安定したデリバリーを実現するために見積りと計画を再解釈する

おはこんばんはー。りょくちゃです。

カレー屋さんの経営者:新メニューの開発期間なんだけど、どれくらいになりそう?全国カレー屋さん選手権でうちは絶対に勝ちたいのよー。そのために1ヶ月で新メニューを開発しないといけないの。大会のテーマはビーフカレーよ。ビーフカレーの新メニューを開発して頂戴。開発は3名以下でやって。予算は100万円あるわ。どうかしら。
カレー屋さんの店長:まかせてください!
しばらくたって……
カレー屋さんの店長:新メニューの開発期間は2ヶ月です。
カレー屋さんの経営者:2ヶ月ですって!?私の説明を聞いていなかったのかしら。

カレー屋さんで働いているひとは少ないと思いますが、こういうすれ違いは皆さんの会社では起こっているでしょうか。

ひねり出して考えた例え話で自分が言いたいのは、見積りと計画を区別して情報を明らかにしないと、ひねり出したたとえ話よりも苦痛を伴う開発を行うことになるかもしれないということです。

これから見積りと計画の違いについて紹介します。みなさんのチームで参考になれば嬉しいです。

見積りと計画

見積りは計画を作るための手段です。辞書的に説明するなら見積りは前もって規模、工数、スケジュール、機能、コストを概算することにほかなりません。

計画はビジネスの目標に到達するために「なにをつくるべきか」を探求する作業により作成されるものです。

見積りは正確さを目指しますが、計画は正確であることがゴールではなく、特定の到達点にたどり着くために作為的に変更するものです。簡単に言えば計画は予め作られるプロジェクトの成功に向けた道筋です。

次に見積りと計画の違いを更に理解するために、ターゲットとコミットメントも紹介します。

ターゲットとコミットメント

ターゲットはビジネスのゴールや要求です。例えば、3ヶ月先の展示会でエンタープライズ企業に向けた魅力的な新製品発表を行いたい、コンバージョン率をクォーターで10%向上させたい、次回の大規模アップデートではコストを20%削減したい、顧客が<とある目的>を達成できるようになる、などが具体例です。

コミットメントは、一定の品質のものを、ある期日までに完成させるという約束のことです。よくある勘違いは見積りを提出することをコミットメントと考えることです。見積りは約束ではありません。アジャイルの世界ではコミットメントはもっと自主的なものとして登場します。本来は見積りとコミットメントは分けてコントロールできる事柄です。

求められているのは見積り、それとも計画

とあるカレー屋さんの経営者と店長の会話に戻りましょう。

このとき経営者は正確な見積りを求めていたわけではありません。この経営者はターゲットを達成するための計画を求めていました。

経営者は見積り、ターゲット、計画とコミットメントを区別してません。なので、要求を聞いて求めているものが何なのか突き止めるのは見積りについて詳しい店長(ソフトウェア開発なら開発者)である必要があります。

このように要求されることが見積りであったとしてもそれが計画なのか、実際に見積りなのかは予め把握しておくことで、求められていることに応えることができます。

カレー屋さんの経営者:新メニューの開発期間なんだけど、どれくらいになりそう?全国カレー屋さん選手権でうちは絶対に勝ちたいのよ。そのために1ヶ月で新メニューを開発しないといけないの。大会のテーマはビーフカレーよ。ビーフカレーの新メニューを開発して頂戴。開発は3名以下でやって。予算は100万円あるわ。どうかしら。
カレー屋さんの店長:まかせてください!
しばらくたって……
カレー屋さんの店長:新メニューの開発期間は1ヶ月でできそうです。
カレー屋さんの経営者:わかったわ。よろしくお願いね。
しばらくたって......
カレー屋さんの店長:すいません。やっぱり2ヶ月必要そうです
カレー屋さんの経営者:え!?それは困るわ。1ヶ月でやって頂戴!

会話をすこーしだけいじりました。今度は提出した見積りに変更が認められなかった場合です。

問題は見積りとコミットメントが一致していることです。

見積りとコミットメントが一致してしまうのは、納期へのプレッシャが過剰に高い開発に多く見られる要因があります。一度立てた計画を遵守するために、提出する見積りに高いレベルの正確さが求められます。

計画はターゲットを満たす実現可能性があるものじゃないといけません。しかし、一度しか立てられない計画の力が働くと "過剰に詳細に立てた計画" や "なんとなく実現できそうな計画" が出来上がります。

これだと、この会話のようにプロジェクトコントロールに限界を迎えた辺りで、期間の延長を打診されることになります。

素早いデリバリーと計画の信頼性の両方を満たすために繰り返し計画を見直せるようにすることと自分たちで実現可能性を見通せる程度のスコープを詳細に計画することがポイントです。その方向性でアクションを考えてみるのはいかがでしょう。例えば、スクラムはその取り組みを支える機能を備えています。

計画と見積りの違いを念頭にしてチームが成熟してくるとチームの予測可能性が高まって、プロジェクトの早期から信頼できる計画を立てられるようになります。スクラムマスターとしてはチームの予測可能性を向上させられるように支援できるといいなーと常々感じています。では、また次回!


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