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認知拡大期のSaaSサービスがカンファレンスを開催して得られた「リード獲得以上に大切なこと」

近年、「働き方改革」や「副業解禁」の機運が高まり、フリーランス人口が増加傾向に。これからのチームビルディングは、正社員だけでなくフリーランスや副業社員を巻き込むことがいっそう重要になってくる。

変化の時代において、企業が直面する課題を解決するため、フリーランスマネジメントシステムpasture(パスチャー)が2019年11月に経営者や管理職向けのカンファレンス「TEAM UPDATE」を開催した。

登壇者でありpastureのアドバイザーの設楽悠介氏(幻冬舎)、pasture事業責任者の高澤真之介、ブランド担当の七戸望が本カンファレンスを振り返りながら、運営時の反省や、新たに生まれたチームづくりの課題を語り合う。


|日本企業の課題に向かい、カンファレンス開催へ


設楽:そもそも、どうしてpastureがあんな大規模なカンファレンスを開催しようと思ったんですか?

高澤:理由は二つあって。まずは、“フリーランスマネジメント”という概念が日本には根付いていないんです。言葉を選ばず言うと、まだまだ日本企業は“社内の人”と“社外の人”が分断されているような状況ですね。

設楽:なるほど。正社員と非正社員、非社員と分けて考えられてしまうこともあります。

高澤:本来なら、プロジェクトメンバーが対等に同じチームとして働けばいいですよね。こうした部分を打破するきっかけになればと思っています。図1

あともう一つは、pastureを使っている企業や将来使うかもしれないような企業、つまりはマネジメント層全体に対して社会貢献したいなと思っていて。私の知識や経験、人脈をフル活用してできることをカンファレンスとして企画しました。

七戸:これまでもリード獲得のための小さなイベントは6-7回ほどやっていたんですが、それだと世の中への認知も、社会貢献度も高まらない。昨年6月にpastureのブランドチームを発足したこともあり、一度初心にかえって「チームってどうあるべきなのか」とか、「社外と社内の区別って必要なのか」ということに、疑問を呈したいと思ったんです。

設楽:だからカンファレンスという間口の広い枠組みで行ったんですね。直接的なリード獲得よりも、なかなか解決しない課題をリアルなイベントで広めていこうと。

高澤:今働いてる人が、今在籍しているところと同じバリューを出したまま、たとえば他の時間を使ってプラス7%ぐらい働いたらGDPが上がると思っているんですよ。これから日本の人口は減っていくでしょうし、同時に労働人口も減っていくという未来が見えているなかで、よりコラボレーションやコミュニケーションが生まれていけばいいなという気持ちで開催しました。ぶっちゃけ、pastureのトップラインが予想以上に伸びているからやれたという現実的な理由もありますね(笑)。

|メッセージを強くするには1セッションを短く


設楽:そこから準備段階に入ると思うんですが、核を握るのは登壇者ですよね。僕も今はいろいろなカンファレンスやイベントに出させていただく側になることもあるんですが、今回強く感じたのが、事前の打ち合わせがすごく丁寧だったってことですね。ぶっちゃけこの3年間で僕が出たイベントで一番しっかりしてましたよ。おそらく登壇者全員に会ってますよね?

七戸:会ってますね。実績のある方たちと半期で10人、20人とお会いして……。最初はかなりビビりながら行ってました(笑)。

設楽:他のイベントでは当日の登壇直前の30分で打ち合わせみたいなケースが多いなかで、異色でした。PDFを1枚送ってきて「当日よろしく〜」みたいなイベントも結構ありますから(笑)。お互い手間はかかるけど、直接打ち合わせすると、前後にpastureについての雑談もできるし、「イベントでこれ聞いたほうが盛り上がるんじゃない?」とこちらから提案もできる。

高澤:そうですね。ほかにも「世の中ではこういう勘違いをされている言葉だから、最初にそれに対してのパラダイムシフトを前談でやってほしい」といったリクエストをいただけたのはよかったです。
セッションでは、フリーランス、企業側、フリーランスを企業に紹介するエージェント側3社をなるべくニュートラルな目線で、マーケットに関わるステークホルダー全員の話をしたいなと思っていたので、1セッション30分と短めに設定していて。テンポ良く進行ができるように綿密に打ち合わせさせてもらいましたね。

設楽:「TEAM UPDATE」では、お客さんがセッションごとにガンガン入れ替わるというよりは、じっくり聞いてくれている空気感がありました。図2

一緒に登壇する方と控室では、正直30分は短いって話してたんですが、意外と丁度よかったのかも。短いってわかっているから、とにかくみんな言いたいことを言っていこうと気合が入ってました。

高澤:お客さんには、なにか持ち帰っていただく強い一言みたいなものがあるといいと思っていて。その点では成功したんじゃないでしょうか。

設楽:あのイベントではpastureの宣伝が一回も出てこなかったのもよかったです。企業イベント行ったときに、ほぼプロダクト説明で終わることがあるけど、あれが嫌なんですよね(笑)。

七戸:そこもこだわった部分ですね。結果的にサービスを使ってもらわなくても、「どんどん外部の力を入れてチームをアップデートしなきゃいけない」というメッセージが重要だと思っています。

|設楽氏も即パクったダイバーシティのお手本企業とは

高澤:設楽さんとしては、イベントはいかがでしたか。

設楽: 理想論かもしれませんが、働き方改革もあって人材の流動性も高まるから、すごく先の未来の話としてはフリーランスとのチームビルディングも大切だよね、ぐらいの気持ちで僕も登壇したんです。
もともと僕の会社、幻冬舎も、フリーランスに発注している業界ではある。ただ、従来型なんですよね。ライター、カメラマンはもちろんフリーだけど、編集者は社員率が圧倒的に高い。図3

どうしてもフリーランスを“業務の補助”として考えてた一面があったけど、ガイアックスさんのセッションで、部下にフリーランス雇うために予算を出してるとか、社員よりフリーのスタッフのほうが多いって話に衝撃を受けて。
次の日会社で部下たちに「お前ら記事書いてるけど、数万円なら外注していいよ」「フリーランスにガンガンお願いしようぜ」って、即丸パクリしました(笑)。

高澤:実は、自社で採用できない優秀な人と組めたりしますしね。

設楽:そうなんですよ。コロナ禍で特に思うんですが、これまでフリーの方はリモートで会議、社員はオフィスとかやってたけど、今もうみんなリモートだから違いもわからない(笑)。

高澤:本当に、違いはないんですよね。

|フリーランスとDIYした「TEAM UPDATE」


高澤:今回のイベントだと、懇親会の参加も90人くらいと多くて、アンケート結果も満足した方が8-9割くらい。エン・ジャパンで同じ期間でやったイベントの中で、私たちpastureがまだ他の部署に比べると小さいから、社内でも大々的なトピックにはされてなかったんですが、結果的に「TEAM UPDATE」がその時期の会社での一番大きいイベントになったらしいです。

設楽:すごい満足度が高いじゃないですか。登壇した方とはその後の関係、どうですか? 僕自身も、そもそもこのイベントがきっかけで今アドバイザーをさせて頂いているわけですが。

高澤:みなさん仲良くさせて頂いてますよ。ちなみに今回、イベント自体もフリーランスの方たちと仕込んでいったんです。カンファレンスLPやロゴもすべてフリーのデザイナーさんにつくってもらって。図4

設楽:そうなんですね!すごい。イベントの座組から体現しているということだ。

七戸:企業関係なく、今回のイベントのビジョンに賛同してくださった人だけでつくりあげるというのは、私たちにとっても勉強になりましたね。

設楽:逆に、次やるとしたら直したい反省点みたいなものはありますか?

高澤:時間をもうちょっと長くやることと……あとこういったご時世なのでオンラインイベントには挑戦したいですね。SaaSなどでもそうですが、自社のリードになるところはもちろん、その隣のコミュニティにもちゃんと影響を及ぼすことができると、よりスケールが広がっていくので。もっと間口を広げてもよかったのかなと。

|継続的なイベントで健全な成長を


設楽:なるほど。では、カンファレンスが終わってみて、今後こういう風にしていきたいというビジョンなんかはどうでしょう。

高澤:このイベント自体がちゃんとハブ化して、今後もコミュニティ単位でのやりとりが続けられるように、継続的に開催していきたいということ。フリーランスと企業が会うタイミングって、どちらかというとフリーランスが営業をかけるというイメージですが、一つのテーマで集まって話をして、そこから自然とプロジェクトが始まるような動きが出てきたらいいなと思っています。そのためにも、来てくださった方とか登壇者とコラボレーションをもっと密接にしていきたいですね。

設楽:確かに。僕もイベントで知り合ったみらいワークスの岡本さんと連絡を取り合ってたんですが、「本出すんですよ〜」って言ったらインタビューしてくださって。こういうことが起こる場だったんだと思って嬉しかったですね。本当にチームがアップデートした気がするし。

高澤:社内、社外が関係ない人たちの集まりなので、健全ですよね。

設楽:成約面でも結果が出ているんじゃないですか?

高澤:直接的すぎますが、そうですね(笑)。これまで商談するけど受注出来ないことがほとんどで、あとは努力でカバーというスタイルで成約率が7%くらいだったのが、今は2-3倍以上になっています。機能面での変化もありましたが、最初にカンファレンスの話はするようにしていて、影響は大きいですね。

|世の中に対してpastureブランドでナレッジを提供する

七戸:pastureのブランドにとってもすごくよかったと感じています。今まで、リリースを出そうとしてもシンボリックなものがなく、なかなか難しかったのですが、カンファレンスのリリースが足がかりになってプレスリリースも出せました。カンファレンスのリリースが足がかりになって社内認知も上がりましたね。エン・ジャパンにとっても価値があるというか、いい取り組みとして認識されたことはプラスですね。

高澤:社内でのプレゼンスが低いと何事も進めにくいわけです。そういった意味だと社内の方もステークホルダーなので、いかに自社に貢献するブランドとして認知していただくか、不愉快にさせずお互いを立てながら共存できるか……ということを重要視していました。
そういう意味では、社内の方にも参加いただいたり、コメントいただいたりとインナーブランディングにも繋がりましたね。

設楽:そうか、エン・ジャパンさんのなかでは、まだできたばかりの新規事業部ですもんね。クライアントや社外へのブランディングはもちろん、意外と社内ブランディングにもなったと。やっぱり、数字だけでは見えないなにかが生きたんでしょうね。
あと今回は社外といってもクライアントだけじゃなくて、パートナーになりうる同業他社からのプレゼンスも上がったかもしれませんね。

高澤:はい、実際にイベントの後から他社との提携の話も進んできています。私たちは、これからプロダクトだけでなく、pastureというブランドで社会にナレッジを提供し、世の中にアクションを起こしていきたいと思っています。

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編集:設楽悠介