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【投資ノウハウ】Appleプライバシー保護強化の打撃そして真の勝者は…

 アップル(AAPL)は、今年4月26日に新しいOS「iOS14.5」をリリースしました。iOS14.5では、多くの機能がアップデートされましたが、もっとも注目されたのが、IDFA(Identifier for Advertisers)取得に関わる変更でした。
 IDFAとは、Appleがユーザーの端末に割り当てるデバイスIDであり、このIDを使うことにより、広告運用者は、ユーザーのトラッキングなどを計測し、有効な広告を打つことができました。いわゆる、ターゲット広告です。
 しかし、iOS14.5からは、広告運用者がIDFAを取得するには、ユーザーの同意が必要になったうえ、初期設定では不許可になっています。この変更は、広告を主な収入とする企業には大きな打撃になると予想されていました。

 今回は、SNS大手などのIT系企業の7-9月期決算が出揃ったことから、iOS14.5のプライバシー保護強化が、どのような影響を与えたかを見ていきます。

影響を大きく受けた企業

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 まず、今回のプライバシー保護強化の影響をもっとも大きく受けたと思われるのが、写真・動画共有アプリ「スナップチャット」を運営するスナップ(SNAP)です。同社は、広告収入などの伸び悩みを受けて、売上高がアナリスト予想に届かなったうえ、10-12月期の売上高見通しでも、伸び率が低下するとの見通しを示したことから、決算発表後、株価は約28%の暴落となりました。

 同じく決算にプライバシー保護強化が影を落としたのが、メタ・プラットフォームズ(FB)(旧Facebook)でした。同社は、売上高が前年同期比33%増の290億1000万ドルとなったものの、アナリスト予想には届かなったうえ、広告収入も予想を下回る内容となりました。決算会見でザッカーバーグCEO(最高経営責任者)は、「7-9月期、Facebookに逆風が吹いた、これはAppleのiOSの変更による悪影響だ」と述べています。

影響が軽微だった企業

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 Appleのプライバシー保護強化の影響が少なかった企業の代表格は、グーグルの持ち株会社アルファベット(GOOGL)です。同社にとっては、むしろ追い風となった可能性もあります。同社の7-9月期の純利益は前年同期比68%増の189億3600万ドルとなり、四半期ベースで最高益を記録しました。
 アルファベットは、動画共有サービスのYouTubeをはじめ、スマートフォンのPixelなど収益の多様化が進んでいるうえ、スマートフォンOSのandroidを持っています。このため独自に集積できる情報が多いうえ、広告事業もターゲット型よりもネット検索のキーワードを使ったものの比重が高いとみられます。このため、Appleのプライバシー保護強化の影響を受けにくかったようです。
 また、iOS14.5により、広告精度が低くなったことから、他社からグーグルへ広告を乗り換える企業もみられたようです。

 ツイッター(TWTR)もプライバシー保護強化の影響が少なかった企業の一つです。同社も収入の多くを広告収入で賄っていますが、7-9月期決算では、広告収入が前年同期比41%増の11億4000万ドルと好調な内容でした。アナリスト予想ともほぼ一致しています。
 同社のシーガルCFO(最高財務責任者)は、一部報道機関のインタビューで「他社ほど売上高がターゲット型広告に連動していない」と述べています。

 このようにAppleのプライバシー保護強化の影響が少なかった企業は、ターゲット広告の比重が低い企業やアルファベットのように独自のOSを持っている企業のようです。

本当の勝者は?

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 Appleのプライバシー保護強化は、トラッキングをできなくすることから、ターゲット広告の収入をメインとするアプリ運営企業に大きなダメージを与えた一方で、Appleにのみデータが蓄積される結果となります。これでは、Appleの一人勝ちのようにみえます。

 しかし、このことが、巨大ECサイトを持つアマゾン(AMZN)の広告価値を高めているようです。
 Amazonは、今年4月にプライム会員が全世界で2億人を超えたことを発表しました。ユーザーがiPhoneでのAmazonアプリのトラッキングを拒否しても、同社の持つ膨大な顧客の消費行動や嗜好データには、大きな影響は出ないでしょう。
 ターゲット広告の精度が下がる中、Amazonの持つ顧客データの価値が相対的に高まっています。同社の7-9月期決算をみても、広告を含むその他収入が前年同期比50%増となっており、Amazonへの広告出稿が増加しています。Appleのプライバシー保護強化が、Amazonやアルファベットの広告事業拡大につながっているようです。

記事作成:2021年11月17日

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佐藤隆司(ライタープロフィール)

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佐藤 隆司(さとう りゅうじ)

 米大卒業後、金融・投資全般の情報ベンダー、株式会社ゼネックス(のちの株式会社オーバルネクスト)入社。原油、貴金属、天然ゴムなど工業品を中心としたアナリスト活動を経て、金融市場全般の分析を担当。
 2010年、エイチスクエア株式会社を設立し、セミナー講師、アナリストリポートを執筆する。また、「FOREX NOTE 為替手帳」、「チャートの鬼・改」などの企画・出版も行う傍ら、ラジオ日経「ザ・マネー」の月曜キャスターも務める。

資格
「国際テクニカルアナリスト連盟 認定テクニカルアナリスト」

メディア情報
・ザ・マネー 月曜日キャスター
・「夜トレ」(ラジオ日経)、「昼エキスプレス」(日経CNBC)など出演

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