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ゲンジツなど見ないと決めた場所

29年半ぶりに大山山頂に立った。高2の大晦日、友人たちと伊勢原の同級生宅に押しかけた。ノリで大山阿夫利神社で初詣することになり、6人ぐらいで向かった。

とても寒く、さっさと帰ろうと皆が言い始めた時、僕と親友の長崎ちゃんぽん氏が、大山に登ろうと騒いだ。バカ言うなという返事。俺たちは登るぞ、待ってろと言い捨て、2人で登り始めた。

完全な暗闇だった。3分もしないうちに帰りたくなったが、懐中電灯を持つ人たちの灯りのおこぼれをもらいながら突き進んだ。何度滑って転んだか分からない。ドロドロになった。思ったより大変で、初日の出の時間にギリギリ間に合った。

下にいた時からにわか雨で、山頂付近は霧で覆われていた。景色はほとんど見えず、初日の出もボンヤリとしていた。

山頂でちゃんぽん氏、突然「慶応大学に進学する」宣言。キミ、500人中495番じゃないか。大学進学とか興味ないかと思ってたよ。いやいや、慶応ってカッコよくない?先生に言ったらなに言ってんのと言われるから言わないけど。
学校における進路指導は、「ゲンジツを見る」ことから始めさせられる。偏差値とか、我が校の実績とか。ほとんどの人はそれに従う。だってそれがゲンジツだから。

そう言うの、さっくり無視したいと思っていた。自分の好きなようにさせてくれよと。進路指導や面談は、好きじゃない、というか意味がないと思っていた。

ちゃんぽん氏は、あっさりそれを乗り越えていた。それを聞き、僕も山頂で、京大に行くという「夢」を「現実」にしようと決めた。案の定、年明けに進路指導の先生から、シドウが入ったが、志望校を絶対変えない旨を宣告した。僕らの高校では、京大に受かるとか受からないとかでなく、受験するひとがほぼいなかったというのがゲンジツらしかったので。

結果、僕は一回、ちゃんぽんは二回落ちた後、志望校に合格した。人生のターニングポイントらしき事件はいくつかあるが、他人の「ありえない」を跳ね除けた最初の出発点が大山の山頂だった。

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パクチー(P)コワーキング(C)ランニング(R)を愛する、PCR+ な旅人です。 鋸南(千葉県安房郡)と東京(主に世田谷と有楽町)を行き来しています。