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③クー・フリン&ロイグ主従が大活躍!アルスター伝説「ゴルとガーブの壮絶なる死」

アイルランド伝承「ゴルとガーブの壮絶なる死」の訳つづき。添削済みですが、気になるところを指摘していただけると土下座して喜びます。

元文はこちら

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「さて、ロイグ」クー・フリンは言いました。「馬に鞭を打って走らせてくれ」

「どちらへ行くんです?」尋ねるロイグに、クー・フリンは答えます。

「偉大なるエウィン・ウァハへさ」

「僕があなたなら、ダンドークとフォルガルの娘(※1)から離れませんけどね」

「どうしたんだ、ロイグ? 今日の夜明けに我らが王、コノールが言ったことを聞いていなかったのか?」

「コノールはあなたを愛していないのです。あなたが彼の領土のために戦い、格闘すること以外には。あなたがいようがいまいが、どちらでも構わないのですよ」

「お前の言うことが真実なら」クー・フリンは言いました。「俺は1年間、ウラドの領土よりも遠くへ追放され、ウラドの民は俺から何の益も得ることができないだろう。だがもし虚言であるなら、お前は追放され、我がしもべではなくなるぞ。御者を殺すのは、俺にとって不名誉なことだからな」

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さてここで、クー・フリンの様子ではなく、クアルンゲから来たグレオ・グラスの息子コナルについてお話しましょう。彼は百人の奴隷と百匹の家畜を有する、もてなし役でありました。

ある夜明けのこと、彼は黄色いマント、赤いマント、緑や青のマント、紫や黒のマントをなびかせた50台の戦車3部隊と共に、エウィン・ウァハへ向かいました。

エウィンを囲む王家の砦のルバ(※2)には、コノール王が座っていました。その周りにはウラドの貴族たちもいます。


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「ようこそ、ようこそ」コンホヴァルは彼らを迎えて言いました。「おおコナル、グレオ・ グラスの子よ!」

「歓迎こそ我らが参った次第にございます」コナルは言いました。

「だから歓迎しているのだよ」コンホヴァルも返しました。

「違うのです」コナルは続けます。「実は私のほうが、あなた様のために素晴らしく華やかな宴をご用意したのです」

「それはぜひ共にさせてもらおう」コノールは言いました。「何人で行けばよろしいかな?」

「ウラドの男たち、女たち、男子も女子も、あなた様が望むように」コナルは言いました。「もしもウラドの民、生者と死者が一堂に会したとしても、クアルンゲのダン・コルパでゆうに1年間は過ごせる十分な蓄えがございます」


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コノールは言いました。「ウラドの者たちよ、さあ馬に馬具を付けよ。戦車につなげるのだ」

こうして、ウラドの馬は馬具を付けられ、戦車につながれました。そしてウラドの貴族たちがやってきて、アイルランドのほとんど5分の1ほどの大群衆となりました。

王の息子や王子たち、戦士たちに若き領主と、彼らの領土のすばしこく血色の良い若い召使いたちや若者たち。ウラドの可愛らしい巻き毛の女たち、女子に未婚の女に青二才、友人たちや従者たち、ウラドを称える歌や詩を作る音楽家や吟遊詩人たち、歴史家や裁判人、伝令や曲芸師や使用人、道化師に東西屋までもが来たのです。彼らは同時にエウィンの外へ出かけていきました。


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全ウラド人が、コノールの行く後に続きました。

コナルは言いました。「あなた様に二つの道の選択肢を与えましょう、エリンの5分の1の王よ」

「二つの道とは?」コノールは尋ねます。

「平坦だが長い道、あるいは短いが険しい道」

「短く険しい道を選ぼう」コノールは答えました。「日がほとんど肩を過ぎてしまったからな」

「実のところ、短い道は険しくないのです」コナルは言いました。「グレン・リゲ(※3)のガーブ(荒いの意)を除いては」

「我々が行こうとしているのはグレン・リゲではない」コノールは言い返しました。「スリアヴ・フアド山はすぐそこなのだぞ。グレン・リゲのガーブとやらのために、我が道をあきらめるものか」


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ガーブは戦車の轟音を聞くまで、集団が道を通り過ぎるのに気が付きませんでした。ようやく彼らに気がついたガーブは、集団の後方を通り抜け、戦車から50の英雄たちを無理やり引っぺがしました。そして死に至る傷を負わせ、軍の後方部隊に致命的な打撃を与えたのです。


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さて、コノールの一団はグレオ・グラスの息子コナルの館のある、クアルンゲのダン・コルパにたどり着きました。

主人たちと群衆は、技術、階級、法律、身分、礼儀作法に従い、素晴らしいワインを持って宴に出席しました。高貴な館には、葦や瑞々しいイグサが撒かれ、羽の詰まったマットレスもありました。その夜、ウラドの貴族にあてがわれるに相応しいあらゆるものが、グレオ・グラスの子コナルの、広々とした間口の館に用意されていたのです。


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「して、エリンの五分の一の王コノールよ、今宵あなた様のあとに遅れてやってくる親族はいらっしゃいますか?」

コノールは言いました。「いいや、エウィンに残したものは誰も。なぜそのようなことを?」

「この半カントレッド(※4)の領土を守る猟犬を放ってよいかと思いまして。コンベールというのですが、外から来る軍勢や一団を監視させているのです」

それから、コンベールは解き放たれたのでした。


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主人たちにすばらしい食事とエールが提供されたあとは、入浴の準備がなされました。濡れた…(欠文)を洗い、風呂につかりました。

また戦士たち一人ひとりに五月ワタスゲ(※5)が紡がれ織られました。コナルは戦斧をそれぞれの戦士たちに与え、農奴と門番は町内を見張るよう配置されました。

エールと食事はウラドのために一か所に配膳されました。人を酔わせ楽しませるはちみつ酒は、大きなトロフィー型の杯から、角型の杯から、小さな杯へと主人たちに振舞われたのです。

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これらの主人たちの成り行きは、今のところこの話に関わるものではありませんが、ともかく、彼らは楽しく呑んでいたのでした。

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ところがクー・フリンは違いました。

「なあ、ロイグ」彼は言いました。「ゴルの首を戦車に乗せて、馬を鞭で追い立てよう。エウィンに向けてさ」

彼らは駆けました。この日、クー・フリンの戦車の鉄車輪は、道の両側にまるで入り江のような二つの堤を作りあげました。

風を切って走る馬たちは、まるで広大な平原を掠め飛ぶ黒い鳥の群れのように、大地の石や、丸まった芝、泥炭の塊を後ろへ飛ばしていきました。また白鳥の群れが広大な平原をつたって流れ落ちるように、くつわの鼻や口から泡を吹き出しました。

その日、リアンガヴラの息子ロイグがクー・フリンの二頭の馬を追い立てる激しさといったら、まるで王族の宿で炊かれた煙のように、粉塵と激しい呼吸が、濃密な蒸気を漂わせていたのです。

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このようにして、彼らはエウィンの草原へと疾走しました。

「あれっ、ロイグ」クー・フリンは言いました。「エウィンは今夜、どうも打ち捨てられてしまったらしいぞ」

「なぜそう思うんです?」ロイグは尋ねました。

「なぜって」クー・フリンは答えます。「叫び声や呼び声が聞こえないんだ。使いの者の呼びかけも、主人のざわめきも、旅の(欠文)も、なんにも聞こえない。詩人の歌や音楽だって。馬の手綱をしっかりと括りつけておくんだ。どんな恐ろしい災いが主人たちに降りかかったのか、行って突き止めなければ」

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(※1)クー・フリンの妻エウェルのこと。

(※2)岬のように飛び出た土地の先端部分を示す言葉。「王家の砦のルバ」とは、アイルランドや北欧の遺跡でよく見られる「リングフォート」のことらしい。リングフォートとは、石や土で作られた円形要塞のことで、アイルランドでは「妖精の砦」とも呼ばれている。

(※3)現在のNewry Riverの渓谷。

(※4)13世紀から15世紀の間に使われていた領土の単位。100の村からなる地区を1カンタレッドと数えていたらしいので、半カンタレッドはその半分、50の村があるくらいの広さということだろうか?

(※5)アイルランドには、5月に開花するワタスゲの種類があり、アイルランド全土の酸性の沼地や湿地帯で見ることができる(参考)。コットンのタオル的なものが準備されたのかも?


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