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【弁理士最大のライバル】「知的財産制度を使わない」という選択肢はアリか?

 大阪梅田でフィラー特許事務所を経営している弁理士の中川真人です。フィラー特許事務所は2021年8月18日に開業し、翌8月19日12時08分に営業がスタートしたおそらく名実ともに日本で最も新しい特許事務所です。

 フィラー特許事務所では、従来の特許事務所にはなかった「大量の情報発信」というプロポジションでサービスの独自性を確立しようとしています。私は商標登録の重要性を説明するときに「名前がなければ存在しないのも同じ」「文字情報を記憶に残さなければ誰も検索でたどり着けない」と言ったフレーズを多用していますが、それと同じでいくら知的財産制度の活用を呼びかけたところで、「知的財産制度そのもの」についての興味がなければ、その先にある「本当の良さ」という情報まで人は辿り着けないからです。

弁理士だけはいなくても困らない士業?

 その中で、私が実際に起業して初めて身に染みたのが、弁理士には「頼まざるを得ない」という強迫観念が働かないという現実です。

 もしあなたが訴えられたら否応なしに弁護士に仕事を頼む必要があります。もしあなたが不動産を買おうとしたら自動的に司法書士を不動産業者が手配します。もしあなたが起業をしたら毎年一回は必ず税理士に仕事を依頼し、大企業は監査のために必ず会計士に仕事を依頼します。

 もし、弁護士に仕事を頼まなければ自動的にあなたは敗訴し、司法書士を頼まなければ土地も買えず、会社を起こしても年度を越えることができません。

 しかし、弁理士だけは特許を取らなかったからといって事業は行き詰まりませんし、意匠権を取らなくても、商標権を取らなくても、極論何かができないとか、今目の前にある問題を解決しなければ困ったことになるという、ある意味「強迫観念」が働かないのです。

 侵害事件が起きて訴えられたらそれは弁護士の仕事で私たち弁理士は訴訟遂行の補佐業務をする立場に過ぎません。要は、弁理士の業務は「今それをしなければ先に進めない」という要素がないのです。

「知的財産制度を使わない」という最大のライバル

 つまり、私たち弁理士の最大のライバルは、他の弁理士や特許業務法人(弁理士法人)ではなく、「知的財産制度を使わない」という選択肢に他ならないのです。
 フィラー特許事務所は起業時から他者(社)との協力関係を構築しやすいように知的財産制度を活用するというコンサルティング型のかなり先鋭的な(国際的にはごく普通の)サービスを提供し、既にご活用いただいている顧客(事業者さま)も結果を出し始めてはいますが、それでも「結局今は知的財産制度は使わないでとりあえず事業計画は進める」という選択肢にはどうしても抗えない強さがあることは痛感しています。

 フィラー特許事務所の「大量の情報発信」により知的財産制度活用に興味を抱いていただいて、具体的なアクションをとられた上位5%には入るであろう行動的な事業者さまであっても、やはり「知的財産制度を使わない」という選択肢を選ばれる現実は抗えない実情なのです。

日本の産業とともに100年以上更新を繰り返してきた我が国の産業財産権法

 知的財産法は100年以上の歴史があり、日本の産業構造の変化に伴って幾度となく更新を繰り返しながら作られてきた歴史のある法律です。ですから、この法律の立法思想に基づいた方法でその手順通りに事業のコマを進めていけばおよそ失敗するということにはなりません。
 しかし、知的財産法は保険のようなものなので入ったからと言って明日から何が変わるわけでもなく、満期までに何も起こらなければ損をしたような気分になってしまうような実際少し売りにくい、というか利用を促進しづらい(あえて言いますが)商材であることは間違いありません。

 だからと言って不必要に利用者を不安にさせる広告を打って煽るというのも公正なやり方とは言えないでしょう。ただ一つ言えることは、知的財産法の仕組みに従って事業化を今まさに進めている方は、30〜45日という強烈な速さで事業化の準備が進んでいるというのが現実だということです。

 知的財産法は一定の仕組みに従って、その想定された事業化の手順というものを実現できるように作られた手続法です。ですから、事業家があれこれ考える必要はなく、ただ法律の立法思想・設計思想に基づいて粛々と手続きを進めていけば、うまく事業化できるようにあらかじめ作られているのです。

「知的財産制度を使う」のが当たり前の世界から見ると

 もし「知的財産制度を使わない」という選択肢を選ばれて事業化を目指したのであれば、結局「あーでもない、こーでもない」となんだか同じところをぐるぐる回っているだけで、何から手をつけて良いのかわからないまま時間だけが過ぎていき事業化の旬(タイミング)を逃すか、手持ちのキャッシュが尽きて事業化を諦めるかという事態になる可能性は、この日本という国に於いても敢えて「知的財産制度を使う」という選択肢を選ばれた事業者の方に比べたらはるかに高いものになるのは想像にかたくないでしょう。

 少なくとも、既に成功している企業はものすごく複雑な法律の手続きを一つの間違いもなく適正に遵守して、そのために大金を投じています。そのような企業さまから見れば、「商品名すらろくに登録しない事業者と取引なんかしたくない」「商売を舐めないでほしい」というのが本音だと思います。

 「私は御社と取引をするにあたり、将来の紛争の防止と取引の安全のため、私はこれだけのアイデアを知的財産権という形で整理して、このような取引の起案を法律の専門家の指導のもと揃えてきました。ぜひ、私との取引をご検討ください。」

「趣味の域」から「事業者」にジャンプできる境目

 少し厳しいことを書きましたが、ここの差が「趣味の域」から「事業者」にジャンプできるかできないかの境目になります。少なくとも、知的財産制度に基づいて事業の権利周りが整理されていないのであれば、一定の事業規模のある企業との取引はまずできないでしょう。

 事業家の前には他の多くの企業がそうされているように「知的財産制度を使う」という選択肢と、他の多くの起業家がそうされているように「知的財産制度を使わない」という選択肢の2つが用意されています。
 既に事業実態のある企業さまと普通に取引をしたいのであれば、迷わず「知的財産制度を使う」という選択肢を取ってください。特段フィラー特許事務所を利用される必要はありません。
 しかし、知的財産制度の活用促進の観点から「知的財産制度を使わない」という選択肢でいたずらに時間だけが過ぎていって事業化のタイミングを逃すという事態にだけは陥らないようにしていただきたいというのが、知的財産権法を専門とする弁理士としての私からのメッセージです。

一冊の電子書籍にまとめましたのコピーのコピー

弁理士・中川真人
フィラー特許事務所(https://filler.jp