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腸腰筋は大腿骨頭を安定させるか?

▼ 文献情報 と 抄録和訳

腸腰筋は大腿骨頭を安定させるか?システマティックレビュー

Hirase T, Mallett J, Barter LB, et al.: Is the Iliopsoas a Femoral Head Stabilizer? A Systematic Review, Arthrosc Sports Med Rehabil 2(6), 2020,847-853.

[ハイパーリンク] DOI, PubMed, Google Scholar

[目的] 腸腰筋が大腿骨頭の安定装置であるかどうかを判断するために、生体力学的および臨床的研究のシステマティックレビューを行うこと。

[方法] Preferred Reporting Items for Systematic Reviews and Meta-analyses(PRISMA)ガイドラインを用いてシステマティックレビューを行った。対象としたのは、股関節の安定装置としての腸腰筋の役割を調査したヒトの臨床(エビデンスレベルI~IV)または実験室での研究である。除外基準は、脊椎手術を受けている患者、人工股関節全置換術または人工股関節半置換術を受けている患者を対象とした研究であった。臨床結果に関する研究の方法論的品質は、Modified Coleman Methodology Scoreを用いて分析した。参加者と介入方法には異質性があるため、定量的な同種のメタ分析は行わなかった。

[結果] 8件の論文が分析された(生体力学的研究3件[35人の死体と18人の健常者]、臨床アウトカム研究5件[537人の被験者、207人の関節鏡下腸骨筋腱切開術])。2つの生体力学的研究により、腸腰筋は股関節前方の安定装置であることが確認された。1つの死体研究では、腸腰筋が股関節の0°~15°屈曲時に大腿骨頭を安定させる働きをしていることが確認された。2つの臨床研究では、特に大腿骨の屈曲度が大きい(15˚~25˚以上)患者において、腸腰筋が股関節の動的なスタビライザーとしての役割を果たしていることが示されました。2つの研究では、関節鏡下腸腰筋腱切除術後に無外傷性股関節前方脱臼を起こした症例が報告された。

[結論] 生体力学的および臨床研究から得られた証拠は、腸腰筋が動的な大腿骨頭前方安定装置であることを示唆していると思われる。

▼ So What?:何が面白いと感じたか?

「腸腰筋」の重要性は、運動器リハビリテーションを行うスタッフにとっての共通認識といっても過言ではないだろう。ただ、それがシステマティックレビューで示されたことに意義があると感じた。今後は(既に言われてはいるが)、腸腰筋、という総称ではなくて腸骨筋・大腰筋がスタビライザーとしてどうように機能分化しているか、より詳細になっていくと面白い。

少しでも参考になりましたら、サポートして頂ければ幸いです。