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砂漠の姫君

カーン……

城門のわきにそびえる鐘楼の鐘が鳴った。

カーン……カーン……

再び鐘がなり今度は城門が開かれた。

城門の前には町の人々が集まっていた。

人々が見守る中、隊列が現れた。
人々の前を通り過ぎていく。
その隊列の中央には一人の女性が馬に乗り人々の前に姿を現した。
顔は白いベールで被われ絢爛豪華な衣装を身に着けているが、きらびやかな指輪をつけているあろうその腕は体の後ろに回されてきつく縛られていた。

人々の悲しみや同情の声を聴きながら、隊列は静々と進んでいった。

私はこの国の皇女。
帝国の皇帝が私の父親。
皇帝である父親の権威は絶対でその決定に口をはさむものはいない。
私はその皇帝により死刑という判決を受けた。
私はある禁忌を犯した。
その禁忌を犯した者はたとえ王女であろうとも死刑に処せねばならない。
その禁忌を犯したことが衆人のもとにさらされたとき、私の運命は決まった。
父親から処刑の判決が下されたとき、私は泣いたり反抗したりしなかった。
こうなることは最初から分かっていた。
けれどどうしてもこの禁忌を犯さずにはいられなかった。

私は後悔していない。

さすがに王宮内で処刑するのは哀れに思ったのか、砂漠へ追放するという決定がなされた。
隊列は私を砂漠に連れていくためのもの。
そしてこのまま私は砂漠へ一人取り残される。
砂に埋もれて死んでいくのだ。
それでも私は後悔していない。
私は私のすべきことをしたのだから。

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