過去(5)

今まで、何度か母さんにいじめの事を訴えてきた。でも「大丈夫だから」と送り出される。正直、
何が大丈夫なのか?と疑問に思う。
毎朝、お腹が痛くなり学校が近くなると腹痛と気持ちも更に暗くなり、ゆいとの会話も途切れてくる。
身体的にも、精神的にも影響が出ている。
思い切って父親に打ち明けてみた。
「お前が悪い!弱いからだ!」と怒鳴られる。
涙が出てくる。すると、更に怒鳴られた。
そりゃそうだ。こんな奴に相談する方が間違っていた。
パチンコ、麻雀、女遊び、母さんへの暴力、借金を勝手にし、自分の都合で突然、人を怒鳴り散らす。
私の事で母さんと父親の喧嘩が始まった。
打ち明けたことに後悔しかなかった。

私が身体的にも限界にきていると分かったのか母さんは担任にやっと相談してくれた。
すぐにクラスで話し合いが行われた。
先生が「山本をいじめた奴は全員立て」
見事に全員が立った。「何故いじめる岡本!」
男子の一人が名指しされる。出てきた言葉は
「面白いから」
「何か理由があるのか?山本が悪いことでもしたのか!!」
それに対しても「何もない」と皆は言う。
ただ「面白いから」と…。
絶句だ!何の言葉も出てこなかった。
出てきたのは悔し涙だけ。
絶対泣かないと決めていたのに…。
どうせクラスのみんなは「面倒くさい」と思っているに違いない。
この勝手な想像が勘違いじゃないと確信できる事が起こった。
数日後のあるお昼休憩、私以外のクラス全員が理科室に入っていき、カーテンを閉め鍵も閉められる。私はまた仲間外れかと思いながら理科室の外にいた。
しばらくすると、みんなが出てくる。
一人の女子が私に近づいて抱きついてきた。
絵美だ。急に何で?頭がパニックだ。他の男子も私に軽く挨拶しながら理科室から出てくる。
何事かと思ったら絵美が言った。
「もも、今までごめんね。もうあんな話し合いになるのも面倒で嫌だし、卒業まであと少しだけだから仲良くしていこうと話し合ったの。これからは友達だよ。」

私は動揺しながらもその言葉をそのまま受け入れてしまったのだ。
当時を思い返すと私は何て馬鹿だったのか!
こんな事が初めてだったとはいえ、ちょっと優しくされた事で嬉しくなってしまった事。
子供だったから仕方なかったのかもしれないけれど、これが私の悪い所である弱さだ。

卒業までの数ヶ月は今までの事が嘘みたいにに穏やかに学校生活は過ごせた。
他のクラスの子達も私が廊下を歩けばドラマを見ているかのようにあっという間に私を避けて通っていたのが普通に通って行く。
小学校卒業と同時に私は前向きな気持ちで
中学校生活を頑張ろうと決意した。






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