欲しいものは欲しいっていいなよ。

　大学3年生だった私が考えていたこと。

　「社会に、誰に、何を届けたいのか
誰に何をしたいのか
どんな世界にしたいか
どんな人生を歩みたいか
どんな死に方をしたいか」

　そう問われた時、20〜21歳だった私は

「50年後、ああ楽しい毎日だと、
隣に愛する人がいて、
毎日笑って、身体動かして、
やりたいことを思う存分楽しんで
世界が少し平和になっていて、
お友達と女子会して、
楽しいことに挑戦して生きたい。
死ぬとき、
もう少しだけ生きたかったなって
ちょっと後悔しながら、ああ楽しかったって笑って死にたい
　そんな幸せを感じる世の中にしたい。
自分と自分の隣の人が幸せになる世の中にしたい」

　そう答えていた。

　私の、自己紹介などに記載する

「自分と、
自分の隣にいてくれる人を
幸せにする社会にする」

は、この、大学3年の時の言葉からきたのだと思い出した。

　私は今、幸せ、なんだろうか。

　幸せって、何を持って幸せって言うのだろうなんて、ティーンエイジャーよろしく探しに行くような年齢じゃなくなったというか、幸せ探しをしたいとか思わない。

　あえて言うなら幸せは、日常の中で自分で感じ取るものだって感じだけど、最近はむしろ、幸せって、何かを失った時に気づくってことは、「そこに無意識に、当たり前に存在しているもの」って感じかもね。

　だから感じるのが難しい。だって今無意識に存在していて当たり前のものを、
今の今の自分がそれが稀有なものだとか、貴重なものだと気づくことは難しいでしょう。それって、離見の感覚が必要だよね、

　あらゆる方向から自分を見るためには、
自分から離れる必要があって、メタ認知が必要。

　ドラゴン桜にも、こんなことを桜木先生が言うシーンあったわね、（今期のは観てないけれど）

　「自分を客観視するとは自分の状態を冷静に把握すること。そのために必要なのは焦っている自分や緊張している自分とも、しっかり向き合うこと。」

「自分の気持ちを言葉にすることは、自分を対象化してとらえるということだ。そうすることで自然と自分を客観視できるようになり、結果的に焦りや緊張を解きほぐせる。」

　それに、思い返せば昨年末に
読んでいた、システマの考えをわかりやすくした本『人生は楽しいかい？』にも、こういうこと書いてあった。

　さて、21歳の私が書いた50年後。

私は今のままで生きて、71歳のとき、

ああ、楽しい毎日だったと、
隣に愛する人がいて、
毎日笑って挑戦して生きているだろうか。

　いやその前に、今のままだと
71歳になる前に餓死してしまう。

　そうならないために、だけれども
自分が無理しすぎないために、
ちゃんと楽しく豊かに人生を送れるように
今一度、自分と自分の隣にいてくれる人を幸せにする社会にする、という意味を考え直すべきだと思った。

　私は自分と、隣にいてくれる人を疎かにしたから過労になった。自分と、隣にいてくれる人の幸せが何かを考える余裕をなくしたから人付き合いに困っていた。自分と、隣にいてくれる人を幸せにすることを考えられなくなっていったから今ここに失ったものがある。

　けれど、その失ったものの反対に得たものがあって、今からでも、ちゃんと幸せを歩み直せるなら、私はやはり、まずは自分を大切にして、自分自身で幸せになる努力から始めなければならない。

　たぶん、そうなると、夜神くんのことを引きずっている場合じゃない。

　そう思ったけれど、残念ながら、
あんなに忘れないと思っていた
夜神くんの匂い、私最近もうわからないの。あんなに忘れないと思っていた夜神くんの手の感触も、たまに顔も出てこなくなっちゃうの。

　それだけ前に進んだということなのか、わからないけれど。

　夏生さえりさんの短歌にいくつか、
とてもとても好きなものがある。

どうしてあんなことできたのかしら。
過去の自分は他人のようで

振られたら傷つくんだと思ってた。
　振ったときより清々しいのね

　また、もうすぐ夜神くんと出会った季節が来て、私はその時やっぱりそれを思い出す。未だ過去の思い出をたぶん、抱きしめる。

　けれど、夜神くんは、私の隣にはいてくれなかった、付き合う前から付き合っている時も別れた後も。

　それをわかっていてなお
手放せないのは、結局、彼から嫌いを
もらわなかったから。別れようを
もらわなかったから。わたし、言われないといつまでも理解できないみたい。

　今度会うときにはもっと素敵な人間になって自立しておきたいけれど、私の足には今も未だ過去が絡み付いていて全然うまく歩けない。

　50年後どころか、死ぬ時どころか
明日すら見えない27歳だよ。

　こんな大人に、なるはずじゃなかったね。確かにそうだ。

　でも、私は、歩んできた道に後悔していないよ。ちゃんとその時々の自分が、その時々に欲しいものを選んできたから。

　だから、今だって迷うけど、その時の欲しいものや直感を信じて、選んでいけば良いんだと思う。それで言うと私はやっぱり、夜神くんに逢いたい。ちゃんと話がしたいし聞きたいし。でも、無理なものは無理なのかなあ。

　そうだ、いつだってその時欲しいものを、言いたいことを我慢したら結局、後悔して割り切れなくてこんなんだから、これからだって、自分の心に本当に欲しいものをちゃんと問うて生きていこうと思う。

　今は、1日が50時間くらい欲しいけれど。残念ながら、今の世の中の仕組みで生きていくには、24時間しかないみたいだから。

　何を諦めるのか、毎日考えないとね。私、ぼーっとする時間や、本当に体も頭も休める寝る時間がたっぷり必要な人間だし。

　好きだから相手も好きになってくれるとかそんなことばかりじゃないけど、好きなら好きって言いなよ、

　ってたまに思う、失恋した後にね。でも、失うのが怖い気持ちもちゃんとわかるの。傷つくのも失うのも怖いことだよ。

　それでも、何も行動しなかった時より
行動してダメだった時の方が、未だ立ち直れるし前に進めるのは、やっぱりあるから、

　欲しいって言ったからって与えられるわけじゃないし、得られるわけじゃないけど、欲しいものは欲しいって言いなよ。

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