【#8】幸せになるにも勇気が必要なんだ。
先日呼んだ『嫌われる勇気』に続いて、『幸せになる勇気』を読んだ。こちらの本は、より教育に近い本だった。
何しろ、アドラー心理学に精通する老人にかみつく青年は中学校の教員という立場になっているのだ。
なぜこの本を読もうと思ったか
『幸せになる勇気』は先日読書録を書いた『嫌われる勇気』のシリーズの第二作だ。それを読んで、僕はアドラーの考え方が率直に好きだと感じた。そして、そのような考え方ができたら、この先の人生が明るくなるだろうと思った。
アドラー思想は本を読めば理解はできる。哲学や心理学にありがちな難しいカタカナ言葉や専門用語が一切出てこないからだ。中学生や高校生くらいならすいすい読み進められるだろう。
だが、それを実際の自分の行動に置き換えるのは何とも難しいのだ。現に、アドラー心理学の専門家は、アドラーの考えを飲み込んでライフスタイルを変えるには、それまで生きてきた人生の半分の時間が必要だとさえ言っている。
それだけ、「勇気」を持つのは難しいことなのだ。だから、まずは『嫌われる勇気』以外にもアドラー関連の本を読みたいと考えて、『幸せになる勇気』も読むことにした。
教育の目的は自立である
横のつながり
教育の目的は「自立の援助」なのだそうだ。具体的には何をすればいいのか。アドラーによると、尊敬することだ。
尊敬とは、その人をその人のありのまま受け入れる態度のことだ。その人の存在そのものを認めて接する。
だから、上の立場の人が下の立場の人に対して行う「褒める」や「叱る」という行為は、アドラー心理学においてはすべき行為ではない。
教師であろうと生徒であろうと。上司であろうと部下であろうと、縦の関係ではなく、横の関係で相手と接する必要がある。アドラーの言葉で言えば、交友の関係でつながるということだ。
相手の関心事に関心を寄せる
相手に共感するには、相手の関心事に自分も関心を持つことが重要だそうだ。「相手の目で見て、相手の耳で聞き、相手の心で考える。」これは子育てにも通ずる話だと思う。
こういった他者の関心は、自分の心次第で持つことができる。そして、共感・他者への関心・尊敬の態度は、すべて伝染するものだという。
だから、教室であればまずは教師がその態度をもって過ごすことが求められるのだ。
自立の援助とは?
この部分はこの本を読んでいて最も大事だと思ったところかもしれない。何重にも線を引いた。
教育者のあるべき姿、役割は、「自分の人生は、日々の行いは、すべて自分で決定するものなのだと教えること。そして、決めるにあたって必要な材料―例えば知識や経験など―があれば、それを提供していくこと」なのだ。
自立教育と放置の大きな違いはここで明らかだろう。ただ放っておくのではなく、自立に必要な材料は共有しなければいけないのだ。
「先生のおかげで○○できました」と言わせる教育者は本当の意味での教育に失敗している。こう書かれているのを見て、僕は真の教育者とはなんと孤独なものだろうかと思った。
「いやいや、それは君が頑張ったからだよ」と口で入っていても、「先生のおかげで」という言葉が大きなパワーをくれることは間違いない。それまでの苦労が報われる思いだろう。
本当にあるべき姿は、生徒から感謝を期待売るのではなく、「自立」という大きな目標に自分が貢献できたという自己貢献感に幸せを見出すことなのだ。
自立とは愛である
大きく分けて本の前半と後半で、話は教育論から人生論に移る。アドラーはすべてを対人関係の問題として考える。仕事のことであっても全てをだ。
だから人生の最大イベントである結婚、人を愛することについても詳しく書かれている。
人を愛するということはとてつもなく難しいことだ。『幸せになる勇気』では、自立=愛であると書いている。
愛するというのは愛されることよりも難しい。この部分はかなり納得した。ここ数年の自分が思っていることにガッチリあてはまるのだ。
誰しもが生まれた時には、愛を与えてもらいながら大きくなる。人はそのまま、愛をもらうライフスタイルで育つ。
そこから、「愛する」という能動的な営みができるようになった時、人は晴れて自立したと言えるのだ。
人を無条件に信じ、尊敬し、愛することができて初めて自立できる。経済的な自立や様々な意味での自立があるが、人間が最終的にしなければいけない本当の自立は、人生の主語を「わたし」から「わたしたち」にすることができて初めて達成されるものなのだ。
この本をオススメしたい人
教育者の立場の人
教育者という言葉の指す意味は広い。捉え方によっては誰もが教育者かもしれない。自分が教育者だと思う人には、オススメしたい。
人を好きになれない人
なんだか自分は人を好きになれない。将来独り身なのではないだろうか?
なんとなくそんな不安を抱えている人にもオススメしたい。もちろん、恋愛だけでなく広い意味で人を信じられない人、対人関係が上手くいかない人にもぜひ読んでいただきたい。
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