をブロックチェーンを利用することで、ワンストップで実現できるのです。

これまでに何年もの年月をかけて、暗号化技術の開発にも我々は取り組んできました。古代ローマ時代にはカエサルが用いたシーザー暗号と呼ばれるものがありました。過去の歴史から70年代までにはコンセプトは大きく変わることなく、暗号化について議論が行われてきました。

    (動画:【シーザー暗号】夏休みの自由研究にどうぞー!)

2000年代後半までには大きな進展がありませんでしたが、それ以降ブロックチェーン上で信頼を実現できるような新しいツールがレイヤーごとに開発され、私たちでも利用できるようになりました。まだ一貫したシステムにはなりきれていませんが、点と点を結ぶような技術によって確実に信頼が流通できる社会が生まれ、個人が自ら運営できる環境へと変化してきています。

私はプライバシーがアプリケーションによって実現されると確信しています。音声技術を始めとして、モラル的な正しさが求められる時代へと変化してきている中で、良い方向へと向かっていると考えています。

ポジティブな目的を前提とし、信頼できる仕組みを構築していくことに熱意を持って取り組んでいます。新しいテクノロジーを何百ドルもの仮想通貨マーケットの変動や取引だけで動かすのではなく、安全なシステム環境を実現するために信頼を流通させる機能として活用するのかが重要になると考えています。

Kohei: 貴重な示唆を共有いただきありがとうございます。クリスさんの経験やセキュリティに関する知見は非常に勉強になりました。IEEEデジタルプライバシーの活動により多くの人が参加し、幅広い議論を展開することが大切であると感じました。改めて本日はインタビューにお越しいただきありがとうございました。本日はお話しできてとてもよかったです。

Chris: 本日はインタビューのお時間を頂き、ありがとうございました。

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Interviewer, Translation and Edit 栗原宏平
Headline Image template author  山下夏姫

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