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疫病の都

私はこの高い城壁に囲まれた帝国の中でも1,2を争う大きさを誇るこの町で家族とともに暮らしている。
私たちの家は商売を営んでいて、朝から晩まで一家総出で働いていた。
両親・兄弟たちとも皆で働いて、一日が終わり皆で一緒の食事をとるのがとても楽しみだった。
朝から晩まで働いていたが誰一人としてそのことに不満を持つものはおらず、家族皆でいつも一緒に働くことがこの先もずっと続くと思っていた。
そう、あの時までは。
今までどんな敵の侵入も阻んできたこの高い城壁も「あれ」にはかなわなかった。

そう、黒死病が発生したのだ。

感染者がどんどんと増え続け、私の家族も感染してしまった。
町の決まりで感染者は城壁の外へ出されることになっていた。
なぜか私だけは感染していなかったが、私も家族と一緒に城壁の外へ出ることにした。
看病もしたかったし一人で町に残っても周りの人の目が冷たかったからだ。
感染者が出た店の品を買おうという人はいない。
それで私も城壁から出て、看病に明け暮れた、
看病といっても何もできず家族が一人また一人と死んでいくのをただ見つめることだけだった。
そうして最後の一人が死んで、まだ私も感染はしていなかったから城壁の中に戻れると思っていたのだけれど、城壁の門が開かれることはなかった。

高い高い城壁。
とてつもなく高く見える。

私は入ることができずに隣の都市へ行ってみたけれど、またその年も私には高い城壁が立ちふさがっていた。
この町にも私は入れない。
感染はしていなくても感染者が多数出た町から来た人間は入れることないということだった。
私の前をまた高い城壁がそびえたつ。

仕方なく私はまた元いた町に戻った。
勿論は入れることはできず、私は城壁のそばで静かに死んでいった。


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