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98歳の大切なお友だちのお話

私には98歳のお友だちがいます。

血はつながっていませんし、年は70歳差 (!)ですが
私にとって大切な大切なお友だち。

”いしいおばあちゃん”と呼んでいます。
今日は少しだけ、このおばあちゃんのお話をさせてください。

出会い

いしいおばあちゃんとの出会いは、約1年前、私が結婚して初めて実家を出たときのこと。

1LDKの小さなアパートを借りて夫と暮らし始めたのですが、初日にお向かいの一軒家のお宅に手土産をもって挨拶に伺いました。

その時はたまたま息子さんが出られて、おばあちゃんとはお会いできなかったのですが、

後日我が家のインターホンが鳴ります。

ドアを開けると、優しい顔をしたおばあちゃんが、おかずを持って立っておられるではありませんか。

おむかいの一軒家に住む、いしいおばあちゃん (98) でした。

その日から、私とおばあちゃんの交流は始まりました。

おばあちゃんは2、3日に一度、夕方になると美味しいおかずやお菓子を持ってきてくれました。

当時(今もですが)私はリモートワークが中心で、一日中人と会わないことは日常茶飯事。そんなときおばあちゃんとのさりげない会話や美味しいおかずに何度癒されたか分かりません。

もらったものと言えば・・

年間を通して:ひじきの煮物や炊き込みご飯、きんぴらごぼう、野菜カレー。

夏:おばあちゃんの庭でゴーヤーがたくさんとれるので、生ゴーヤー、つくだ煮ゴーヤー、ゴーヤーチャンプルとゴーヤー祭り。

秋:ぎんなんや栗ご飯、かぼちゃの煮物、さつまいもの煮物。

などなど。

いしいおばあちゃんが私にくれたのは、食べ物だけではありません。
人生で大切にすべきことも、たくさん教えてもらいました。

とはいっても、おばあちゃんは決して「こうするといいよ」と説教をしません。

ただ私は、彼女の生き方、立ち振る舞い、私とのかかわり方、全てから多くのことを学ばせていただいたのでした。

例えばこんなことです。

・相手への気遣い

おばあちゃんは、いつも「ごはんをもってくる頻度が多すぎてもよくないからどれくらいにしようかな」と気にしてくれていました(私は毎日ウェルカムなのですが!)。訪ねる時間も、必ず仕事が終わるころを見計らってくれます。立ち話も長すぎないように気を付けている様子でした(でもお互い波長が合うのでついつい長い時間を一緒に過ごしましたが)。

・とにかくGive!Give!

私の家だけでなく、お世話になっている近所の人にとにかくいろいろなものを配っていました。そして「もらってばっかりでごめん、今度お礼持ってくるね」というと、お礼なんていらないのよと必ず怒られました。おばあちゃんいわく ”私はこうやって人生を生きてきた。だからか、いまとてもハッピーなの!"  だそうです。

・いつも笑顔、ハッピー

「勇気!やる気!元気!」と言いながらいつも満面の笑顔を見せてくれるおばあちゃん。暑い日も寒い日も、晴れの日も雨の日も、おばあちゃんはいつも笑顔です。そして私も笑顔になります。口癖は「やったー!」「うれしい!」。その口癖は私にもうつり、こっちまで嬉しくなる。だから私は、今日もおばあちゃんに会いたくなるのです。

引っ越し、そして再会

そんな優しい優しいおばあちゃんはすっかり私の生活の一部となり、しばらくたったある日。

私は引っ越しの決断をします。というのも、当時住んでいた場所は保育園激戦区であることが発覚したのです。まだ私たちに子供はいませんでしたが、将来のことを考えると新しい場所に移動しておきたいと思いました。

引っ越しを決めた時まず最初に思い浮かんだのは、いしいおばあちゃんのこと。悲しむかな。私もさみしい。やっぱりもう少しここにいようかな。

迷った末、引っ越しを決意。

おばあちゃんに伝えると最初はひどくショックを受けていました(倒れないか心配なほどに。笑)

でもおばあちゃんはすぐに、「引き止めちゃいけない。空はつながっている」としゃきっと遠くを見つめます。

そしてまた、いつもの満面の笑顔を私に向けてくれました。

この人はなんとすごい人なんだろう。

自分が100歳近くなって、こんな素敵なおばあちゃんになれるんでしょうか?普通はこんなさわやかにはなれないような。

引っ越しの日。おばあちゃんは大量のサクランボをくれて、お別れしました。

そして季節は移り変わり、すっかり日が短くなってきた秋の日のこと。

私は仕事やら家事やらでばたばたしながらも、おばあちゃんのことをずっと思い出していました。

特に、おばあちゃんがよくインターホンを鳴らしてくれていた夕方18時ころになると、"元気かなあ"と思うのでした。

そして引っ越しから4か月あったある日、私は、いしいおばあちゃんに会いに行くことを決意します。

コトコトと電車に30分乗り、懐かしい道を歩き、ドキドキしながらおばあちゃんちのピンポンを押して。

おばあちゃんは最初誰だか分からなかったみたいです。

でも一生懸命手を振って私だよというとすぐわかってくれました。
すごく喜んでくれ、そこから30分ほど、お互いの近況を話しました。

引っ越しの日にサクランボをくれたことも鮮明に覚えているし、驚異の記憶力のおばあちゃん。私は自分と同世代の友達と話しているような感覚で、おばあちゃんとたくさんたわいもない話をし、笑いあいました。

おばあちゃんによれば、ときどき私の住んでいた向かいの家を見ては「いまあの子は遠くに出かけている」と思うようにしていた、というのです。

涙が出るかと思いました。

そして別れ際、電話番号を交換し(古風ですね)、ゴーヤーの佃煮をもらい、帰宅。

心がこんなに満たされたのは久しぶりだと思いながら、懐かしい道をうきうきと歩いて帰りました。

パウンドケーキを焼く

そして今、私はパウンドケーキを焼いています。

お菓子作りなんてめったにやらないのですが、今回は明確な目的があります。
いしいおばあちゃんにプレゼントするのです。

というのも先ほど、携帯におばあちゃんから電話が入っていました。
出られなかったので慌てて折り返すと

「ぎんなんがいっぱいあるんだよ~。いつ来るかなあと思って。電話がつながったってことは、この番号あってるんだねぇ~」

懐かしいおばあちゃんの声です。明日取りに行くよ、と伝えると

「うれしい!うれしいがいっぱいだよ!」

と明るい声で返事が返ってきました。

だからいま、私はそんなおばあちゃんを喜ばせたくてパウンドケーキを焼いています。

おばあちゃんはかたいものが食べられないから、やわらかくてしっとりしたものに。
もうすぐハロウィンだから、カボチャ入り🎃

喜んでくれるといいな。
私の友達の中でも、今最も頻繁にあっている人。98歳のいしいおばあちゃん。

いつまでも元気でいてね。
………..

あなたにとって大切な人はどんな人ですか?

ここまで読んでいただいて、ありがとうございました。




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