見出し画像

3分でわかる『言語の本質(今井むつみ著)』AI好きの必読書!

こんにちは、パトルです。

Newspicks(ウィークリー落合)や様々なメディアでも取り上げられている、ベストセラー『言語の本質』(2023年5月発売)についてまとめていきます。


本書が注目されている理由

pixabay

なぜこの本が注目されているかというと、ChatGPTなどAIが言語を操れるようになったのと、人間が言語を操れることの本質的な違いに興味をもつ人が多いからだと思っています。

本書の序盤はオノマトペ(主に赤ちゃんへ使う擬態語)についての解説が長いので途中で飽きて挫折した人も多いかもしれませんが、オノマトペについては大体理解していれば問題ないのでサラっと終わらせます。

オノマトペとは何か

pixabay

「ふわふわ」浮く、「べちょっと」付く、のような擬態語のことです。子供向けに使われることも多い表現です。日本人にとって日本のオノマトペは感覚的にイメージが湧きやすいもののですが、外国語のオノマトペを聞いても日本人には理解できないことが多いです。それは言語によってどの感覚に注目してオノマトペ化するかが違うことも一因です。

オノマトペが重要な理由

オノマトペは、直感的にわかりやすい表現で意味を伝えることができます。それによって赤ちゃんは、言葉の意味はもちろん、そもそも物や様態には名前があること、名前がどのような規則でつけられているかを学ぶことができます。つまり、人間はオノマトペによって直感的にわかりやすい表現を通じて言語を知覚していきます。

言語の身体性

人間が抽象的な言語を操ることができるのは、オノマトペによって言語を理解できる素養を身につけたからです。実際に体験していないことも知っていることとの対比などで理解していくことができます。新しく学んだことを活かして更に新しいことを学んでいくことができます。しかし、一番最初は自分の感覚に接地して理解した言葉(=オノマトペ)がなければ知識を拡げていくきっかけをもつことができません。

pixabay

感覚に接地していることを「記号接地(シンボルグラウンディング)」といいます。また、記号接地によってそれ以降の知識が連鎖的に理解できるようになることを、ブーツの紐を引っ張ると靴ひもが閉まることを模して「ブートストラッピング」といいます。記号接地という言葉はAIの世界でよく使われます。AIが言語を学習することは記号接地を経ていないためAIは言語を理解しているといえるのかという文脈で使われます。記号接地を経ていないのにまるで理解しているようにAIが振る舞うことを「記号から記号へのメリーゴーランド」といいます(地面に足がつかずにぐるぐる回っている)。ここであえて専門用語を記載したのは、この本の核となる用語なので覚えた方が良いためです。

なぜ人間だけが言葉を操れるのか

pixabay

感覚とオノマトペが繋がれば記号接地できるのであれば、他の動物でも言語を操れそうです。犬は人間の言葉が一部わかりますが(お手とか)高度に言語を習得することはできません。その理由は、人間には推論をできる能力があるからです。たとえば、粗茶の粗は、お客様に出すものにつけるものだと教わったら、猫をお客様へ紹介するときは、粗猫というのではないかと推論することです。これをアブダクション推論といいます。アブダクション推論は人間しかできません。(例外的な天才猿もいるようです)

人間の推論は間違えることが前提

pixabay

前述した粗猫の例もそうですが、アブダクション推論は間違えることがあります。アブダクション推論は、確実な答えを導くものではなく仮説や推理です。人間は、赤と言われたら四角、青と言われたら三角を選ぶように教えられた時、四角と言われたら赤を指すことだとわかりますが、人間以外の動物はわかりません。厳密には、赤ゆえに四角、が成り立ったとしても、四角ゆえに赤、が成り立つとは限りません(たとえば、車を運転できる人は大人、が成り立っても、大人は車を運転できる、とは言い切れない)。人間は、このバイアスのような推論(対称性推論)を行ってしまいますが、これによってアブダクション推論を可能にしてます。そしてアブダクション推論によって仮説を立てて知識を膨らめていくことができるのです。

まとめ&感想

私にも小さな子供がいますが、絵本にはオノマトペが多すぎて逆に意味がわかりづらいと思うことがありました。オノマトペが記号接地を促進して、言語理解を深めることに繋がるというのは嬉しい発見でした。

一方、AIという視点では、本書を読んでも、AIが言語を理解できているのか、それはなぜなのかという点が解明されているわけではありませんでした。私もChatGPTにアブダクション推論の問いかけてみましたが、見事に返してきました。

この部分で面白い解釈を行っている科学者がいたので紹介します。動物が対称性推論(逆向きの論理が成り立つと思いこむこと)を行わず、人間が行うことができるのは脳のプログラミングが違うからだと仮説を立てています。

※最初から見た方がわかりますが大体7分くらいから本題に入ります。

動物はシーケンス処理だけど、人間はオブジェクト指向であるという仮説です。ただ、この動画は技術者向けで少し難しいです。オブジェクト指向とかがなんとなくわかる方は参考にして頂ければと思います。

(追記)『言語の本質』の編集者様から本ブログにお褒めの投稿を頂きました!

参考になったら、いいね!かフォローをお願いします!




この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?