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死出の随行

「そろそろお時間です。」

長い黒髪を丁寧に洗い、湯あみを済ませたあと豪華な衣装に身を包んだ。
この衣装が妾の最も豪華な衣装にして最後の正装となる。

「すぐにまいる。」

妾の主人である皇帝が亡くなり皆が喪に服している。
そして今日がその最終日。
妾が皇帝とともに永遠の眠りにつく時が来たのだ。

皇帝が亡くなると妻妾や部下や奴隷が皇帝の陵墓に一緒に埋葬される。
皇帝を一人にさせるわけにはいかない。
この地を統べる皇帝のお供は大勢つけなくては、威厳に関わる。
あの世でも皇帝には多くの人間が必要だ。
つまり妾達は「殉葬」させられるのだ。
妾は皇帝の第一夫人だった故に真っ先にお供に決められたのだ。
昔から続く儀式なので別に異論はない。
むしろ当然のことと思っている。
皇帝と一緒に葬られるのだから名誉なことだ。

豪華な副葬品や衣装は皇帝が生前から作られる。
皇帝に即位した瞬間からもう死出の旅立ちについて準備するのだ。
妾もその一部に過ぎない。
皇帝の永遠に続く支配と名誉のために選ばれたのだから。

後ろに大勢の者を従え妾は生きながら墓に入っていく。
そして扉が閉められた。

中国お墓2


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