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【絵本日記】かにすま美容師

ちょき、ちょき、ちょき
ちょき、ちょき、ちょき

かにさんは、村一番の美容師さん。
どんなに、むずかしいおねがいも、
おちゃのこさいさい。

本日さいしょのお客さまは、
くせ毛の強いねこさん。

「いらっしゃい!」
「このクルクルの毛を、ペルシャねこのように、サラサラにしてほしいの。きょう実はデートで」
「おまかせあれ!」

ちょき、ちょき、ちょき。
ちょき、ちょき、ちょき。

「いかが?」

かにさんが、両手にかがみをもって、
ねこさんに見せた。
クルクルの毛はサラサラのまっすぐな毛に。
ゴワゴワの毛もフワフワに。

「わぉ!ありがと。すてきだわ」
「まいどあり!いってらっしゃい!」


次のおきゃくさまは、しろくまさん。

「いらっしゃい!」
「おねがい!ぱんだにしてくれ!」
「おまかせあれ!」

ちょき、ちょき、ちょき。
ちょき、ちょき、ちょき。

「いかが?」

かがみの中には、黒と白の毛がまざった、
おおきなくまさん。まさに、ぱんだそのもの!

「ぱんだだ!ぱんだになった!ぱんだみたいに
 人気者になりたかったんだぁ。
 これで人気者になれるかな?」
「どうでしょ?」
「かにさん、ひどいよ。
 なんで、そんなこと言うの?」
「見た目をかえても心まではかえられない。
 背中をおすことはできても、
 一歩をふみだすのは、あなた次第ですから!」

しばらく考え込んだあと、
しろくまさんは言った。

「……どうしたらいいかな?」
「まずは、10歩以内にいるともだちに、
「おはよう」と「ありがとう」を
 伝えることから、はじめてみては?」
「わかった。やってみる!」

しろくまさんは、立ちあがりお店から
出ようとした。

「あ、かにさん」
「なんでしょ?」
「おはよう。きょうは、ありがとう」
「おはよ。まいどあり!」

しろくまさんは、スキップをしながら
かえっていく。
カニさんは、ハサミをチョキチョキと
ならしながら、しろくまさんの背中が
見えなくなるまで見送りつづけた。

「行ってらっしゃい〜!
 すてきなあなたに、出会えますように!!」


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